Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

上高地

2006-06-24 10:30:02 | つぶやき
 信濃毎日新聞6/22朝刊の特集記事「上高地あるべき規制は」を読んで、著名な観光地について少し触れてみたい。上高地といえば、知らない人がいないくらい著名な観光地である。道路状況が良くなかったということもあって、渋滞を背景にマイカー規制が始まったのは1975年というからずいぶん昔のことである。年とともに規制日数が増え、1996年には通年規制に入った。さらには路線バス以外のバスも規制の対象とされるようになり、今や年間の渋滞日数0日まで至ったという。こういう交通自浄から、上高地を訪れる人たちは、多くはシャトルバスを利用するようになった。最も一般的なものが、旧安曇村沢渡の駐車場にマイカーを置き、シャトルバスで上高地を往復するケースである。

 記事では「最低限の歯止めは必要」という自然環境保全から見たものと、「見過ごせぬ入り込み減」という観光旅館組合の危機感という対照的な意見が掲載されている。また、「高山で成功有料ガイド」という観光地の保全を考慮しながら観光者を受け入れている旧丹生川村の五色ケ原の取り組みが紹介されている。この五色ケ原では、入山する人たちに有料ガイドの同行を義務付けており、7から10人のグループにガイド1人がついて料金は最低8800円という。高すぎるなんていう指摘もあるというが、1人当たりにすれば千円程度だからそれほど高いという印象はない。

 わたしは通年規制になっていなかった時代に1回、その後シャトルバス利用で1回上高地を訪れた。シャトルバスで訪れた際は、家族で訪れたもので、沢渡の駐車場に車を置いて、大正池までバスに乗り、そこから河童橋まで歩いた。ほぼ1日近くいたから、あちこち歩いた記憶がある。家族といっても息子1人と妻だから3人である。3人ではあったが、交通費がとてつもなく高い、という印象はなかった。たとえば今上高地を訪れようとすれば、沢渡の駐車場代が500円、シャトルバス代が河童橋まで往復運賃が1800円×3人=5400円、ということで合計5900円である。安くはないが高いとも思わない。3人で1日上高地を満喫できるとしたら、ディズニーランドより経済的だし意味も深い。

 ここで思うのは、先ほどの五色ケ原の話ではないが、ガイド料金が〝高い〟といわれる所以である。料金をとることで観光客が減少するといって〝高い〟というのなら、そもそも自然環境で稼いでいる人たちはそんな論議をする必要はない。どんどん人を受け入れればよい。しかしながら少しでもそうした意図を持ち込んで〝売り〟とするのならば、客の減少はあってもそれ以上のものが提供できるという自負が必要だろう。そういう観光地を目指してもらいたいものだ。とくに自然を相手にしているのなら。そこで上高地はどうだろう、ということになる。前述したように、それほど〝高い〟という印象はない。対照的な例があるので挙げたい。中央アルプの千畳敷観光である。中央アルプスの木曽駒ケ岳から少し下ったところに千畳敷カールがある。この千畳敷もずいぶん観光客は多いが、上高地とは比較にならない。その千畳敷まで麓の菅ノ台からたどり着くには、登山するか、菅ノ台から途中のローウェイの乗車口まで歩いてロープウェイを利用するか、あるいはバスでそこまで行ってロープウェイを利用するか、といった具合になる。一般客はバスとロープウェイを利用して千畳敷まで上る。そして時間があれば千畳敷から木曽駒ケ岳まで歩くわけだ。わたしが初めて千畳敷を訪れたのは、もう30年近く前のことである。その時も今も、その方法は変わらない。この千畳敷へやはり家族で今行くとしたら、菅ノ台の駐車料金が400円、バス運賃が往復1600円×3人=4800円、ロープウェイが往復2200円×3人=6600円となり、合計11800円必要なのだ。もちろんロープウェイに乗るのだから高いのは理解できるが、頻繁に行くには高価な交通料金で難しい。金がかからなければ、観光客はどんどんやってくるだろう。しかし、そうした観光客を狙って稼ごうという考えは捨てて、そこを理解してくれる必要な客だけを大事にしていく考えはどうだろう。自然相手の商売で○○ファンドのごとく稼ごうなんて思ってはいけない。

 上高地の自然をもっと高価なものにしてもよいのではないか、そうわたしは思うのだ。「金がなければ行けないじゃないか」などと指摘を受けるかもしれないが、それでも行けることの価値を味わってほしいのだ。そしてせっかく高い交通料金を払って行くのなら、ゆっくりできるようなゆとりを持てる、そんな旅行者になって欲しいし、そういう客を受け入れて欲しいものだ。上高地が海外旅行並でもよいではないか、金がなくて飛行機に乗れないのなら、海外とは異なり、自分の足でいけるのだから。
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