Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

議員報酬と実務の隔たり

2006-06-12 08:20:00 | ひとから学ぶ
 知人はブログ「議会が責任を放棄するように感じた理由」で議員の仕事と報酬について具体的に触れている。以前「町村議会の議員」を書いたことがあった。わが社を早期退職した職員が、現在も知人が語る町で議員を続けている。実は議員に出ると聞いたときに、「あんなやつが議員になるような町じゃ情けないものだ」とけっこう社内で茶のみ話として語っている。ところが、やつは現在わたしが勤務する長野県北部の出先で働いたことがない。木曽と伊那谷だけで約30年余を暮らしていた。だから、わたしの現在の職場でそんなことを言っても、今ひとつ〝そうだよね〟なんて言ってくれる人はいない。ようはあまりやつのことを知らないのだ。やつは55歳前でこの会社を辞めた。当時のわが社は、すぐそこにやってきている最悪の事態を予想して、かなりの人員削減を図っていた。そんななかで辞めてくれただけでもありがたいから、あまり悪口を言っても仕方がないという気持ちもあった。安くても職が見つかっただけでも、やつにとっては幸いな話であったわけだ。

 ところが、今年から良否はともかく、わが社は再雇用制度を設けた。わが社は現在、56歳で退職という情けない状態である。そんななかで、数年前までは60歳まで働いて、それも退職までにほとんどの人が管理職に上がっていたから、4年間早く退職する間の減収は、その数年前とは格段の差がある。しかし、56歳で退職したとしても次の仕事があるわけではない。自家の農業に専念している人や、低い給与で雇ってもらっているのが実情である。そんな現実から再雇用という話が出てきたわけだが、赤字なのに再雇用をとって仕事があるのか、といった具合に社内では批判的な意見がほとんどであった。そんな再雇用の方たちが受け取る年収は300万円である。通勤手当はもらえるが、他の手当てはない。月額にして25万円である。その額に対しても職員からは不満の声があがっていて、実際再雇用で来ている職員も肩身が狭い。そんな職員もほとんどは昨年までは会社の重要ポストに在職していた人たちである。

 同じ300万円ではあるが、片や年間60日で月にして5日。片や年休は若干あるが、月20日。おそらく町会議員については、知人も触れているように1時間勤務でも1日扱いといっているから、実際の拘束時間から換算すれば、年間30日くらいなのではないだろうか。多くは自宅で労働している人か、あるいは退職して時間が自由な人が議員だろう。もちろん世の中天下りが話題に上るが、公的な仕事をしてきた人には、知識があるから議員に出れば田舎では当選する可能性が高い。ほかのごく一般的な人が議員になることは極めて難しいということになる。だからこそ、一般住民が、議員がどれほどの労働時間があって、どれほどの報酬をもらっているか、というところがよく見ないはずだ。

 知人は「町国土利用計画審議会条例案」否決に対して議員のあり方を問うわけだが、審議会に議員が名を連ねるのが良いとも言えない。やはり一定の同じ顔でさまざまなことが審議されるということは良くないと思う。「議員の仕事が少ないから報酬に見合った仕事をやってもらおう」よりは、見合う報酬に改定するべきだ。

 わたしは昨年まで、近在のある村の村誌にたずさわった。行なわれた部門会議の回数は、68回を数える。部門外の会議や調査の回数も加えると80回くらいの召集があったのかもしれない。都合ですべてに参加しているわけではないが、平均的に3時間から4時間ほどの会議である。その1回の報酬は、会議費と調査費で会議によって異なったが、両者の平均としても3千円程度である。全部の会議に出たとして約40日(実労働)、12万円である。実は会議だけで済むわけではない。執筆者だから、会議の内容に沿った資料を作成したり、あるいは原稿を書いたりする時間がある。これらに対しての具体的な報酬は支払われていない。いや、編纂室でどういう計らいをしたかわからないが、原稿を仕上げる段階にある程度の報酬を支払ってはくれている。が、その明細は不明だ。そうした会議外の時間は計り知れない。会議と同じ40日として、やはり12万円程度の報酬だったと思う。とすると、わたしがその村のために働いた実数は80日、報酬にして24万円であったわけだ。おおよその話であるが、知人がいうようにどこの議会も同じ程度の報酬だとしたら、わたしは議員にくらへると3倍近い労働で10分の1程度の報酬だったということになる。どう考えても、ボランティアである。報酬を少ないが払っているからボランティアではないと言われるかもしれないが、わたしはその村の者でもないし、現実的にその村にとってわたしは何だったのかということになる。わたしのやった仕事は議員にはできないかも知れないが、議員の仕事はわたしにもできる。
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