Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

しょうぶはたき

2006-06-02 08:21:03 | 民俗学

 あさっては6月4日である。今から17年前のこの日、信州新町の左右から当信(たにしな)川をさかのぼり山穂刈まで山道をたどり、太田川を下って新町の中心まで下ったことがあった。左右から山穂刈までは林道なのだろうか舗装されていない道を延々と走った覚えがある。この奥の集落までたどり着くことはできるのだろうか、と思うほど険しい山道であったこと記憶する。それ以降二度とその道を通ることはないが、あの奥にあった集落はどうなっているのだろうと思ったりする。

  その日の夕方、信州新町から長野市を経て下高井郡木島平村を訪れた。目当ては和栗というところで行なわれる〝しょうぶはたき〟という行事を見学したかったからだ。この日の夕方、夕飯を済ませた子ども達が、「わらづと」を持って集会所に集まる。このつとは、ショウブとヨモギを芯にして藁で包んだもので、1メートルほどの長さのものである。先っぽは叩いてもほぐれないように筒状に編んである。そして子ども達は集落の各家を回って〝しょうぶはたき〟をするわけである。家を訪れると、丸い輪になってわらづとを振り回すのである。「こんばんは、おめでとう」と高学年の親方が言葉をかけると、地面に向ってわらづとを叩きつけるのである。「しょうぶはたきはやった、いかなる病気もなおる」などといって叩くもので、モグラを追い出す意味があるようだ。場所によってはモグラはたきなどという行事があるが、意図は同じものなのだろう。集落の家をすべて回ると各家からもらった菓子を分けて家路につくが、はたいたつとは持って帰って家の屋根に放り投げるという。

  5月節句にショウブ湯に入るということがかつてよく行なわれたが、ヨモギやショウブを屋根にさすということも北信濃ではよく行なわれた。これは蛇が家に入らないようにという意味や、毒虫にさされないようにというような意味があるという。しょうぶはたきをする地域は他にはないが、長野市松城町岩野にでもかつては行なったという。もう20年近く前に訪れた行事であり、現在も行なわれているのか確認してない。

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