Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

管理責任

2006-02-27 08:16:57 | ひとから学ぶ
 知っている人は知っているが、知らない人は知らない、そんな話から始まる。

 もう20年ほど前のことになるが、買ったばかりの新車がいまいち妙な音がしていたので、ディーラーさんのメカニックに同乗してもらってその音を確認してもらったのだが、なかなかわかってもらえなかった。それは仕方ないのだが、その際、音のことに集中していたこともあって、路面にできていた穴ぼこにタイヤを落として走ってしまった。よく冬場にできている舗装が壊れてできた穴ぼこである。その時代の車だから、今のようにタイヤが超扁平ということはないものの、それでも扁平気味のタイヤを装着していた。どうしても扁平ぎみのタイヤは、こうした穴ぼこに走行中に落とすと、タイヤに傷をつけたり、あるいはホイールが湾曲したりすることがある。そのとおり、タイヤに傷がついてホイールも若干湾曲してしまった。ディーラーさんにそのことを問い詰めることはしなかったし、仕方ないのでタイヤだけは交換してもらったのだが、もちろん自分でお金は払った。新車だったから自分としてはショックな出来事であった。

 さて、こんな話があった。さきごろわたしもときどき訪れることがあるドラッグストアーの入り口が、国道から少し入りにくい、というか普通に入るにはそれほど入りにくいという印象はないが、運転がへたくそな人には入りにくい構造になっている。国道に片勾配があって、その片勾配の低い位置から歩道を乗り上げて店の敷地に入るということで、車高の低い車なんかはちょっと入りずらい、そんな構造になっている。加えて入り口の幅が狭いので、国道が広いものの、入ろうとするとへたくそな人は大回りに入らないと縁石なんかに乗り上げてしまう。何度も入ったことはあるが、わたしにとってはそれほど入りにくいという印象はなかった。少しゆっくり入ればどうということはない。そこで事件はあったという。ある人がそこで側溝にタイヤを落として傷をつけてしまったという(妻よりのまた聞きなので詳細は違うかもしれないが)。その人は国道を管理している県の担当を呼びつけて、「道が悪いから傷がついてしまった」というようなことを言って、修理費を払えという。担当者はどうみても運転の問題ではないか、と思って折衝したが、その人は言うことを聞かない。仕方なく(仕方ないといってはまずいのだろうが)、少し負担はするから納得してほしいと言ったら、なんとか了承したという。

 本来この場合自営工事をしている店が、入りやすいようにするべきところなんだろうが、自営工事申請を県にした際に、それで承認している以上、現段階では管理者である県が対応の相手となるのだろう。ここで冒頭のわたしの話とあわせて考えてみる。わたしも当時は知らなかったが、舗装面に穴が空いていて自分に落ち度がないのに傷を負った場合は、道路管理者へその責任を負わせることができるらしい。冷静に考えれば納得のいく筋なのだが、これこそ知っている人は知っているが、知らない人は知らない。わたしの感覚でいけば、回避できるにもかかわらず、たとえば余所見をしていたとか、スピードを出しすぎていたとか、理由はさまざまであって、レールのように走る場所が特定されていたならわかるが、そうでないとしたら、運転している側が回避しなかったところに大きな原因があると思う。わたしはそのことを知っていても知らなくても、よほどの大事故になるほど道路に問題がなかったら、おそらく管理者へ責任転嫁することはなかっただろう。そのへんの境の問題もあるから、ケースバイケースなんだろうが、意外にもこうしたことで管理者が負担しているケースはけっこうあるという。ドラッグストアーでの事件については、明らかに運転技術の問題で、これを管理者に責を負わせようとすることはほとんどないだろう。あったとしてもヤクザの世界である。いわゆる「いいがかり」というものである。しかし、役所に対しては強く出る、という国民の悪い習性もあるのだろう、「なんとかしてくれる」というとんでもない責任転嫁なのである。こんなことに税金を使って補填しているのも、一般人にはちょっと納得いかない。まさしく「言う方が勝ち」という今の風潮を現している。

 この話にはもうひとつびっくりするような裏話がある。実は、ドラッグストアーでの交渉が終了したのち、このいいがかりの相手が名刺を出したという。その相手は○○町の中学校の教員だった。もっとびっくりするのは、その場では気がつかなかったのだが、対応した県の担当者の息子の担任だったというのである。ドラマ並みのストーリーである。新卒で採用になった教員で、もちろん若い。管理者責任を問うことができることを誰に聞いて認識していたかは知らないが、ろくに勉強の教え方も認識していない教員が、こんな管理責任を問うこと、いわゆる言ったほうが勝ちみたいなことを優先して認識していることに怒りを覚える。この国、いやこの県は「終わっている」とつくづく感じた事件である。
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