Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

糸取り

2005-08-16 18:33:20 | 農村環境
 お蚕さまが繭になって一週間あまり、糸取りをした。蒸かしてさなぎを殺した。こうすることにより、糸を取りたいときにとれるように保存がきく。今回はためしに蒸殺をしたが、繭の数が少ないので、いきなり鍋で煮てもよい。繭が浮かないように煮てから、糸をとった。その前にあらかじめ糸をとるためにミゴボウキを作った。糸口を立てるために使うもので、かつてはうつぎの小枝をつかったともいう。ミゴボウキがなくても、習字の筆などを使っても立てることはできる。ミゴボウキは藁からとるもので、30年以上以前、祖母がミゴ抜きをして小遣いを稼いでいたことを思い出す。冬の日の縁側で、ミゴを抜く姿は、絵に描いたようなおばあさんの世界だったように思う。そのミゴ抜きを見よう見まねで幼いころしたこともあった。すぐった藁から穂先のきれいな部分を抜き取っていく作業で、簡単にミゴを抜くことができる。このミゴを使ってほうきを作るのだが、けっこうミゴボウキはいろいろに利用できるような気がする。長野県の伊那谷では、ゴヘイモチを作るが、この時、味噌を塗るのにミゴボウキを使う家もあった。また、狭い場所や繊細な機械などについたほこりをとるのにもよい。あらためて、ミゴボウキの価値を認識した。
 さて、煮た繭からミゴボウキを使って糸をとった。わたしの家でも蚕は飼っていたが、糸をとるということはしていなかったので、経験がなかった。糸口を立てるのは簡単であるが、とった糸を集めて糸によっていくのは難しい。どうしても太さがばらついてしまう。5つ程度の繭から立てた糸をとって糸枠(そんなよいものがないので小さな箱に巻き取っていったが)にに巻いていくが、細くなってしまうと切れてしまったりする。この作業は座繰りといい、節糸やつむぎ糸をとったという。節ごきという瀬戸物でできていて小さな穴が開いているものを通し、よりをかけながら糸枠に巻き取っていく作業で、座繰機というものがあった。今回節ごきなるものを使わずに手で間隔でやったこともあり、太さはいろいろである。蛾になるまでおくための6つの繭を除いて、14個の繭から糸をとった。中条村の黄色い繭は糸も黄色で、混ぜてとったが、なかなか美しい。
 取ったあとには蛹が残るが、この蛹もフライパンで醤油と砂糖で炒ってみた。さっそく食べてみたが、もともと子供のころから好きではなかった。久しぶりに口にしてみたが、やはり美味いとはいえなかった。栄養は抜群といわれる蚕の蛹であるが、かつては、製糸工場からもらってこの蛹を食べたという。伊那の人々は、とくにこの蛹をたんぱく質として重宝にしたという。
 今回のお蚕セットは2千円程度であるが、なかなか楽しませてもらった。まだ蛾になるものが残っており、もう少し楽しめそうである。
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