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御園座公演(S46年2月)[4]

2006年08月28日 | 舞台公演
(公演パンフより引用)

鼠小僧初姿 二幕七場

脚本:有高扶桑
演出:松浦竹夫
美術:織田音也
音楽:山内正
照明:今井直次
効果:田島光義
振付:関矢幸雄
殺陣:宮内晶平

花の大江戸。とある秋の夜更け――
「盗っ人だ、盗っ人が入ったぞ!」……突如、三千石の悪旗本三浦兵部介(名和広)の邸からざわめきが起こった。
その時塀外に、千両箱小脇にひらりととび降りた身軽な黒い人影は――御存知の盗っ人かぶりもいなせな、当今評判の義賊鼠小僧(天知茂)。御用提灯片手にかけつけた女目明し駒形お仙(阿部洋子)の十手もかるくかわし、鼠小僧は易々と警護の網をくぐって夜の闇の中に没し去る。
やがて、鼠小僧、盗っ人かぶりをパラリと外し、羽織を裏がえすと、もう小間物商和泉屋次郎吉に早替わり。満月を背に鼻唄まじりだった。

文化文政期、江戸は、元禄時代の再来といわれるほど爛熟した文化の花が咲き誇っていた。が、ひとたび裏をのぞくと、幕政は乱れはて、秋というのに米の値がうなぎ上り、あちこちで米屋の打ち壊しが始まっている世の中――

さて、鼠小僧ならぬ町人和泉屋次郎吉がブラリと姿をみせたのは蔵前の水茶屋。次郎吉、どうやらここの看板娘、小夜(高須賀夫至子)が気がかりらしい。
次郎吉に想いを寄せる女もまた多かった。意地と張りとが売り物の深川の辰己芸者染吉(鳳八千代)、そして男まさりの女目明しお仙……
次郎吉がここへ来たのは一見、人品卑しからぬ浪人丹波夢太郎(東千代之介)に会う為だった。実はこの夢太郎、武士の政治を倒さんと企みその手段の一つとして鼠小僧を育てあげた、いわば産の産みの親。

「夢太郎さんお願えだ、暫くの間盗っ人をやすませてくだせえ」だしぬけに次郎吉がきりだした。
次郎吉は、身よりのない小夜が、好色な三浦兵部介に追われているのを知り、せめて引取って身を護ってやる間、迷惑が及ばぬよう鼠をやめたいというのだった。夢太郎は無論反対だ。「肉親と女は男を駄目にする」と。だが次郎吉は、そんな夢太郎の諌止をふり切り、小夜を伴って茅場町に小さな小間物屋の店をひらき、鼠小僧の足を洗った。

それから一月……

そろそろ小間物屋ぐらしにも飽きた頃だろうと、夢太郎が鼠に戻れと誘いに来るが、次郎吉の決心は固かった。
この小夜、実は十二年前、次郎吉がふとした罪で江戸を追われた時に生き別れたままの、血を分けた妹だったのだ。美しい娘に育った妹を目の前にしながら、盗っ人を稼業としたばっかりに兄とも名乗れぬ次郎吉の辛さ切なさ。
だがそれも、次郎吉がお小夜と同じ木の鈴を持っていたことからお小夜の知るところとなり、
「兄さん……」「お小夜――!」前後を忘れて兄妹は固く相抱いた。

しかしその頃、江戸市中の米はますます値上がりし、米を買い占めていたのが例の三浦兵部介だと判るや、又もや次郎吉の中の侠気がムラムラッと頭をもたげた。
次郎吉は、飢えに泣いている江戸百万市民のため、鼠小僧に戻って兵部介の隠し米倉を襲う決心を固めた。そして……。[終]

*「本物の彼(=鼠小僧)はむしろ小柄な見栄えのしない男だったようで…」などと解説に書かれているが、それでピッタリとか言われていたらイヤだよな天っちゃん(たぶん言われてない)


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