（46）境界性パーソナリティ障害からの回復-3

アメリカ、アーカンソー州に住むジョーダンさんを紹介させていただきます。ジョーダンさんは、境界性パーソナリティ障害を抱えるクリスチャンです。真っすぐに聖書のみことばと向き合い病気と戦う姿に、教えられるものがあります。

境界性パーソナリティ障害の不安定な認知と行動化について語っているくだりがあります。境界性パーソナリティ障害を理解するための参考になると思います。ジョーダンさんが回復の道を歩むお話は、同じ病気で苦しむ方の励みになることでしょう。


ジョーダンさんのプロフィール　

みことばに従いつつ　　境界性パーソナリティ障害を抱えるクリスチャンより引用
Walking The Line: Christian Living With Borderline Personality Disorder

はじめまして、ジョーダン（Jordan）と申します。
2012年12月8日、私は最愛の男性と結婚し現在に至っています。私たち夫婦はミュージシャンで、アーカンソー州に住んでいます。音楽の賜物を活かし地元の教会で讃美歌奉仕をしながら充実した日々を送っています。


～ジョーダンさんの動画～

聖書のみことばと、境界性パーソナリティ障害
Christian With BPD: Does The Bible Address My Problems?


動画概要

こんにちは、ジョーダンです。

言うまでもないことかも知れませんが、聖書の中に『境界性パーソナリティ障害』ということばはどこにもありません。ですが今日は、聖書のみことばが、境界性パーソナリティ障害を抱える人にどのような導きを与えるのかについて、お話しさせていただきたいと思います。

私は、今週詩篇119篇を学びながらそこを暗唱しています。聖書には人の心を導くことばが書かれています。聖書には『戒め（precept）』ということばが使われていますが、特に詩篇119篇で何度も使われています。この『戒め』ということばについて考えてみました。

この『precept』ということばがどういう意味なのか辞書で調べてみると『行動や考え方の乱れを正すような教え』と解説されていました。これを読んですぐに思いついたのが、気分安定薬、抗うつ薬といったお薬のことです。こうしたお薬は、患者の混乱した行動や混乱した考えに安定を与える成分で作られています。

詩篇119篇を書いたのはダビデ王だといわれていますが、ダビデ王は自分を取り巻く状況が混乱を極めていた時、自分の行動や考えを落ち着かせようとしたことでしょう。神さまの『戒め』を思い起こし、それに従うことで、自分の行動や考えを安定させたのだと思います。

これは、心の病気を抱える私にも、当てはめることができます。聖書のみことばは、日常の問題解決に導きを与え、混乱した行動や考えを正す力があるのです。

暗記した詩篇のみことばに『もし、主のみことばを求めなかったら、生きながらえることはできませんでした。私に命を与えた戒めを、決して忘れることはいたしません（詩篇119編92、93節）』とあります。素敵なみことばです。これは、日常生活の問題に対し、みことばをいただき、そのみことばに従って行動する。そのように一つひとつみことばに従うことを通して、人生の歯車が動き始めるということだと思うのです。

『人間の怒りは、神の正義を生み出さない（ヤコブの手紙1章20節）』とあります。境界性パーソナリティ障害が抱える大きな問題に、激しい怒りの感情があります。こうした時こそ、聖書の戒めに立ち返り、秩序ある行動や考え方ができるよう、次のように祈り求めることが大切だと思います。

『主よ、人間の怒りは、神の正義を生み出さないと聖書にあります。今日一日あなたの戒めを求め、戒めに従うことができるよう力をお与えください。今日出会う人に対し、自分の感情をコントロールできるよう力をお与えください』と。

『主の戒めは、人をいのちへと導きます（詩篇119編93節）』とあります。境界性パーソナリティ障害は、毎日が生と死の戦いです。生きたいという気持ちと、死にたいという気持ちに振り回される生活だからです。もう人生を終わらせたいと落ち込む時があり、反対に、生きる力が湧き上がり困難に立ち向かっていける時もあります。詩篇が語るとおり、みことばを思いだし、聖書の戒めに素直に従うことを、その日一日の目標とすること。それがいのちに至る道になるということです。

『主よ、あなたにわが身を委ねます。私に戒めを思いださせ、お救いください。悪者が私のいのちを狙っているのです。どうか、みことばをお与えください（94～95節）』。

この箇所は、一日をどのように過ごすか、何に気をつけて過ごさなくてはならいかを教えてくれます。境界性パーソナリティ障害を抱える人は、様々な問題を抱えていますが、自分の存在を認めて欲しい、理解して欲しいという思いが人一倍強いのです。それで、相手からメールの返事が来ないと、いたたまれず返事が来るまで何度も何度もメールを送り付けることをしてしまいます。その時、何が自分の頭を支配しているのか、何を目標に一日を過ごすのか、落ち着いて考えなくてはいけません。

神に敵対するサタンは『盗み、殺し、破壊（ヨハネ福音書10章10節）』をはたらきます。詩篇で『敵対者が私を滅ぼそうと企てる時、私はみことばを思いめぐらせます（95節）』と、うたわれてるとおりです。『世のすべてのものに、終わりの時があります。しかし、主のみことばが絶えることはございません（96節前半）』。

この世のものすべてに終わりの時があります。しかし、みことばに終わりがないことを私は信じます。『みことばの完全性は、永遠に続くからです（96節後半）』。

この動画をご覧になってる方に知っていただきたいのは、聖書のみことばは希望を与え、決して裏切らないということです。もし同じような境遇で苦しんでいる方がおられたら、決して難しいことではありません、聖書のみことばに従ってみていただきたいのです。みことばに偽りがないということが、きっとお分かりになります。

時には気分が落ち込むこともあるでしょうが、神は、ご自分に従う人に『愛、喜び、安らぎ、忍耐、親切、善良さ、思いやり、清さ、自制心といった聖霊の実（ガラテヤ5章22～23節）』を与えると約束されています。もちろん私にも約束されていることです。

自分の心が混乱している時、次のように祈ります。『主よ、あなたが与えると約束された救いを、いま求めます。山を見上げ主に祈ります。私の助けは、どこから来るのか。私の助けは、天地を造られた主から来る（詩篇121篇）』とダビデが祈りました。同じようにいま私もあなたの力を求めます。どうか私をお助けください。私の苦しみに目をお留になってください』と。私はこのように祈り求め、混乱した場面をのり越えてきました。聖書のみことばは本当に、人にいのちを与え、立ち上がらせる力があります。

薬をのんで治療をされている方もいることと思いますが、私はいま医療保険に加入してないので、薬代を支払ったり、病院の治療費を支払うことができません。

※訳注　アメリカの健康保健制度は複雑です。民間会社に制度が委託されている場合もあり、会社の審査基準に満たないため加入できない人も多くいました。オバマケアと呼ばれる医療保険制度改革により、それまで未加入だった人も2014年1月1日から加入が義務となりました。この動画は、義務化以前に作られたものです。

薬をいただいたり治療を受けることはできませんが、聖書のみことばが、自分の行動や感情の混乱を抑える働きをしています。喜んで従う時、みことばは力を表します。

毎日聖書を10節ばかり読み、自分に必要な戒めや導きを得ています。これを楽しんでやっています。動画をご覧の方にもこれをお勧めします。詩篇51篇も神さまに感謝を捧げるのに相応しいうたです。学びやすく良いうたなので、お勧めします。難しいことではありません。

『神さま、感謝をします。一日の中には不愉快なこともありますが、神さまは良いことしかなさらないお方です。主よ、あなたは讃えられるべきお方です』『主に感謝します。主がなさることは全て良いことだからです』このように、一日に何度も口ずさんでいます。

時には、人に傷つけられ自分を見失い、取り乱してはそのことで頭がいっぱいになることもあります。でも次の日に引きずることはしません。聖書のみことばを思い起こすことができるからです。これが『自分の考えを改めることによる内面変化（ローマ人への手紙12章2節）』だと思います。自分の考え、気持ち、行動を変えてくださるのは神さまで、私はみことばの力によって回復の道を歩んでいます。

この動画が、同じ病気で苦しむ方の励ましになることを願います。それでは。


※聖書のみことばは、ジョーダンさんが話された英語から翻訳したので、市販の日本語訳聖書とは違っています。

ジョーダンさんが他の動画で述べておられますが、境界性パーソナリティ障害が、祈りとみことばだけで治すことができるとは仰っていないので、誤解なさらないでください。そのように誤解された方がいたとのことです。ジョーダンさんは、治療を受けたくても受けられない状況にあり、今まで祈りとみことばに励まされながら回復の道を歩んできた体験を語っているということです。受けることができるのであれば、積極的に治療を受けていただきたいと思います。



～詩篇119篇について～

ジョーダンさんが引用された詩篇119篇について記述してみます。詩篇で繰り返し使われる『戒め、みことば、教え、さとし』とは、旧約聖書の律法（トーラー　創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の5書）を指していて、詩篇の筆者は、律法に従って生きることが神に祝福された生き方であることを説いています。

詩篇119篇は、詩篇の中で最も長いうたで、かつ1章の長さが聖書全体の中で最も長いところです。英語のアルファベットABC・・・は26文字ありますが、ヘブライ語は、アレフ、ベート、ギメル・・・全部で22文字になります。

詩篇119篇は1節から176節までありますが、1～8節で第一段落、9～16節が第二段落と、8節ごとに段落が作らており
176節＝8節×22段落
22の段落で構成されています。

元のヘブライ語聖書を見ると、第一段落の1～8節は全てアレフの文字で始まり、第二段落の9～16節は全てベートの文字で始まっています。各段落ごとに見ると、8節全て同じアルファベットで始まっています。アクロスティック(acrostic)という表現技法で、日本の文学表現でいえば折句というものが近いでしょう。伊勢物語の『かきつばた』の歌はご存知でしょうか？

からころも
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞおもふ

詩篇119篇は『かきつばた』形式で書かれています。


1～16節を例に挙げると、1～8節はアレフで始まり、9～16節はベートで始まっています。
ヘブライ語は、日本語と反対に、右から左に読み進めます。



詩篇119篇は、私も苦しい時に読み返し慰めと力を受けてきた箇所です。119篇の一部ですが紹介させていただきます。

詩篇119篇65～104節　新改訳

語頭テット

65 主よ。あなたは、みことばのとおりに、あなたのしもべに良くしてくださいました。
66 よい分別と知識を私に教えてください。私はあなたの仰せを信じていますから。
67 苦しみに会う前には、私はあやまちを犯しました。しかし今は、あなたのことばを守ります。
68 あなたはいつくしみ深くあられ、いつくしみを施されます。どうか、あなたのおきてを私に教えてください。
69 高ぶる者どもは、私を偽りで塗り固めましたが、私は心を尽くして、あなたの戒めを守ります。
70 彼らの心は脂肪のように鈍感です。しかし、私は、あなたのみおしえを喜んでいます。
71 苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした。私はそれであなたのおきてを学びました。
72 あなたの御口のおしえは、私にとって幾千の金銀にまさるものです。


語頭ヨッド

73 あなたの御手が私を造り、私を形造りました。どうか私に、悟りを与えてください。私があなたの仰せを学ぶようにしてください。
74 あなたを恐れる人々は、私を見て喜ぶでしょう。私が、あなたのことばを待ち望んでいるからです。
75 主よ。私は、あなたのさばきの正しいことと、あなたが真実をもって私を悩まされたこととを知っています。
76 どうか、あなたのしもべへのみことばのとおりに、あなたの恵みが私の慰めとなりますように。
77 私にあなたのあわれみを臨ませ、私を生かしてください。あなたのみおしえが私の喜びだからです。
78 どうか高ぶる者どもが、恥を見ますように。彼らは偽りごとをもって私を曲げたからです。しかし私は、あなたの戒めに思いを潜めます。
79 あなたを恐れる人々と、あなたのさとしを知る者たちが、私のところに帰りますように。
80 どうか、私の心が、あなたのおきてのうちに全きものとなりますように。それは、私が恥を見ることのないためです。


語頭カフ

81 私のたましいは、あなたの救いを慕って絶え入るばかりです。私はあなたのみことばを待ち望んでいます。
82 私の目は、みことばを慕って絶え入るばかりです。「いつあなたは私を慰めてくださるのですか。」と言っています。
83 たとい私は煙の中の皮袋のようになっても、あなたのおきてを忘れません。
84 あなたのしもべの日数は、どれだけでしょうか。あなたはいつ、私を迫害する者どもをさばかれるのでしょうか。
85 高ぶる者は私のために穴を掘りました。彼らはあなたのみおしえに従わないのです。
86 あなたの仰せはことごとく真実です。彼らは偽りごとをもって私を迫害しています。どうか私を助けてください。
87 彼らはこの地上で私を滅ぼしてしまいそうです。しかしこの私は、あなたの戒めを捨てませんでした。
88 あなたの恵みによって、私を生かしてください。私はあなたの御口のさとしを守ります。


語頭ラメド

89 主よ。あなたのことばは、とこしえから、天において定まっています。
90 あなたの真実は代々に至ります。あなたが地を据えたので、地は堅く立っています。
91 それらはきょうも、あなたの定めにしたがって堅く立っています。すべては、あなたのしもべだからです。
92 もしあなたのみおしえが私の喜びでなかったら、私は自分の悩みの中で滅んでいたでしょう。
93 私はあなたの戒めを決して忘れません。それによって、あなたは私を生かしてくださったからです。
94 私はあなたのもの。どうか私をお救いください。私は、あなたの戒めを、求めています。
95 悪者どもは、私を滅ぼそうと、私を待ち伏せています。しかし私はあなたのさとしを聞き取ります。
96 私は、すべての全きものにも、終わりのあることを見ました。しかし、あなたの仰せは、すばらしく広いのです。


語頭メム

97 どんなにか私は、あなたのみおしえを愛していることでしょう。これが一日中、私の思いとなっています。
98 あなたの仰せは、私を私の敵よりも賢くします。それはとこしえに、私のものだからです。
99 私は私のすべての師よりも悟りがあります。それはあなたのさとしが私の思いだからです。
100 私は老人よりもわきまえがあります。それは、私があなたの戒めを守っているからです。
101 私はあらゆる悪の道から私の足を引き止めました。あなたのことばを守るためです。
102 私はあなたの定めから離れませんでした。それは、あなたが私を教えられたからです。
103 あなたのみことばは、私の上あごに、なんと甘いことでしょう。蜜よりも私の口に甘いのです。
104 私には、あなたの戒めがあるので、わきまえがあります。それゆえ、私は偽りの道をことごとく憎みます。


65～104節は、5つの段落からなります。各段落で最初に使われてるヘブライ語を抜き出しまとめてみました。



詩篇119篇