斎藤和志ブログ

フルート奏者、斎藤和志のブログです

事業仕分けで芸術関連予算大幅カット

2009-12-08 23:20:52 | Weblog
だそうで、昨日音楽家8人が反対の会見をしてましたけど、自分も当事者なのでちょっと演奏家の立場からグチなど。

やっぱり「オーケストラ=クラシック音楽=自分と関係ないし、日本古来のものでもないし、保護する必要もない」
と思われているようですね。
客が入らないのは努力不足、人気のないものは廃れて当然、と。

これは結構誤解がありまして、実は東京フィルの場合、自主公演の定期演奏会など、結構ほとんど満席なんですよね。ただ、オーケストラってのは、すべての演奏会が完売であったとしても、そもそもそれだけでは黒字にはならない特殊な業種なんです。
これは、世界の超一流の楽団であろうと、どこでもそうで、そもそもなんらかの助成、あるいは税制優遇があって寄付集め、などがないと絶対黒字にはならんので。

イメージとしましては、図書館や体育館、公営プールのようなものと同じ、公共サービスみたいなのを想像していただけるとわかりやすいと思うんですけども・・・

え、自分は全然クラシックなんて聴かないし関係ない?
ええ、おっしゃることわかります。しかし意外に思われるかも知れませんが、
実は、東京フィルはもう100周年を迎える歴史ある楽団で、実はかなりみなさまのお茶の間に浸透しているんですよね。

極端なハナシ、普通にテレビや映画を見たり、ラジオ聴く人で、意識してはいないでしょうけど、ボクのフルート聴いたことない人ってほとんどいないかも知れませんですよ?
いろいろな映画やドラマなどのBGM、CM、ゲームなどなど、、
普段はあまり言わないんですけど、たとえば、、エニックスやレベル5の超大作RPGやセガの看板アクションゲームでフルート聞こえてきたら自分かもです。新しい平原綾香さんのアルバムや某ハリウッド系三国志や今度公開の映画のだめカンタービレ。速~いテンポでバディネリ吹いてます。自分は乗ってませんが、逆転裁判も紅白歌合戦も東京フィルでてます。題名のない音楽会や名曲アルバム。あなたの街で夢コンサート。新国立劇場の演奏などもよく放送されますし、今月はディズニーオンクラシックで全国を回りますし、一青ヨウさんともコンサートあります。ほかにも正月ドラマやアニメなんかにもいくつも音ででてますし、CMとかもたくさんあり、たまにTVみてて「あれ、、、これ聴いたことあるな、、なんだっけ、、、あ、オレか」なんてよくあります。
(あ・・・もちろん本業のクラシックもバッチリもやってますよ。大体、なんとなく人気ないイメージのクラシックですけど、世界で現在まで、もっとも売れた、あるいは売れ続けているのは実はマイケルでもビートルズでもなく、モーツァルトだと思うんですけど、どうでしょう?いまだに世界中でかならず毎晩ライブやってますよ。録音なんていったい何種類あるのか)

で、それもすべて、オーケストラの現場の厳しい環境で鍛えたからこそその技術を世の中に還元できると思っているのですが、、、


ついでに言えば、演奏家個人の生活、という観点から言えば、もうこれ以上ほとんど努力できない、というとこまできてるつもりなんですよ。予定では今月は27日東京フィルに出勤、と書いてありますが、これはあくまで出社してる時間であって、家では、それよりさらに長い時間、曲目をあらかじめ練習する必要がありますし、それでいて給料ははっきり言って生活できるかできないか微妙なライン、ボーナスなんて入団10年近くになりますが、1回もらっただけ(額面2万4千円でした)。ちなみに、私が副代表を務めてます自主運営団体、東京シンフォニエッタの定期演奏会、これの出演料は「ゼロ」。そんなわけでリハーサルやコンサートの合間をぬって早朝から深夜まで大学でレッスンしたり、スタジオへ行ったり。
決して皆様の血税をつかってノンビリノホホンしてるわけじゃないんです。


そうやって20年も突っ走ってきて、毎日音楽のことばっかり考えてようやくここまで来れた(というかここまでしか来れませんでしたが)思いはあります。1時間の仕分けショーで廃止、縮小、オーケストラ解散のピンチ、、、、いや、不景気、お金の節約、わかりますし、ある程度受け入れなくちゃいけないのはわかります。好きなことやってんだから当然だろう、ええ、わかります。ただ、こういう目に見えづらい、必死に積み上げて鍛えたものが一瞬でパーになり、またいつか取り戻したくても、またゼロからのスタートになるわけですよね。さすがにガックリきてしまいますね。

そんなに世の中に対して無意味で低レベルなことをやってきたつもりはなかったのですが・・・

はやくバッチリ好景気になってくれませんかねえ・・・