蕃神 義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

裸の男を読む 6 (最終)

2019年11月18日 | 小説
始めに。本章題にて6回目の投稿です。過去投稿とも合わせHP(www.tribesman.asia)に3回連載として掲載しています。ブログ文から(かなりの行数を)加筆、改訂しています。是非、ホームページにも御訪問を、2019年11月18日)

一方、paradigmeとは出来事の進み具合、その起と結を探る論理であるわけだから弁証法と言える。この思考を部族民蕃神は経時因果した。新大陸の神話では筋立ては多くに同盟や制度の否定を皮切りにして、反動巻き込み、錯乱(罰に結びつく)そして総括でサイクルを終える。総括をサルトルの言葉totalisationとすれば理解も深まるか。分析思考、弁証法論理は先学によれば、共通の知恵としてあまねく人類が「経験の前に」抱くものだから、新大陸の先住民にしてもこの思考回路で、世の中と森羅万象を見極めている事実は偶然ではない。

今回作成したPDFの2頁目 拡大は下に

英雄(M1バイゴゴ)は罪と罰サイクルの終局に生まれる。母を姦淫し通過儀礼には鳥を巻き込み難関をくりぬけ、インコの雛を父に渡さず飛礫を放つ。結果は死であるが、機転を利かせて(粘土でお尻の穴を塞いで垂れ流しを防ぎ)蘇り、洪水の後、火の所有者として世に君臨する。
M538イシスにして前世代数次の近親姦の果てに俗神に救い出され、ばらけた身を俗神の膝に身体移植されて新たな誕生。否定、反動、錯乱、総括の因果を有様はM1と変わらずとすれば、2の神話で経時の展開の様は共通している。
Syntagmeを横軸としてpradigmeは縦軸、それらが形成する座標を統合(グローバル)野としたのは、前回投稿(神話から物語りへ)にて著者レヴィストロースの文中示唆を受けての故の定義である。本投稿で南米神話M1(鳥の巣あらし神話Bororo族)等と北米M538(イシスの冒険神話Klamath族)等が一つの神話群を形成するか、上述を取りまとめる形で、統合(グローバル)野に共存するかを試みるとしよう。
PDF1頁目を参照、これは上述1~2理論の図式化そのものとなります。
PDF2頁目は実例を当てはめての肉付けとなります。結論を先に述べると新大陸、南北の神話群は共時、経時の因果を共に持ち、その座標、統合野の中に共存している。
始めの因果である同盟をみると;
同盟とは婚姻制度であり、嫁やり取り(母系社会のBororoでは婿の納まり方)に他ならないが、支族の間柄を、やり取りを通じて強固にする制度です。主人公は同盟を否定した。再生して村に戻り、父ら族民を殲滅する。これが同盟を否定した罰、社会の途絶となります。
M538 では末弟をテント奥の地下穴に隠す。姉は実弟との姦淫を希求する。姉は弟を引き連れる途中で露営する。婚たわけが発生した。村は姉の火付けで壊滅し、全族民が焼け死んだ。両の神話では社会制度においても否定(罪)、反動(罰)、総括の蠢きをみる。


別神話ながらM2 Bororo族では毒流し漁で故意に遅れ、掬い上げた魚を独り占めして病気になった女を描いている。女にありがちな「喰いすぎ」を戒めるための教訓神話ではない。毒流し漁は村民総出の集団漁法なので漁労も漁獲も村民で分かち合う。しきたりを破った女に罰を与え、制度を守れと教えている。
北米Klamath族の実家に入り浸りの姉は、婚家の務めをないがしろにした(制度の否定)。罰は族民の虐殺。読者は「諫める善の側が悪者に殺戮される」仕組みを不平等と感じるかも知れない。前述のM1神話でも近親姦をとがめた父に罰が振りかぶり息子に殺される。日本人の抱く直線進行の勧善懲悪とは異なり、罰の下され様に複雑系があるかと伺える。
儀礼についてはM1では困難な義務(水底に棲む精霊から楽器(死者の儀礼に用いる)を盗む)を命ぜられた息子は、鳥の協力を得て難なく通過する。これは個の力で切り抜ける儀礼精神への違反である。父親はより困難な義務を課す(断崖のインコの巣から雛を盗む)。バイトゴゴは失敗し(死に)帰還しない。罪と罰の起、結がここにも見える。M540は装飾と儀礼に欠かせないヤマアラシトゲ毛について一挿話を割いている(以上、PDF2頁を参照あれ)
周期性について;
南米神話では漁期と星座の関わりをもっぱらとするが、M1とその周辺神話では語られない。北米M538での「太陽周期性を混乱させる」挿話(姉が太陽に早く沈めと威嚇する)に周期への反逆が認められる。
南北新大陸神話には上述のとおり、水平視線にも経時の視点にも共通項が探し出せる。

「裸の男HommeNu」を読む 了 

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