3匹の子豚との日々 =DIAS CON MIS TRES CERDITOS=

スペインSpainのサラマンカSalamancaのラ・アルベルカLa Albercaから不定期につづります。

闘牛秘話(3)~何の為のミーティング?

2010-08-19 03:29:25 | Opinion de Toro
丑年生まれのトロです。

腹が立った成田空港からやっと出ることができ、その後
横浜動物検疫所までの移動に2時間以上かかりました。
昼の時間帯ですから大渋滞でした。
動物検疫所に着くと、トラックから木箱の闘牛達が降ろされ、
また待たされました。

何度かミーティングで、知り合った動検の責任者と挨拶をして、
隔離検査のための入所の段取りを聞きました。
取り合えず施設内に入るには衛生管理のため、長靴や作業服のような
つなぎのお仕着せが用意されており、スペインやメキシコから来た連中は
Lサイズで間に合ったようですが、私は身長180cm越える体ですので、
お仕着せのLサイズには収まらず、でもユニホームを着ないと仕事が
出来なので、無理やり体を押し込みなんとか作業着と長靴を着ましたが、
窮屈さには閉口しました。

やっと作業着に着替え施設の中に入りましたが、ミーティングが続き、
牛の隔離施設設置のため、図面などで説明したり、またその施設に牛を
入れるまでに、検査用の血液を採取し、便の採取などの作業をしなくては
なりません。
牛の隔離施設を設営するため、動物輸入取扱い業者と動検の責任者及び
検査官達とスペインからミーティングのために三度も出張して来て、
更にファックスなどで図面を送り、細かい点を詰めてきたのでスムーズに
運ぶと思いきや、またここで嘘だろう!!!、何の為にミーティングを
やったのか、ミーティングで話した事など何も聞いてはいないじゃん!!!、
唖然として堪忍袋の緒が切れっぱなしでした。

コーディネーター会社の社長が「トロさん絶対お役人とは喧嘩しないで
ください、喧嘩したら闘牛が出来なくなりますから」と釘を刺されていました。
しかし説明したり図面を見せて、牛がスムーズに動けて、検査など流れ作業が
でき、隔離施設に入れるように、図面を見ながら何度も打ち合わせをしたの
にもかかわらず、隔離室入り口前の通路に幅80cmしか開かない檻のような
動物挟みが設置され、木箱の牛の出口側をそこに置き、牛がその動物挟みの
檻を通り真中に来た時に牛を檻で挟み身動きできない状態にして血液採取及び
便採取を行うと真顔で言ってきたのには驚きました。
設営した業者が自慢げに、「どうだ凄いだろ俺らの仕事は」と言いたげな
顔をしていたので、
トロ「すいません、質問ですが、あの動物挟みは80cm以上は幅は開かないですか」
業者「開きません」
トロ「おとなしい去勢牛の角の先の両端幅は140cmあるのですがどうしますか、
獰猛な闘牛の牛の角幅は120cmありますが、80cmの幅をどうやって通すのですか」
業者「大丈夫です」
トロ「以前にこのような仕事をしたことがあるのですか」
業者「闘牛の牛はないですが、ライオンやトラをやりましたので問題ないですよ」
トロ「角がある動物はやったことがないですよね」
業者「乳牛をやりましたから、たいしたことありませんよ」
トロ「乳牛は角を切ったり、角のない牛が殆どですが。」
業者「う...。」
トロ「闘牛の牛はただの牛ではありませんよ、獰猛な牛で、なめてかかると死
人が出ますよ」

こんな会話をしていっこうに埒があかないので、試しにおとなしい
去勢牛(闘牛の牛を闘牛場内から場外に出す時に使う訓練された牛で、
闘牛の牛の血が何パーセント入っている去勢された牛)を最初に採血を
してもらおうと、業者が簡単だと言うのでお手並み拝見しようではないかと、
その動物挟みの前に木箱を設置し、前側の板を外しました。

去勢牛は長い間箱詰めされ旅をして来たので、おとなしい牛とはいえ、
早く箱から出たいので、何度かその動物挟み檻に入ろうとするが、角の幅が
広すぎて入れない、牛さんは頭を斜めにして進もうとしたが、角が檻に
引っかかり前には進めないことを悟ったのか、とうとう頭にきて、その
動物挟み檻と木箱との隙間10cmが目に留まったのか、一挙にそこに
太い角を入れてこじ開けようとあばれだしました。

元闘牛士2人とメキシコから来た牧童2人そして私、我々五人が咄嗟に
木箱を押さえ何とか牛を木箱の中に入れ戻し、大惨事に至らずに済みました。
去勢牛が抉じ開けようとガタっと音がした時、空港から着いて来た役立たずの
20人の作業員や高慢ちきなその動物挟み檻を設置した業者達は、木箱を
押さえる手伝いをするどころか、一糸乱れず一瞬で逃げ出し、猿のように
柱にするすると登ったり、登らなかった連中は、一目散に施設内から逃げて
行き、逃げ足の速さはだけは凄かったです。
冷や汗をかいた我々5人だけが取り残されました。

逃げて行った高慢ちきな業者を呼び戻し、「あなたは問題ないと言ったが、
これでは仕事になりませんし、作業が前に進めません」「どうしてあれだけ
ミーティングで話をして図面まで書いてお渡ししたのに何の役に立っていない」
と言ったら、「すいません」とコメツキバッタのように頭をぺこぺこ下げて
言うだけで、何の解決にもならなりませんでした。
動検の検査官は早く血液検査をしたいと言ってくるし、早く解決しないと、
牛達は木箱の中でじっと待っているのが可哀想でなりませんでした。
我々5人と動検の責任者と設営業者と話し合い、動物挟み檻を撤去し、
採血や便の採取が出来るように再度設営をやり直しをしようとした時、
20人の面々はいつの間にか、いなくなっていました。

何とか我々の図面どうりに作り直して、再度去勢牛から作業を始めることに
なった時、検査官がとんでもないことを言い出してきた。
検査官「採血しますので牛の首を押さえてください」
トロ「はぁ...。」
トロ「誰が押さえるのですか?」
検査官「あなた方です」
トロ「えっ!!!」
元闘牛士1「おとなしい去勢牛でもかなり強いので、誰も首や角を持って
押さえることは出来ません。」
元闘牛士2「ましてや闘牛の牛を押さえることなど誰も出来ませんし、牛を
掴む前にその角で突かれてお陀仏です。」
元闘牛士は検査官の言っている事に驚いて、「何にも解っていない、どうする
セニョール・トロ、我々を殺す気だぞ奴らは!!」

再三危険だからと、ミーティングで角が武器になる獰猛な牛と言ってきた
のにもかかわらず、何も理解されていなかったようでした。
人の話を上の空で聞いて、独断と偏見で思い込みがはげしく、図面なんて
無視して勝手に設営し、それが失敗と解り、「初めての経験だから」と後から
言い訳紛いのことを言われても、運良く事故はなかったので良かったものの、
情けない話です。
もし事故が起きて、怪我人でも出したら、どうなるかなんて何にも考えて
いなかったようですし、あまりにも事故管理の考え方が希薄だったので、
我々がしっかりしないと大変なことが起きるかもと、油断しないように心を
引き締め作業を続けました。

危険だから木箱の中で採血や、便も採取できるように、後側を開けて
お尻から採血できないかと交渉しました。
私も獣医学を少しかじったことがありますので、血管が何処にあるのか
解りますので、検査官に尻尾の付け根部分から採取が出来る血管が通って
いるから、そこから採血できないかと交渉しました。
最初は素人が何を言ってるかというような顔で見られましたが、解剖学的な
説明をしたら、検査官もプロだったので、確認の為か事務所に専門書か何か
参考文献を見に行ったのか、帰りは笑顔で戻ってきて、分りました尾の付け
根近くに十分採血が出来る血管がありますから、そこから採血し、肛門から
便を採取しましょうと言う事になり、お尻からで決着がつきました。

木箱の後部を開けてお尻から採取しますが、おとなしい状態を保つのには、
麻酔を少し注射ないと安心して仕事が出来ないので、眠らない程度の麻酔の
注射の許可を動検の責任者にお願いしました。
最初は駄目だと言っていましたが、危険であること説明し、去勢牛が暴れ
だそうとする所を見ていたので、もし闘牛の牛が施設の中で大暴れして
怪我人でも出ると困るので、渋々麻酔の使用の許可を頂きました。

麻酔を注射されても、尻尾の付け根近くから採血の為、注射器の針が刺さると
後脚をバタバタと動かしたが、お尻だけ出して、その他はプロテクターの
ために板張の柵を取り付けていたので安全でした。
お尻からの採血が終了し、後側の板を木箱に差込、前側の板を外し、麻酔で
朦朧とした牛は、よたよたと隔離室に入っていき、長い旅で喉がカラカラ
だったのだろう、闘牛の牛は獰猛だがその反面デリケートな牛であり、
水が変って下痢でもしたら大変ですから、牛さんのために数千リットル
用意したミネラルウオーターを美味しそうに音を立てて飲んでいました。
牛さんたちご苦労さん、人間様がもう少し仕事をテキパキと動いていれば、
もっと速くに隔離施設に入れて、ゆっくり体を休められたのに、本当に
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

横浜動物検疫所で隔離施設に全ての牛を入れて作業が終わったのが、夜の
12時をまわっていました。
成田に朝の9時に到着してから、水かコカコーラくらいで、温かい食事などは、
何も口にする事が出来ませんでした。
やっと仕事が終わり、温かいラメーンが食べたかったので、夜間営業の店に
連れて行ってもらい、ラーメンの汁が五臓六腑に染み渡り、メキシコから
48時間以上も、温かい食べ物は食べていないので、やっと温かい食事に
ありつくことができた、至福のひと時でした。

知らないことなら、知っている人から、よく聞いて、理解するまで、
聞いていくのが、責任ある人間の行動であり、当たり前の事と思います。
考えて行動し、聞いて仕事を覚えるという事が出来なくなった現在は、
仕事や人との応対など、色々な業種で、礼儀作法までマニュアル化されて
しまっています。
この頃は、危険管理もいい加減なのか、色々な所で、エッ!!と思わず声を
出してしまうような、人的管理ミスのニュースが頻繁にテレビから聞こえて
きますが、あまりにも危険管理や事故管理を怠ったことが原因と思われる、
事故が多すぎます。「エッ!!、またか!!」の連発です。

次はいよいと闘牛の日のお話をする予定です。



8月19日追記
タイムリーなニュースを見つけました。

「スペインで闘牛が観客席に、30人けが」
スペイン中部の街にある闘牛場で、突然、牛がフェンスを乗り越え
観客席になだれ込みました。

牛は物凄い勢いで観客席を駆け上がり、付近にいた人をなぎ倒しながら
突進、突然の出来事に現場は騒然となりました。

その後、牛は取り押さえられ殺されましたが、地元メディアによると
10歳の少年が重傷を負うなど少なくとも30人がけがをしたという
ことです。(19日11:58)

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闘牛秘話(4)~血を流さない闘牛
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