ネットオヤジのぼやき録

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山は動いた? - GGG VS 村田 実現に向けて前へ進む -

2021年10月31日 | Boxing Scene

■12月29日/さいたまスーパーアリーナ/BF・WBA世界ミドル級王座統一12回戦(?)
IBF王者 ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン) VS WBAスーパー王者 村田諒太(帝拳)


※ゴロフキン(左)と村田(右)
(2014年7月/カリフォルニアにあるGGGのキャンプを訪問)

大きな山が動きつつある。

今月25日付けのスポニチWEB版に、以下の記事が掲載された。

◎ゴロフキンは村田戦に同意もDAZNとの間に問題発生 年末に神戸で対戦計画
2021年10月25日/スポーツニッポン
https://www.sponichi.co.jp/battle/news/2021/10/25/kiji/20211024s00021000740000c.html

当該記事によると、ジョージア州アトランタで23日取材を受けたアラムが、「ゴロフキンは村田戦に同意しているが、DAZNとの間で問題を抱えている。今少しの間注視する必要がある。」と語ったらしい。

GGG本人は年末の来日を受け入れたものの、DAZNと契約で揉めているとのニュアンスだが、「GGGとDAZNの問題は解決した」との怪情報(?)もあって、英語のボクシング関連記事に該当するもの(アラムの発言)が見当たらず、DAZN公式サイトのスケジュールにも、まだ「GGG VS 村田戦」の掲載はない。

※DAZN BOXING SCHEDULE 2021
 FIGHT DATES AND LIVE STREAM FOR CONFIRMED CARDS
https://www.dazn.com/en-GLOBAL/news/boxing/dazn-boxing-schedule-2021-fight-dates-and-live-stream-for-confirmed-cards/jfayyf6536jp17kityknul24l


リング誌公式サイトやESPN,Bad Left Hook等々、名だたる在米専門サイトにも、27日~28日にかけて、「12月29日(日本時間28日)さいたまスーパーアリーナ開催」が続々と報じられた。
※末尾に関連記事のURLを付記

当初報じられていた神戸(ノエビア・スタジアム)から、首都圏の埼玉へと開催地が変更されたのは、ワクチン接種の進捗に伴い、武漢ウィルス禍(第5波)が収束へと大きく動き出した為だろう。

Boxing Sceneにはアラムのインタビュー記事がアップされたが、英国スカイ・スポーツが力を入れて報じていた「GGG VS クリス・ユーバンク・Jr.戦」への期待も含めて、「ホームのムラタは侮れない。ゴロフキンは下降傾向が明らかで、番狂わせの目は十分にある。」と述べている。

「どちらになるにせよ、勝ち残った方が来春ユーバンク(前WBA暫定王者/WBAが制度廃止踏み切り1位に移行)と戦う。(組み合わせの如何を問わず)米・英・日3ヶ国とも、大いに沸くだろう。」


最終的な合意に向けて詰めに入っているのか、そこまで至っていないのか。今1つ状況が掴み切れず、フラストレーションを感じながらも、「本当に妥結に向けて進捗しているようなら、すぐに続報が出るだろう。」と思っていたら、28日付けのニッカンに次の記事がアップ。

◎来月上旬に発表へ 村田諒太、ゴロフキンと12・29さいたまSAで統一戦
2021年10月28日/ニッカンスポーツ
https://www.nikkansports.com/battle/news/202110280000294.html

この記事によると、週明け(11月初旬:第1週)にも正式発表とのことだが、村田の調整も本格化しつつあるようなので、今度ばかりは「8割方確定」と見てよさそうだ。


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「まだ解決してなかったのか・・・(GGGとDAZNの契約を巡る話し合い)。」

スポニチの記事を読んだ直後に抱いた、率直な感想である。

2018年の秋、DAZNが「5年11試合・総額3億6500万ドル(約410億円)」という途方もない条件でカネロを獲得した翌2019年3月、GGGは「6試合・総額1億ドル超(111億円超/推定)」でDAZNと契約した。

ESPNとPBC(Premier Boxing Champions)も獲得に乗り出して、一時はESPNとの契約が確実視されたものの、決断の決め手となったのは、やはり「カネロへの雪辱」。

年間2試合で3年の計算には、当然カネロとの第3戦が含まれている。と言うより、「カネロ VS GGGの決着戦ありき」の超大型契約×2本と表するべき。


※左から:カネロ,オスカー・デラ・ホーヤ,ゴロフキン


だがしかし、交渉の決定権を握るカネロがどうにも煮え切らない。口さがない言い方で恐縮だが、「GGGとはもう結構」とばかりに勝ち逃げを決め込んだ。

DAZNはカネロに対する1試合当たりの報酬引き下げを断行。カネロ陣営は法廷闘争に持ち込んで徹底抗戦の構えを見せるも、「有料視聴者数が一定の基準に満たない場合の減額は、契約に定めてある通り」だとDAZNもけっして立場を譲らず、「満額欲しければGGGとの決着戦に合意しろ」と迫る。

何としても第3戦を回避したい(?)カネロ陣営は、DAZNからの離脱をほのめかして駆け引きしたが、これほどの条件を提示してくれるメディアや放送局が他にある筈もなく、暫くしたら矛先を収めて和解。

ただ、長らく米本土でのプロモートを任せてきたゴールデン・ボーイ・プロモーションズとの契約解除に踏み切り、舵取り役をトレーナーでもあるエディ・レイノソに一任する格好で、自ら立ち上げたカネロ・プロモーションズを、名実ともに一本立ちさせた。


左から:エディ・レイノソ(チームを率いるヘッド・トレーナー/カネロ・プロモーションズの事実上の代表者),カネロ,ホセ・”チェポ”・レイノソ(エディの父/最初のトレーナー兼メンター)


「GGGとの第3戦は契約に含まれておらず、話自体も聞かされていない。GBPが我々の了解を取らないまま、DAZNと勝手に進めた話(2019年9月に口頭で確認した?とされる)だ。」

訴訟に持ち込んだカネロ陣営は臆面もなくそう言い放ち、「GGGとの決着戦?。そんなん知らんがな」と居直る。

確かに、DAZNとカネロの契約は両者間で直接交わされたものではなく、周知の通り、GBPが前面に立ってとりまとめた。しかし、「(GGGとの第3戦について)知らぬ存ぜぬ」との主張は、幾らなんでも無理筋かつ非現実的な言い訳だ。

契約の必須条件として明記されていたか否かは別にして(流石に抜かりがあるとは思えない)、「カネロほどのプロが、何を子供じみたことを。ちゃんとわきまえていた筈だ。」と誰もが思う。


また、GGG第3戦の交渉が難航した場合の代替候補として、ハビブ・ヌルマゴメドフ(元UFC世界ライト級王者/史上初のロシア人UFC王者),ホルヘ・マスヴィダル(UFCウェルター級ランカー)の総合格闘家2名の名前が流布されたが、これもまた「なんだかなあ・・・」とため息しか出て来ない。

「メイウェザー VS マクレガー」の二番煎じは、確かに国際的な話題にはなるだろうし、PPVセールスと視聴者数もそれなりに稼ぐと思うけれど、DAZNが配信を行う主要な国々において(日本も含めて)、喉から手が出るほど欲しい安定した新規契約者を数多く獲得できるのかと言えば、その点は大きな疑問符が付く。


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いずれにせよ、サッカーを中心にしたスポーツ・コンテンツ以外に収益基盤を持たず、パンデミックによる深刻な打撃の影響もあって、「5年11試合・総額3億6500万ドル」の重過ぎる足かせを一刻も早く外したいDAZNは、カネロ陣営に新たな条件を提示。

「1試合2,000万ドルの最低保障+新規加入者数に対する追加報酬+ストック・オプション」との内容で、これでも桁違いの破格なのだが、カネロ陣営はあくまで拒否と伝えられる。

訴訟の長期化が懸念される状況で、「HBOがボクシング中継から撤退した現状、例えばShowtimeがそこまでの条件を出せるのか?」と、多くのファンとマニアがいぶかった。

「どう考えても、譲るべきところは譲って、DAZNに残るのがベストなんじゃないの?」と、これもまた誰もが思う。


「カネロの本当の目的は、DAZNとの直接契約=(DAZNの意向に沿ってGGG第3戦を前に進めようとする)GBPの排除=だった。」

セルゲイ・デレヴィヤンチェンコとの指名戦交渉をまとめ切れず、IBFミドル級王座のはく奪に端を発したとされるGBPとカネロとの亀裂について、「GGGとの第3戦を避けて、S・ミドル級に定住する。プロモートもすべて自分たちで仕切る。カネロとレイノソは始めからその方針だった。」と断言する専門記者もいる。

多くの在米マニアが「そんなのわかり切ってるよ。」と、半ば呆れ顔で吐き捨てるかのように言うだろうが、要するに「プロモーターとして本格的な自立を模索し始めたカネロと、傘下に置き続けて旨い汁をこれからも啜りたいGBPとの関係は、とっくの昔に破綻していた」と見るのが筋ということらしい。


結果的にカネロはDAZNとの関係を継続(以外に道は無い)して、レイノソ親子とともにプロモーターとして独立独歩の体制をスタート。カネロ(メイウェザーの後を受け継ぐボクシング界最大のドル箱)を失ったGBPとDAZNの契約もこれまで通り。

踏んだり蹴ったりで「泣きっ面に蜂」のデラ・ホーヤだが、憤怒にまかせてケツをまくる(DAZNとの協調体制をご破算にする)訳にも行かず、ここはもう黙って耐えるしかない。

GGGとの第3戦が消えた代替案として、DAZNとカネロ双方が合意していた(?)L・ヘビー級進出を決行。年齢的な限界が見え出したセルゲイ・コヴァレフを11回TKOで駆逐し、4階級制覇王者の仲間入りを果たすと、獲得した175ポンドのWBO王座を即座に返上。

ウェルターからS・ウェルター、さらにS・ウェルターからミドルへと、「増量に苦しんだ」過去の経緯を知る者なら、「L・ヘビー?。いくら落ち目のコヴァレフでも、流石にキツいんじゃ・・・」と感じたのではないか。




GGGとのリマッチが決まった後、ジルパテロール(クレンブテロールと同等の禁止薬物)の陽性反応を示したカネロについて、「意図的な使用」を信じて疑わない在米マニアが多いのは、至極当然の事だと私も支持する。

疑惑を向けられるフィジカル&ストレングスの専門家,アンヘル・”メモ”・エレディア(メモ・エルナンデス)の存在と、チーム・カネロも含めたメキシコとフィリピンのトップボクサーたちへの関与については、別の記事で触れるつもりなのでここでは深入りしない。

念願叶ってGBPの排除が確定した直後の昨年暮れには、テキサスの要所アラモ・ドームにカラム・スミス(WBAスーパー王者/WBSS優勝者)を招聘し、ワンサイドの3-0判定で圧勝。S・ミドル級定住の烽火を上げる。


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前置きが長くなり過ぎてしまったが、当然DAZNはGGGにも減額を要求した。シェルメタ戦の発表とほぼ同じタイミングでこの話題が報じられており、GGGと陣営が抵抗(当たり前)して、カネロの二の舞になる可能性にも言及。

今度はGGGがケツをまくる場合も有りという、穏やかならぬ論調の記事も散見されたが、まずは、DAZNとの契約後に行われた3試合の報酬を見てみよう。

<1>スティーブ・ロールス戦 2019年6月8日/MSG N.Y.(観客動員:12,357名)
1,500万ドル(以下の最低保障に新規加入者数に応じたインセンティブとストックオプション,スポンサーシップからの収入等を合計した総額)
・最低保障:200万ドル(キャッシュ)
※ロールス:30万ドル

<2>セルゲイ・デレヴィヤンチェンコ戦 2019年10月5日/MSG N.Y.(観客動員:12,577名)
1,500万ドル(スポンサーシップ+新規加入者数に応じたインセンティブ+ストックオプション等を合計した総額)
・最低保障:750万ドル(キャッシュ)
※デレヴィヤンチェンコ:400万ドル(インセンティブを含めた最終額:520万ドル)

<3>カミル・シェルメタ戦 2020年12月18日/セミノール・ハードロック・ホテル&カジノ,フロリダ州ハリウッド(※無観客)
約1,000万ドル(スポンサーシップ+新規加入者数に応じたインセンティブ+ストックオプション等を合計した総額))
・最低保障:700万ドル(キャッシュ)
・PPVインセンティブ60%
※シェルメタ:150万ドル+PPVインセンティブ40%(PPV売上が目標を超えた場合:300万ドル+PPVインセンティブ40%)


※DAZNのジョン・スキッパー会長(左/ESPNの元社長)と番組で対談するゴロフキン(右)


シェルメタ戦でGGGが受け取ったとされる報酬額は、前の2試合に比べて3割超のマイナス。確かに下がっている。

ただしこの時点では、武漢ウィルス禍による「無観客」が直接的な原因で、契約全体の見直しではなく、あくまで「単発の調整」だとする関係者もいた。

けれども、S・ミドル級への階級アップについて、GGGは現在に至るまでまともに言及したことがなく、間もなく40歳になるGGGの年齢を考慮しても、カネロとの決着戦は消滅したと考えざるを得ない。

さらにパンデミックによる収益減からの早急な回復は、世界中の企業法人や個人と同様、DAZNにとっても喫緊の急務であり、今後の経営戦略を大きく左右しかねない重大事でもある。DAZNの要求は、「新たな条件での再契約」と捉えるのが妥当だと思う。

カネロとの決着を望んで止まないGGGと、陣営を率いるトム・レフラー(GGGプロモーションズのトップ)にしてみれば、容易に納得することができない話ではある。


※GGGとトム・レフラー(プロモーターと言うよりは””戦友と呼ぶのが相応しいチームの要)


「冗談じゃない。逃げたのはカネロだ。我々は何時でもOKなんだ。パンデミックによる収益減についてなら、それは譲歩すべき余地はある。だが、ラバーマッチが潰れた件に関する限り、我々が負うべき責任と義務は皆無だ。」

常に穏やかな笑みを絶やさず、オポジションを過度に口撃したり、声を荒げたりすることがないレフラーも、第3戦の話になると表情が険しくなる。

まったく想定できなかった武漢ウィルス禍による売上げと収益の落ち込みは、どのような事業においても、それに関わる者すべてが、応分の負担を等しく受け入れざるを得ない。否応なしの結論である。

だとしても、シェルメタ戦が上述した条件で行われた以上、GGGと陣営はDAZNの申し入れに従い、契約見直しを受け入れたと見るのが、ごく当たり前の認識だとも思う。

ところがどっこい、アラムのコメント通りならば、DAZNとGGGの妥協点を模索する話し合いは、どうやら今もなお続いている。そしておそらく、交渉は最終的な局面を迎えているに違いないと、希望的観測を述べておきたい。


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■関連記事

<1>Sources: Gennadiy Golovkin, Ryota Murata agree on Dec. 29 title bout in Japan
2021年10月28日/ESPN
https://www.espn.com/boxing/story/_/id/32487117/sources-gennadiy-golovkin-ryota-murata-agree-dec-29-title-bout-japan

<2>GENNADIY GOLOVKIN SCHEDULED TO RETURN AGAINST RYOTA MURATA IN JAPAN ON DEC. 29
2021年10月27日/リング誌公式サイト
https://www.ringtv.com/629207-gennadiy-golovkin-scheduled-to-return-against-ryot

<3>Gennadiy Golovkin agrees to terms with Ryota Murata for December 29 title fight /The long expected bout appears to be official and will take place in Saitama, Japan.
2021年10月27日/Bad Left Hook
https://www.badlefthook.com/2021/10/27/22749377/gennadiy-golovkin-agrees-to-terms-with-ryota-murata-for-december-29-title-defense-boxing-news-2021

<4>Ryota Murata on track to meet Gennadiy Golovkin in blockbuster middleweight unification title fight
2021年10月28日/Japan Times
https://www.japantimes.co.jp/sports/2021/10/28/more-sports/boxing-2/murata-ggg-unification/

<5>Arum: Murata, On Home Ground, Can Upset Gennadiy Golovkin
2021年10月29日/Boxing Scene
https://www.boxingscene.com/arum-murata-on-home-ground-upset-gennadiy-golovkin--161593

<6>EDDIE HEARN SAYS THAT GENNADIY GOLOVKIN IS FOCUSED ON DECEMBER FIGHT WITH RYOTA MURATA IN JAPAN
2021年5月8日/DAZN公式サイト
https://www.dazn.com/en-US/news/boxing/eddie-hearn-says-that-gennadiy-golovkin-i

<7>Arum Believes Golovkin vs. Murata Draws 60,000 at Tokyo Dome
2018/4/18/Boxing Scene
https://www.boxingscene.com/arum-believes-golovkin-vs-murata-draws-60000-tokyo-dome--127272

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