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次世代マーケテンィグプラットフォーム/湯川 鶴章

2009年04月11日 | 読書とか
広告に関する刺激的な(そして、いま語られるべき)意見を聞かせてくれるブログ「クリエイティブ経営論!」で紹介されていたこの本、確かに「すげー本」だ。

特に第7章の「メディアと広告 そしてすべての企業の未来」には、ずいぶんドキッとさせられる。最初の項目「広告にクリエイティビティは不要になるのか」
に続く「ラブレターの出し方を見直すこと」を読んだときには、久しぶりに目から鱗、という言葉が出てしまった。

『広告業界でよく使われる比喩に「広告はラブレターである」というものがある(中略)ラブレターが完全に不要になることはない。しかし突然ラブレターを送りよりも、何気ない場面での会話を増やすことで親密度を増す戦略の方が効果的なのである』

そうなんだよ、素敵なラブレターをせっせと書けば、いつかあの人が振り返ってくれるというのは、もはや幻想かもしれない。ぼくも広告クリエイターと呼ばれる人間の端くれとして、この話はちょっと喉につっかえた。でもこのラブレター現象は、いま確実に起こっていること。

最近思うのは、製造業の基盤が人件費の安い海外に移ったことに近い現象が、クリエイティブの世界でも起こるんじゃないか――コストの問題ではなく、ビジネスモデルの話としてだけど。そう、コミュニケーションの仕組み自体が変わっているときに、表現のディテール(すごく大事なこと、というのはわかっているけれど)ばかり話していても取り残されるばかりだ。

もちろん「力のある人間は残る」という見方もあるだろうし、さらにもっと感情的な反発もあるだろう。それは筆者も予期するところで、「おわりに」ではこう述べている。

『「クリエイティブの重要性は低下する」というわたしの主張に気分を害された広告業関係者にお詫びしたい。わたしはクリエイティブの意義を否定しているわけではない。ただ、今後テクノロジーが重要度を増す中でクリエイティブへの依存度は相対的に低下するという結論に至らざるを得なかったのだ』

著書の別の仕事では、ジャーナリズムや新聞というメディアに対して疑問、警鐘を投げかけた結果、「なんてことを言うんだ」という反発もかなり受けたそうだ。しかし客観的に見れば、自分の働く業界の現状を知ることは不可欠だし、それが報道の世界であればなおさらだ。そこから目を背けず、場合によっては痛みを伴う変化を経てこそ、ジャーナリズムは時代と並走することができるのだと思う。

クリエイティブだって同じだと思う。「どうすれば伝わるか」という原点に戻って、いまの最善策を見つけだす。それが本当にクリエイティビティというもので、創造的な発想が不必要になることは絶対にないはずだ。必要なのは柔軟な目線と、ちょっとした智恵。著者の論を死亡宣告ととるか、新たな道しるべととるか、それは自分たち次第。ぼくは、いまのところ後者ですね。



……ところで、まったくの余談なんだけど、この話は総合格闘技の黎明期に似ているような気がする。グレイシー柔術が世界を席巻し、もう打撃では勝てないと言った人間もいたけれど、いまはどうだろう。いまリングに立っているのは、勝負の根っこを見すえて対応力を磨いた人間たち。自分もそうありたいなぁ。

次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの
湯川 鶴章
ソフトバンククリエイティブ

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