ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、前国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

国会で日本の高注目度論文数の国際シェア低下が取り上げられました。

2012年04月05日 | 科学

 4月3日の15時ころ、参議院予算委員会でみんなの等の柴田巧議員が日本の科学技術政策に関連して科研費の基金化や留学生30万人計画等について質問をされ、その中で、私のブログ等で何度もご紹介しました高注目度論文の国際シェア低下も取り上げられました。

 ある情報では、柴田議員の質問の元になった資料の一つとして、私の昨年7月4日付けの日経新聞記事「質の高い論文、日本シェア低下。イノベーション力強化急務。研究に数値目標設定、人員・時間の確保を」があるようです。


 国会議員の先生が、このような、どちらかというと地味な記事に注目され、わが国の研究や科学技術の国際競争力が低下していることに懸念を表明されたことは、ほんとうに良かったと思います。そもそもこの種のテーマは選挙の票集めにはあまり結び付かないと感じられますので、注目する政治家の先生も少ないのではないかと思います。

 より正確な質疑の内容は、議事録が公開されてからご覧いただくとして、現在の情報からは、私の日経記事に関連する柴田議員の質問の大筋としては、以下の3つだったようです。(文言は実際の質問とは異なり、正確ではありません。)

 1.高注目度論文(被引用数が多い論文)の国際シェアが低下傾向にあり、これはイノベーションを図る目安とされており、大変危機感をもっているが、この要因をどのように分析しておられるか?

2.国立大学の運営費交付金削減等によって教員数や研究時間という研究インフラが大きく傷ついたことが国際シェアの低下している一つの要因と考えられる。国としてもどの程度日本としての国際シェアを維持していくのかという数値目標を持って、大学や研究機関の教員が研究時間や人員を確保できるような政策的支援が必要と思われるが、いかがか?

3.高注目度論文で苦戦しているのは地方の国立大学で、経費節減や外部資金獲得に努力しているが限界に達しつつある。国立大学の運営費交付金などが減らされることが日本全体のイノベーション力の低下につながると同時に、地域産業にも大きなダメージを与えるので、地方の国立大学の研究活動に支障を来さないような支援を行うことが必要がと思うが、いかがか?

 これは、日経新聞やブログで、まさに私が主張していることそのものです。私に代わって柴田先生に質問をしていただいたという感じがします。ちなみに、柴田議員と私とは全く面識がなく、連絡をさせていただいたことないのですが・・・。

 柴田議員の質問に対して平野博文文部科学大臣が答弁されていますが、その趣旨は以下のような内容だったようです。(文言は実際の答弁とは異なり、正確ではありません)

 1.日本は研究の国際化に十分に対応できていないということが一つであり、被引用数が高い傾向にある国際社会における共著論文の割合が少ない。もう一つは、わが国は約4~5兆円を投入しての研究開発だが、それぞれの国を比較すると、わが国の3倍くらいの資金を投入しており、このことについてもその要因がある。

2.大学への支援は、毎年度運営費交付金を渡すということだけではなく、目標と成果を明確にした制度設計をつくっていかねばならない。第四期科学技術基本計画の中にしっかりとした目標を立てるように具体的に仕掛けていきたい。

3.地域の活力をいただくための大学については、選択と集中という意味でより積極的に支援をしていく。特徴のある大学になっていってもらい、その結果地域が産官学を含めて結束をしていくプロセスで支援していきたい。運営費交付金は減っているが、大学の改革強化事業として138億円をお願いしている。

 今回、”被引用数”や”高注目度論文”などという言葉が国会審議の中で交わされることになったことは、ちょっとびっくりですね。”高注目度論文”という言葉は、昨年、私が日経新聞の記事を書くにあたって、文科省の科学技術政策研究所の阪 彩香さん(主任研究官)と相談して、私が勝手に使い始めた造語なんです。

 でも、私が注目するのは、平野文部科学大臣の答弁の中で、高注目度論文数の国際シェア低下の要因の一つとして、わが国の政府支出研究費の総額が、海外に比べて少ないという認識を示されたことです。しかも、これを財務大臣がお聞きになっている場で答弁されました。

 政府支出研究費総額が低いこと、そして総額を確保しないことには始まらないことは、私がブログでしつこく主張していることですね。

 もちろん、政府支出研究費が少ないことを大臣が認識されても、この財政難の時に研究費が増額されることは困難だとは思いますが、まずは、この現実を認識していただくことが大切であると思います。

 それにしても、新聞記事やブログなどに情報を発信することは、ほんとうに大切なことだと再認識しました。夥しい情報の渦の中で、ほとんどは流されて、忘れ去られていくんでしょうけれども、今回わずかでも政策を決定する場で内容が審議されたことについては、ほんとうにうれしく思います。

 そして、情報発信の時には、きちんと根拠となる数値を示すということが、とっても大切だと改めて感じました。夥しい記事やブログの中で残るものは、結局は根拠データに基いた情報なのではないかと思います。

 私が記事やブログを書くにあたっては、可能な場合はできるだけ根拠となるデータを示すように心がけたつもりです。そのためにブログがけっこう重いものになってしまい、ブログらしくなくなってしまうのですが、それでもその方が良かったと、今となっては感じています。


 

 

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