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日本の科学研究力は、劣化しているのか?

2017年08月20日 | Weblog

最近、科学の世界では、中国人の研究が大いに伸張し、アメリカ、中国がトップグループを形成している。日本人の科学研究力は劣化している、と言われる。論文の公刊数、引用される論文数などの統計では、実は、日本はみごとに後退している。メディアでは、日本の公刊論文数の減少を嘆き、国力の低下が叫ばれている。しかし、見方を変えると、後退作戦に成功しているといえる。

どうみても無駄な基礎研究が、地方大学や私立大学で行われるが、そういうのは、国際学会では論文として採択される確率は低い。なぜなら、国際的な学術機関の機関雑誌には、編集委員と覆面の審査委員が登録されている。東大、京大、東北大の教授は、投稿者であるばかりか、編集委員、審査委員を兼ねている。それで、世界の研究動向を日常的に読み取っている。活字化された論文は、使用済みの定型となったものである。大事なのは、電子メールで一分一秒の先着を争う「電子データ論文」である。ここに、最先端の情報が隠されている。

文部省が科学技術庁と合体し、科学技術庁が実権を握り、日本の科学研究の課題選択と資源の集中に大きな一本の筋が生まれた。国力として科学研究をマネジメントする時代へと完全に移行した。中国と似たように見えながら、最大の変化は、最大の成果の「公刊論文化」を避けるという戦略である。

中国共産党は、まだおバカな国粋主義、民族主義があるので、古典的な科学雑誌での活字論文を大量生産している。アメリカ人でも、個人の夢をかなえるために、研究成果の公刊に生死を賭けて精進している。

では、公刊論文はなぜ亡国に繋がるのか?それは、特許申請できないからである。研究成果を公刊することは、特許申請を放棄したことに繋がる。日本の最先端の企業は、大学院のなかに研究施設をもち、アカデミズムの世界から国際的に基礎研究の公刊論文をチェックし、機密事項は自社の研究部門で特許の申請を行っている。

先端大学院以外は、単なる人材養成の機関として見ている。地方の大学で真面目に基礎学力を形成した4年次生には、大企業の人事の情報担当は確実に押さえに来ている。日本は手間暇のかかる基礎研究を世界の公刊論文に世界にまかせ、国際特許に戦力を傾けている。それが、対アメリカ、対中国に処する「国家戦略」である。日本の官僚のうち、賢者は賢者である。愚者はポストで動く、賢者は信念で動く。

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