大学を教育機関と単純に理解するのは、旧世代も思想である。いまや大学院という頭に対する胴体である。大学院には、研究室の制度は公的のものではないが、慣行上は、研究室の自律性は存在している。その研究は、学術論文で公表することだったが、それは知的財産権を放棄することになるので、大学院では「特許」を取り、市場化、商品化、サービス提供のベンチャー企業をどれだけ生み出せるかで、社会貢献度をはかる評価システムが構築された。そこで、2008年に議員立法で研究開発力強化法が成立した。ベンチャー企業は、株式会社なので株券を発行できる。大学は、その株券を長期保有して得た利益を次の市場技術の開発の原資として再活用できるところまで、法的な整備はなされていない。そこで、科学技術の推進を目指した研究開発力強化法の改正案が試みられるようになった。大学での研究技術を元にしたベンチャー企業から技術の対価として受け取った株式を大学が長期保有できるように、法律に明記する。技術革新において大学の研究開発は重要だが、日本では研究開発費は、ほぼ横ばい状態である。このように国立大学は、研究市場の社会において、自己資金の持続的なマネジメントに成功するかどうか。大学のマネジメントには、国債運用や株式運用の知識が求められる時代になった。しかし、日本の金融機関では、大学院修士で、大学関係の法規などに通じ、外資系の企業との渡り合いなどできる人材は極めて乏しい。そういう目で見て、今回、廃校となる県立高校は、「研究団地」として、大学のリサーチ・キャンパス、企業の研究ラボ、さらに地域社会のメンテナンス・サポート、給食、宿泊、入浴、ランドリー・サービス、居酒屋などを含め、地域の企業が参加し、「区分所有法」の理念を基礎にして、「研究団地管理組合法人」として条件整備を整えることができる。その場合、その高校の同窓会スペースを確保し、「研究団地管理組合法人」のオーナーの一翼を担って、地域代表として参加する道を拓いて欲しい。ホテル機能と実験施設とが上手くかみ合うことが必要であろう。そのためには、地域が大学院のリサーチ・キャンパスの意義を理解し、能動的な支援が期待される。
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