これは、金正恩が中国からの特使・粟戦書に対し、表明した言葉の中国語訳である。「当前朝鲜正在实施新战略路线,集中精力发展经济,希望学习中方的丰富经验,进一步拓展各领域交流合作,共同推动两国的社会主义事业发展。」そこでは、北朝鮮は「新戦略路線を実施し、経済を発展させることに精力を集中する。中国側の豊富な経験を学習し、・・・共同で両国の社会主義の事業の発展を推進することを希望する、と述べている。仮にこの言葉を正面から受け止めると、中国は習近平から北朝鮮の経済発展への協力が、日本側に提議された場合、硬直的に拒否反応を示すことはできない。結局、ロシアがウラジオストクを自由貿易港として開放するならば、そこに北朝鮮が入り込むことを阻止できないので、早晩、経済封鎖から政権崩壊という瓦解期待のプログラムの現実性が否定されることになる。国内での反逆による体制変更も、当面、全く想定できない。日本としては、北朝鮮に大胆な経済支援を行う理由もないので、19世紀末にあった自由貿易港・ウラジオストクの再興という案にも、能動的に関与しなくてはならない現実的な必要もない。ただ、北朝鮮が中国を宗主国とすることで、対日強硬策を貫くなら、それはそれで日本の面倒は生じてこない。白か黒かの2分法の思考様式では、さらに複雑化したパズルを解くことができない。多国間の協議に参加しながらも、日本にとり最適の条件が熟するのを待つことである。少なくとも、中国が再び北朝鮮への介入ルートを確保し、ロシアからの介入ルートと合わせて、北朝鮮が独自判断で最も危険な自爆テロに進む危険は大いに回避されたと理解してもよい。
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