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中国共産党の多軸構造

2017年07月31日 | Weblog

中国共産党の研究:

習近平政権における習近平の役割が、毛沢東以来の「党主席」の超法規的な人治の復活に向かっていることは確かである。いわゆるチャイナセブンをキーワードとする分析は、習近平個人の一色に染まられていく。これをもって、独裁の体制だとか、権力の一元化を語ることは、たやすい。脳の構造が単純な分析が、大新聞でも平気で語られている。

実は、中国共産党は、建国以来、職務分掌が進んだ官僚国家である。例えば、河北省長と、党の河北省委員会書記とは、命令系統が違う。前者の行政職は、国務院総理である李克強の部下である。それに対し、党の書記は、中央書記処の総書記である習近平の部下である。党のカテゴリーと、国務院のカテゴリーとは、上下の関係がある。毛沢東時代は、周恩来という国務院総理が存在したため、実質的な権限は、行政職の命令系統で動き、党側は監査役のような機能であった。

習近平政権では、李克強は周恩来ほどの人望もなく、党の絶対主権に一元化される。しかし、中国法制史における「会典事例」という法律行政の伝統的な仕組みは、清朝から中華民国へ、さらに中華人民共和国に継承されてている。どんどん新しい法令や規則、新たな機構が作られても、大きな大テーマごとに「専門の法規テクノクラート」が存在する。だから、例えば、日本外交というファイルには、党の中央対外連絡部の「会典事例」は、政党・政客ごとに情報整理されているから、田中派の遺産をもつ小沢が異常に厚遇される。それに対し、国務院の外交部の「日本外交」というファイルは、条約、協定、共同宣言などの外交交渉の記録が「外交档案」として保管され、そこから古い事例を参照して、次の課題の整理が行われる。だから、日中の外交でも、環境行政の分野と刑事行政の分野では、比較的に整合した関係が続いている。

日中関係でも、何百という連立方程式があり、国務院外交部の「档案」として集約される。その上に、中国共産党という政党外交の「档案」がある。これが、農業、牧畜、林業から製造業、さらには国際機関、スポーツなど、党政の軸と行政の縦軸と、分野ごとの横軸がある。中国共産党は、24時間営業の世界的な政治総合商社である。1分たりとも休まない。だから、8900万人の巨大組織は、実は世界の多軸性にあわせた多軸構造をもっている。だから、外国からは、「会典事例」という法律行政の法治のテクニックに通じていないと、チャイナ分析は外れる。丁寧に、人民日報の記事を法規ファイルに整理するような隣国研究を日本では行っていない。東京の権威筋は、中国を脅威とみて居ないから、現代中国の法制の研究を手抜きしている。

 

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