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均衡する点を探る:中国の朝鮮半島への対応

2018年04月02日 | Weblog

中国の外交を裏面で支える理論家たちの間では、パラメーターを常句とする近代経済学の思考法が定着していることが分かる。これは、マルクス主義の教条では、義と利との2元論で、義もあり、利もあるのが上策とし、義はあるが利が無い、義はないが利はある下策、義も利もないのは問題外という「2項の矛盾論」で抽象議論する思考に頭脳が支配されてきた。新時代の社会主義とは、現象を多元的で、均衡・不均衡のバランスのなかに安定があると近代経済学的な思考による、プラグマティズムに立脚している。つまり、予測の当たりが正解、という真理に帰結させる。これは、もともと儒教にあった思想であるが、高度なので外交論には用いられなかった。中国では、2国間の外交では、この新時代の均衡論を駆使し、成功している。問題は、多国間の外交において、複雑な連立方程式が求められるので、ASEANと中国との外交には、「的中しない」場合が多い。ただ、2国間の外交では、均衡する点の動態変動にはうまく対処している。中国が朝鮮半島の問題を解決する外交調整のリーダーになるには、中国と相手国との2国間の外交で作り出した均衡につき、中国からみれば整合するように見えても、アメリカとロシア、韓国とアメリカ、韓国とロシア・・・という関係国の相互間の不均衡を組み込んだプログラムに関しては、まだ、未開発である。だから、朝鮮半島の「無核化」に関し、特に「核」に関して画期的な成果があると期待しないで欲しい、という論文を一研究者の見解として「人民日報」に載せてきた。そこでありうるのは、北朝鮮のが経済制裁からくる国難を避けるための抜け道として、韓国政府を利用し、かつ、韓国の緩め具合に応じ、中国も経済制裁を緩めるというところに中朝の合意がありますよ、という注釈を発信してきた。これは、当然のことである。というのは、アメリカの対中貿易への政策転換は、米中の体制間の離間を意味し、中国と朝鮮とが軍事同盟の復活という軍事緊張を生み出したからである。そこへ、アメリカは対日の貿易でも中国と同様に身構えた。こうした米中の隙間の拡大から、中国は北朝鮮へも、韓国への特殊な影響力を行使し、基本、反米の流れを北東アジアから作り出そうというリスク・ヘッジの外交行動に出てきたと理解してもよい。しかも、中国は内需の拡大により、世界経済にマイナス要因とならないように工夫している。鉄鋼やアルミの対米輸出がゼロになっても、中国経済には影響はない。外交の主導権は、アメリカにはなく、実は中国にあり、アメリカの北東アジアでの影響力の低下を呼び込むには、南北対話の促進であると、巧みに外交を展開している。その場合、パラメーターはアメリカの一存であると、責任回避のリスク・ヘッジも忘れてはいない。本当に中国は国際外交が上手い。その分、日本の大企業は独自の外交努力にリスクと費用を投じざるをえない。企業が減税を求めるのは、国家外交に依存できないからだ。

 

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