富山マネジメント・アカデミー

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石井知事の英文メッセージの不具合【増補】

2020年07月07日 | Weblog

TMAのメンバーからの詳しい指摘を掲載します

1.富山県が提示したメッセージ

メッセージ内容: Make Toyama Style  Beyond Corona, with us

目的:「県民一丸となって新たな日常を創っていくステージにおける取組みのシンボル」

 

2.問題点:意図しているメッセージが伝わらない。加えて、Corona(宝冠、高い地位)の意味があることから大きな問題を引き起こす懸念がある。

英語の表現でメッセージ等を発信する場合には、NativeのProfessionalによるチェックが不可欠です。(Native、かつ、メッセージライターなど専門家である必要があります)

個人的には、富山県民の一人として、このような違和感・問題点のある標語を、英語によって国内外に発信することは恥ずかしく思います。

3.語義上の大きな誤りについて

(1) Beyond Corona

Coronaは「(太陽の)コロナ」です。OALD、Websterなど定評のあるネット上に辞書をチェックした結果です。最近の用例としてInformalな表現として「コロナウイルス」の意味が掲示されていましたが、単独ではなく、Corona infection、 Corona epidemicのように形容詞的に使用されています(調べた範囲では、単独で使用された例は記載されていませんでした)。さらに、Coronaの語源(当ウイルスの名称も同様)は、ラテン語の「(王位に係る)宝冠」を意味します。

したがって、上記の意味は、「太陽のコロナ」となり、さらに「王」「極めて高い位」を連想させます。県が意図しているように解釈されるにはほど遠いと懸念されます。【英語圏からみれば、日本の天皇をBeyond つまり、象徴天皇制を越えてと誤解される恐れがあるという意味です。】

念のため、CNN, BBCのHPを確認しましたのが、Corona virus、COVID-19のいずれかの表記のみで、略称を使用する際には、the virus(前段にCoronavirusが記されて、その後、略称として前を受けてthe が付いています。この場合でも、the Coronaは不可です。)

意図する意味にするためには、”Beyond COVID-19”  “Beyond Coronavirus”のいずれかにすべきと考えます。

(2) With us

突然 ”us”が示されており、大きな違和感があります。代名詞を使用する場合、読み手・聞き手が明確に同じ意味で把握できる必要がありますが、提示されたメッセージには、前にusを示す言葉が示されておらず、全くうかがうことができません。もし、「皆で力を合わせて」「ご一緒に」という意味であれば、代名詞を使用せず、”together”に代えることがよいと考えます。

(3) Make Toyama Style

現在、Makeを冒頭に持ってくるメッセージの中で、世界で想起されるのは、トランプ大統領の”Make America Great Again”です。まず、Makeを使用するか否かについて、「わかりやすいが安っぽい」という長短所を踏まえて判断されることが必要と考えます。加えて、トランプ大統領のメッセージの残像が強いので、提案されたメッセージでは、「ToyamaをStyleにする」と解釈されがちではと懸念されます。

他の動詞で、かつ、一般にも知られている動詞・イメージがよい動詞を使用してはどうでしょうか。例えば、Create、Launch などです。 e.g.  Create Toyama Style, Launch Toyama Style

余計なことかもしれませんが、かって巨人の長嶋監督が「メイク・ドラマ」と発言して流行語となりました。英語の構文・語義にこだわらず、同様に考えるのであれば、「メイク・富山スタイル」のように、英語を使用せずに、日本語で表記するべきでしょう。富山方言でも、構いません。

以上


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