私、中村哲夫、富山市長の森さんのコンパクト・シティ論に対する論敵である。その最大の理由は、彼のコンパクト・シティ論は、チューネンの孤立国のモデルの枠組みがら脱していないことにある。
中村の理論は、クリスタラー理論をベースに、サービス機能の位階構造を六角形で表現するものである。これを19世紀末の北中国で実証した。それは、農村が都市に依拠し、同時に都市が農村に依拠する「都会性」と「農村性」の機能の互恵関係を基にしたものである。
20世紀後半、IT革命により、製造業の生産拠点が郊外化し、都市の中心部の住民が郊外に流出する。真ん中に空洞化が生じる。富山市の現況は、その為に生じた。広貫堂さんが、郊外に生産拠点を拡張されているが、その現象が典型である。
森市長の場合、この空洞化した中心市街地に住む人口や、昼間の流動人口を増やし、町中に賑わいを取り戻そうというわけである。この考えは、一つの都市コアーを取り囲んで農村が存在するとするチューネンの「孤立国」の枠組みでの再生計画である。
しかし、富山県は富山大学の遠藤学長が推進された地域連携の医療サービスにより、クリスタラー理論をベースに、サービス機能の位階構造を六角形で表現する南ドイツ平野のモデルが確立し、富山―高岡ー砺波という位階構造が全体としての医療サービスを構成するという最先端のモデル地域化に成功した。その象徴が、中央病院のドクターヘリの運用である。
さらに、3つ目の課題がある。それは、道路網と港、空港を結ぶ物流の整合性、合理的な再配置である。TMAは、この第3の課題にアイデアを提供しようと考えている。それは、富山県の全体を「郷都」と考える新しいシステムである。道州制では失うものが大きすぎる。