東方不敗の幻想

インターネットのジャーナリズムについての覚書

touhou_huhai@gemini.livedoor.com

ネット教育より犯罪者の学習速度の方が早い

2008-05-08 18:17:50 | Weblog
ネット検閲をするにせよ、しないにせよ、公的な情報リタラシー教育は不可避だ。それがどんな内容になるのか、「思想的有害サイトを見つけたら、すぐに警察に通報しましょう」なんてことにならないといいが。「実名で政治や宗教について語ると、問題の火種になります。できるだけ沈黙していましょう」とかも、やめて欲しいね。

でもどうせ「何が有害サイトか」の定義にまで踏み込んでくるだろうけれど。教育ってそういうものだ。これに合わせて、ブロッキングすべきサイトか否かの判断を閲覧者の意見を反映して決めるカンガルーコートを導入するとなると、もう悪夢だ。

それはともかく、ネチケット(っていったんだよ一時はね)というか、自衛の手段はあっという間に陳腐化するだろう。たとえばフィッシングは、普及しはじめた当初お話にならないほど稚拙で、ある程度情報リタラシがある人なら簡単に見破れたが…今や、情報セキュリティの専門家でも引っかかりそうになるほど巧妙化している。
教育の数倍の早さで、犯罪者たちは学習している。天才や有能な人間は、法の中にだけでなく外にもいるし、そこでは個人の能力が大きな価値を持つから…それはいかん!と良き市民はすぐ怒るだろうが…

さてフィッシングはもはや、企業や政府の取り組み(政府はノロマだが)なくして、預金者への教育だけでどうにかなるレベルではない。そうした企業や政府の対策だって、犯罪者たちの手口に2歩も3歩も遅れているんだ。
もっとも銀行にペナルティを負わせることで、フィッシング対策が加速するかどうかは、分からない…。

もちろんこれは「体感治安」というやつで、データはない。だが、掘り下げていけば、私の意見に都合のいい証拠はたくさん見つかるだろう。

私のような役立たずも含め、規制反対派がよりどころとして持ち出した「教育」も限界はあるし、それ自体、政府を利する恐ろしい危険をはらんでいる。検閲に対抗する手段として教育(ともすれば洗脳になる)を選んだのは正しかっただろうか。

私と違って本当に行動する規制反対派は、いつも自分の手でやっていることを、1つ1つ疑いながら、それでもリスクにある程度見切りをつけて、制度作りを進めていくしかない。

理想のために手段を顧みないのであれば、それは狂信者と同じになってしまう。
そうして「自己批判」しながら進むのは、しんどい。そういう役目を他人に負わせて、ここで匿名のままぐちぐちと駄文を書き連ねるだけの私は、ひどいね。


【追記】2008/05/08

もちろん、検閲システムだって構築に時間はかかるので、即効性はない。
小倉先生は特効薬として、年齢確認可能な会員制度への移行や、フィルタリング、ブロッキング、命令違反の事業者へのペナルティを期待しているだろうが、全部をしゃかりきになって導入しても、いきなり韓国のような水準に達する訳ではない。

そのあいだに、犯罪者たちは手段を巧妙化させるし、未成年たちだって知恵をしぼって抜け穴を見つける。(もちろん未成年の犯罪者もいる。分かってる)

「今そこにある被害」をすべて止めたいといっても、それは無理だ。
残酷なようだが、無理だ。どの方法を選んでもかなりの時間がかかり、こうしてごたくを述べてるあいだにも現在進行形の犯罪被害は見殺しにするしかない、という事実を踏まえたうえで考えねばならない。