goo

リップヴァンウィンクルの花嫁


監督 岩井俊二
出演 黒木華、綾野剛、CoCoo、原日出子、地曳豪、りりぃ

 不思議な映画である。3時間になんなんとする長尺の映画ではあるが、3時間はアッというまである。時間を感じさせない。タイトルの「リップヴァンウィンクル」ま、いわばアメリカ版浦島太郎といっていいかな。どっかで夢中になって過ごすうちに外界ではとんでもない時間が過ぎていた。この映画の「リップヴァンウィンクル」は主人公の友だちマシロのハンドルネームだが、主人公ナナミ自身が不可思議な遍歴ののち、とんでもない時間が過ぎていたからだろう。映画の中での現実の時間の経過は1年も過ぎていないだろう。しかし、ナナミにとっては恒星間旅行をしたほどの時間が経っている。そのナナミの不可思議ワールドを案内するメフィストフェレスが何でも屋の安室行舛(アムロユキマス。=セイラさんブライトさん、アムロ行きます!)
 ナナミは教師。といっても正式の教師ではなく非常勤の派遣教師。気弱で声も小さく教師をクビになり、コンビニのバイトで糊口をしのぐ。ただ一人だけネットで教えている女の子だけがゆいいつの教え子。そんなナナミ、SNSで知り合った男と結婚する。友人も親戚もないナナミは、結婚式の体裁を考えて何でも屋の安室にニセ者の代理親戚の派遣を頼む。ナナミも安室に頼まれてニセ家族のバイトをする。そして本業は「女優」だというマシロと知り合う。
 ナナミはマザコンのダンナとも離婚。メイドのバイト。バイト先にはマシロがいた。
 ナナミの両親も離婚している。家族も友人もいないナナミにとってバイトのニセ家族が、家族同様に仲良くしてくれる。ナナミにとってこの世界には、ニセモノの家族、「幸せの限度が低い」マシロ。メフィスト安室、そしてネットでつながったただ一人の教え子だけ。
 この世界が滅んでも3人だけ生きている。なにもない虚空にナナミ一人。前にパソコン。ネットでつながった根暗な教え子。そして「また困ったことがあればいってください」という安室。この3人おれば世界は動くのだ。
 なんといってもナナミの黒木華がいい。可憐でかわいいが、群衆に溶け込むと目立たない。黒木のメイド姿かわいい。弱そうだがほんとは強いのではないか。それに安室の綾野。うさん臭そう。なんぞこんたんがあるに違いない。こいつのほんとの目的はなんだと思わせて映画を最後まで見せる駆動力となる。マシロの母親役はシンガーソングライターのりりぃなんだな。強烈な存在感であったが彼女は昨年の11月に亡くなっている。この映画が遺作ではないか。
 ともかく、不思議な映画であった。
コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )
« 厚い豚肉のお... 零戦がB29の... »
 
コメント
 
 
 
確かに不思議なんでしょうね? (アブダビ)
2017-02-21 00:46:46
どもアブダビです。インフルエンザで死んでます。
数日、スマホを開く気持ちにもならず。
で、不思議ですね。記事が。
管理人さんの紹介記事は、コヒーライターの下経験か、言いたい筋をバン!と訴え、そのあとに詳細を書いて講評するので、核心部が解りやすいのだすが……
この記事は三人の面白い関係やキャラが浮かぶのに、全体としてヌエみたいな印象。
筆力でなく、素材がそもそも不思議な映画なのでしょうか。困惑して書いている感じがする。
体温38.2度の頭で読むと、さっぱり解らない。
不思議は嫌いでないので、回復したら観てみたい気持ちですが、今は無理!
熱が下がってから48時間は外出するなとの医師の命令ですので。
あー頭痛い、節々が痛い、気持ち悪い。
 
 
 
タミフルちっとも効かねーぞ! (アブダビ)
2017-02-21 00:51:20
去年は効いたのに…科学もウイルスも日進月歩します。管理人さんもインフルエンザに気をつけてね。
 
 
 
岩井俊二の映画は (さすらい日乗)
2017-02-21 08:06:20
岩井俊二の映画は、なんとなく気持ちが悪くて好きになれませんでしたが、これは意外にも非常に面白かった。黒木華と「結婚」して死んでしてしまう女優の件は、実話を基にしているようです。
ただ、少しつじつまが合っていないところもあったように思えましたが。
 
 
 
アブダビさん (雫石鉄也)
2017-02-21 10:27:48
不思議な映画でした。この記事書くの苦労しました。
どう書いていいのかよく判りませんでした。
インフルエンザ、たいへんですね。
どうかご自愛ください。
 
 
 
さすらい日乗さん (雫石鉄也)
2017-02-21 10:33:48
わたしもこの映画面白かったです。岩井俊二の演出テクニックがずいしょで見られましたね。
それから、さすらい日乗さんとも思えぬコメントですね。本文の前にコメントを先に読む人がいるかも知れません。ネタばれとなるようなコメントは考えものですね。
 
 
 
見ました (りんさん)
2017-02-22 23:20:12
私もこの映画観ました。
主役の黒木華ちゃんが、本当によかったです。
マシロは歌が上手いなあと思っていたら、歌手のCoccoさんだったのですね。
すごく存在感があって、いいと思いました。
黒木華ちゃん、演技上手いですよね。
 
 
 
ネタばれって問題でしょうかね (さすらい日乗)
2017-02-23 08:32:03
私は常に作品そのものについて批評しており、好きな監督でもひどいときはひどいと書き、嫌いな監督でも良いときは良いと書いているつもりです。

ネタばれって問題でしょうかね。
優れた映画は、ラストが分かっていても何度も見るでしょう。私は鈴木清順の映画『殺しの烙印』は20回くらい見ています。
また、名人の落語は、オチが分かっていても、なんども聴くことがあると思うのですが、いかがでしょうか。
ネタばれで、詰まらないと感じられたら、それは大したものではないということだと思います。
 
 
 
りんさんさん (雫石鉄也)
2017-02-23 08:58:25
そうですね。黒木華かわいいですね。かわいいといっても有村架純のような、押しの強いかわいさではなく、自然なかわいさですね。
ですから自然な演技でひきつけられるのですね。
 
 
 
さすらい日乗さん (雫石鉄也)
2017-02-23 09:20:33
「作品そのものについての批評」この部分は賛成です。どんな名監督でも駄作はあります。どんな駄監督でも名作はあります。
ネタばれは問題です。たとえば「獄門島」横溝正史の原作と市川昆の映画では結末が違います。映画を観る前に結末が知れば面白くないですね。それに「シックス・センス」で結末を知ってしまったらブチ壊しです。
落語のオチと映画の結末では違います。桂米朝師匠。わたしの大好きな落語家です。「地獄八景亡者戯」「百年目」「はてなの茶碗」などは何度も聞いてます。なんど聞いても違います。おなじように見えても違います。たとえば「地獄八景亡者戯」師匠40代のころに生でききました。50代60代のころの高座もDVDで持っております。それぞれ違います。同じオチでも師匠の年齢、体調、その時の客、それらによって違います。
ネタばれで面白くないのならば、たいしたものではない。たいしたものではない映画でも、それを楽しみたい人もおります。そういう人の邪魔をしてはいけません。
みんながみんな、さすらい日乗さんのような、映画鑑賞の達人ばかりではありません。映画はいろんな人が見るのです。ネタばれしては困る人もおるのですよ。
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。