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とつぜん上方落語 第22回 貧乏花見

 まだ3月ですが、桜が満開でんな。いろんな人がお花見にくりだしております。落語でおなじみの裏長屋のみなさんは、お酒ならぬ「お茶け」かまぼこならぬ「カマゾコ」素麺やのうて「はそうめん」卵の巻き焼きの代わりに「こうこ」を持って桜ノ宮へんにやって来ました。「♪花見じゃ花見じゃ、ちょ
いとちょいと、こらこら……」あ、そのにぎやかなこと。
 この裏長屋のみなさんがお花見をしている桜ノ宮から環状線に乗って大阪まで。梅田で阪急電車に乗り換えて芦屋川。そこで降りてずずと山の方に向かうと、芦屋の六麓荘という街に着きます。大きなお屋敷が立ち並ぶお屋敷街です。
 その六麓荘の住人たちが話し合っております。
「良いお天気ざますね」
「そ、ざます」
「下々の者が行うお花見をわたくしたちもしませんこと」
「賛成ざます」
「では、今度の日曜ということで」
「どこでやるざます」
「手近なとこで芦屋川は」
「いっぱいじゃないですか庶民たちの花見で」
「あ、大臣につないでちょうだい」
「どこに電話してるんですか」
「国交省」
「あ、こんどの日曜、わたくしたち芦屋川でお花見ですのでよろしく」
「河川敷は国交省の管轄だから、大臣が忖度してくれますわ。これで場所取りはOKざます」
「芦屋川まで車で移動するのでしょう。道が混むんじゃないですか」
「あ、長官をお願い」
「警察庁に電話ね」
「あ、芦屋の六麓荘から芦屋川まで交通規制お願いね」
「これで道路は警察庁長官が忖度してくれますわ」
「イシグロ、イシグロ」
「はい奥様」
「こんどの日曜外出しますからロールスを用意しておいてね」
「わたくしは執事のイシグロにロールスを運転してもらいますが、あなたはどうされます」
「わたくしは運転が好きだからランボルギーニを運転していきますわ」
「おくさまは?」
「わたくしは久しぶりにデューセンバーグに乗ってみようかしら」
「こちらは」
「わたくし、ここは、ひとつ優雅に牛車で行くざますわ」

 さて、当日になりました。六麓荘の広場には、ロールスロイス、ランボルギーニ、デューセンバーグ、牛車といった車が並んでおります。ベンツ、BMWといった大衆車はみかけません。ここから芦屋川まで警察庁長官の忖度で交通規制がしかれております。これらの車しか通りません。
「さ、行くざます。ちょっと岩園町のひかりスーパーに寄ってちょっとお買物をしますざます」
「わたくし、スーパーなんかで買物したことないですわ」
「買物は執事のイシグロにやってもらいますわ」
 芦屋川に着きました。花見客でいっぱいですが、芦屋川の月若橋から大正橋の区画に赤い毛氈がひかれております。
「さ、座りましょ」
「まずはビールで乾杯」
「ん。このビールは?」
「ネイル・ブリューイングの『アンタークティック・ネイル・エール』」
「ふうん。ちょっとしたビールね」
「これ、イシグロ、どんなお酒を持ってきたの」
「はい。奥様、ウィスキーはダルモア・シリウスの58年もの。ワインはロマネコンティ1945。日本酒は十四代本丸秘伝玉返しなどを持ってきました」
「さ、乾杯もすんだし何か食べましょう」
「パンパン」
 イシグロが手をたたくと光頭の老人が来た。鮨職人のようだ。
「東京は数寄屋橋の『三郎」から小野三郎さんに来ていただきました。ネタは朝早く明石の漁師に漁に出てもらってとって来た魚です』
「ふうんお料理はお鮨だけ」
「いえ。日本料理の『はだ万』の花板さんを呼んでおります。ステーキは「はら皮のシェフに神戸牛を焼いてもらいます」
「ああ、もうお腹一杯。なにか余興が欲しいね」
「あ、あそこのルナホールで欅麦団治が独演会をやってますが」
「ふうん。たまには落語もいいわね」
「あ、欅麦朝事務所ですか。ちょっとお願いが」
「すぐ来るそうです」
 六甲山が夕陽に染まるころ、六麓荘の住人たちのお花見もめでたくおひらきになりました。みなさん、満足して帰っていったようです。


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