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とつぜんリストラ風雪記 31

とつぜんリストラ風雪記 30

 3月17日に購買課長が辞めて、購買課は課長不在だったが、4月に入って新任の課長が決まった。経理にいた若いのが購買課長となった。
 購買課で小生が一番の年長。この若いの、小生以外の課員どもとは和気あいあいと仲良くやっている。小生とは視線を合わさない。購買課に初めて来た時、席まで小生があいさつに行くと、コクリとうなずいただけ。無礼なやつ。生意気なやつだ。

2005年4月25日(月)
 午前中のことである。あたりが騒がしい。騒然とした雰囲気。数多くの救急車が走り回っている音が聞こえる。上空を何機ものヘリコプターが飛んでいる。阪神大震災の時のような感じだ。家から電話。「職場は尼崎でしょう。えらい事故が起きたそうよ。だいじょうぶ?事故に巻き込まれていないか心配で」事故現場はJR尼崎の北、NP社は南。
 無事と返事してすぐインターネットでニュースを見る。JR尼崎駅ちかくで電車脱線事故。107名の死者を出して大惨事となったJR福知山線脱線事故を、小生はこうして初めて知った。この時、小生がいたNP社と事故現場は1キロも離れていない。
 K電気での最後の職場は伊丹だった。駅は事故車がオーバーランした伊丹駅だった。事故現場は毎日通っていた。当時は毎週月曜日、伊丹から吹田工場での工程会議に出席していた。伊丹から尼崎で乗り換え、東淀川で降りて吹田工場まで徒歩。この時、伊丹から尼崎までは、事故車と同じ同志社前行き快速電車にも乗った。時間も事故発生時間と同じ時間帯の午前9時過ぎ。事故の時間軸が2年ずれていたら、小生もあの事故に遭遇していたかもしれない。大事故、大惨事、大災害の類いにあうのは阪神大震災だけで勘弁して欲しい。
 帰りの電車に乗るのが恐い。新聞、テレビのニュースで死亡者、けが人の名前をチェックする。知人友人の名前はない。とりあえずひと安心。

4月26日(火)
 今日も一日中、上空をヘリコプターが飛びまわっている。低空を飛行するため非常にうるさい。警察、消防のヘリなら致し方ない。がまんできる。ところが報道のヘリが多いようだ。
 阪神大震災の時もそうだった。救援物資のヘリなら大歓迎だが、報道のヘリはうるさいだけだ。無性にハラがたつ、あの時手元にスティンガーでもあれば撃ち落していただろう。
 帰宅後、テレビでニュースを観る。ヘリからの映像も映していた。各局、同じような映像を使っていた。あれじゃ、あんなに大量のヘリを飛ばさず、代表取材の1機を飛ばして、その映像を各局で使用すればいいだろう。ともかく、災害にあって苦しんでいる人の頭の上でパラパラとヘリコプターを飛ばすのは最低限にするべきだ。

4月28日(木)
 休みの前日なので定時に退社するつもりでいた。4時ごろ残業をいいつけられる。購買の仕事ではない。工作の仕事。配線を間違えたとか。ハンダ付けを外して、新たにハンダ付けし直す仕事。10時ごろまでかかる。NP社は時間外手当は出さない。サービス残業なり。
 4月に入ってから経理をやっていた若いのが購買課長として購買課を取り仕切っている。やつは購買の経験はない。もちろん電子部品に関しても素人。小生以外の購買課員に、取引先のことや電子部品の基礎知識を教えてもらっているようだ。その課長が購買のプロたる小生に、購買の心構えなどを説教する。どうも部長にいわれたらしい。ストレスがたまる。胃潰瘍を再発しそうだ。
 業者に納品方法に関する書類を作成して、発送しようとしたら課長が見せろという。いっぱい赤字で添削して返ってきた。赤字の部分を見直すと、まっとうな文章を、むりやりまっとうでない文章に改悪してある。購買業務のベテランで、元コピーライターで、この手の書類はゲップが出るほど書いてきた。
 せっかくNP社に採用されたのだ。がまんしなくてはいけない。例え犬が課長であっても、へいへいということを聞かなくてはいけない。やつは購買の素人だが、いちおう人間だ。

(追記)
 この時の小生は中高年の転職者が、絶対にしてはいけない心構えをしている。プライド。中高年の転職者にとって、これほど邪魔なものはない。
 長年、同じ仕事を続けて、その収入で家庭を持ち家族を養ってきた。当然、自信も自負もあるだろう。しかし、その呪縛から逃れられず、新しい職場で、それが出てくれば必ず失敗する。耐えがたいことだが、プライドは心の奥深くにしまい込んで、虚心坦懐に新たな環境になじまなくてはいけない。
 実はこの4月28日の記事は書かないつもりだった。今となっては、かようなことを考えていたことが恥ずかしい。こんなことは人に知られたくない。しかし、小生と同じような失敗をする人がいて欲しくないので、あえて書いた。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
郷に入れば (悠々遊)
2009-06-26 06:13:14
郷に従え…と言いますが、これが結構難しい。なまじ経験とプライドがあるだけに。
私も転職を繰り返してきただけに、似たような境遇・体験があります。
 
 
 
悠々遊さん (雫石鉄也)
2009-06-26 09:13:39
長い時間かけて得た経験によって、培われたプライドですから、簡単には消せないでしょう。また、それはその人にとっての宝物でもありますから、消してはだめだと思います。
ですから、このような場合、プライドはプライドとして心の奥に大切にしまって、表に出してはダメということですね。
 
 
 
Unknown (そのえだ園子)
2009-06-26 22:21:49
4月28日の日記、センセのお気持ち分かります。
ワタシも一度は転落してしまった身です。しかしセンセの場合は周りが理不尽すぎますね。体まで壊されて…。
追記の部分には大きく頷かされます。
過去の栄光にすがっている自分と決別するのは大変難しいコトです。プライドほど邪魔なモノはありませんよ。それが簡単に捨てられたら苦労しませんもの。
 
 
 
園子さん (雫石鉄也)
2009-06-26 22:59:12
「過去の栄光」というほど華やかなものでなくても、長年仕事をしてがんばってきた人は、そのことが生きるよるべとなっています。
それにすがって生きているわけですが、それが生きるのの邪魔をすることがあります。
人生はむつかしいですね。
 
 
 
Unknown (素浪人)
2009-08-09 17:04:05
コメントがずいぶんと遅れてしまいました。

プライドの話、考えさせられました。
実は7月から3カ月のバイトにありつきました。
この1ヶ月半、幸運にも、嫌な思いをせずに過ごせていますが、悪い意味でのプライドが前に出てこないか、冷や冷やです。
そう思いつつも、卑屈になりすぎてないだろうかと思ったり。

仕事の進め方でも、言いたいことはとりあえず胸にしまうこともあります。
「自分が正しいとは限らない」「その場所その場所の良さもある」それから「熱い栗をわざわざ拾う必要もない」「聞き入れてもらえなければ意味ない」と。
求められなければ、強いて指摘しないつもりです。ただ「求められない」期間が長く続くと、辛そうで、我慢がいつまで続くかなぁ…といったところです。
(勇気が足りないとも言えます)

追伸:
JRの事故のころの話なのですね。
私は、あの列車が入ってくるはずの尼崎駅にその時間いました。どうしようもなく記憶に残ってしまう事故です。


 
 
 
素浪人さん (雫石鉄也)
2009-08-10 09:32:39
人間ですから、プライドを持つことは必要ですね。しかし、それをむき出しにすると、あまりいいことはありません。
私は、何度かの転職を経験して、「自分を殺して、組織で働く」ということを学びました。
 
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