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ジェノサイド


高野和明         角川書店

 傑作だ。超弩級エンタティメントという言葉が、本や映画のコピーによく使われるが、ま、だいたいが話半分に思って読んだり観たりした方が、後のがっかりが少なくていいが、本作は正真正銘の超弩級エンタティメントだ。絶対にがっかりしない。小生が保証する。
 SF,冒険、スリル、サスペンス、アクションとエンタティメントの要素が全て入っている。しかも、かなり高いレベルで。
 物語の骨子は小松左京の代表作と同じ。最初は映画化もされた「○○○○」と思わせられる、ところが実際は「○○○○○○」と同じコンセプト持った物語として話は展開していく。
「人類絶滅の可能性、アフリカに新種の生物出現」という報告が、アメリカ合衆国大統領バーンズの下に届く。「何だ、これは?ハリウッド映画の要約か?」バーンズは重要には考えなかった。「こんな下らない話は、シュナイダー研究所に任せておけ」
 バーンズはこの問題を見誤っていた。本当は「人類=ホモ・サピエンス」の存在を根底から覆す大問題だった。それでも、とりあえず閣僚たちによって対策が取られた。対策責任者に任命されたのは、シュナイダー研究所からヘッドハンティングされた若き天才ルーベンス。
 肺胞上皮細胞硬化症という難病の息子を持つ傭兵イエーガーはコンゴに飛ぶミッションを引き受けた。息子の余命はあと1ヶ月足らず。ミッションの内容はコンゴの森の中のピグミー族の1集落を殲滅せよ。その集落の住民は致死性のウィルスに犯されている。彼らを全滅させなければウィルスは全世界に広まる。そしてもう1つ謎めいた指令がミッションに含まれていた。
 薬学の大学院生古賀研人は、急死したウィルス学者の父のメールを目にする。それは遺言ともいうべきモノだった。父は研人に伝言していた。難病の薬を作れ。父の残したパソコンには創薬用のソフト「GIFT」が入っていた。研人は韓国人留学生李正勳とたった二人で薬の開発に取りかかる。肺胞上皮細胞硬化症の特効薬を創ろうと不眠不休で研究する。研人はこの病気の患者を二人知っている。大学病院に入院している小林舞花とリスボンの病院のジャスティン・イエーガー。二人とも余命はあとわずか。この二人と世界のこの病気の子供の患者10万人を助けるため、研人と正勲は必死で動く。
 イエーガーたち4人の傭兵はコンゴのピグミーの集落に着いた。そこで人類学者ピアーズと奇妙なピグミーの子供アキリと出会う。イエーガーたちはアメリカの陰謀にはめられていたことに気づく。傭兵二人は死に。イエーガー、傭兵マイヤーズ、ピアーズはアキリを連れてアフリカ脱出を決意する。アメリカに動かされた数万の武装勢力の包囲網をかいくぐってアフリカを脱出しなければならない。最終目的地は日本。
 研人と正勲の研究もスムーズに行かない。謎の女が現れ父のパソコンをよこせという。警察が研人逮捕に動く。警察はどうやらアメリカCIAに動かされているらしい。
 読んでいて緊張が持続する小説だ。イエーガーたちは数万の敵を突破して無事アフリカを脱出できるのか。アフリカから日本までどうして行くつもりか。
 研人は警察の逮捕を逃れ、薬を作れるか。ジャスティンと舞花の余命はあとわずか。薬は間に合うか。薬ができても、そんな薬を患者に服用させることができるのか。
 ルーベンスは事の真相をつかんだ。分からず屋のアホ大統領バーンズを説得して、人類を絶滅から救えるのか。ハラハラドキドキがずっと続く。
 物語を動かしているのは、イエーガー、研人、ルーベンスの3人だが、この3人は釈迦の手の上で踊る孫悟空。すべてを見通し、すべてを計画した真の主人公がもう一人いる。その名はエマ。エマは最後に登場する。果してエマの正体やいかに。
 読んで絶対に損はない。強くお勧めする。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
SF大好きです (減二)
2011-08-27 14:34:26
私には文学的素養がなくて、文章がちょっと難しいと
投げ出してしまいます。最初は筒井氏を喜んで読んでいましたが、氏がだんだん難しくなって、私には遠い世界の人のように思えます。早川文庫の外国の本も特にアーサークラークは難しく感じます。「ジェノサイト」は私にも読めるでしょうか。もし、難しくなければ、読んでみたいと思います。
 
 
 
減二さん (雫石鉄也)
2011-08-27 20:37:39
途中、薬学の専門用語が出て難しいところがありますが、その部分は飛ばして読んでも意味は通じます。
少なくとも私に読めて、私は面白いとおもいました。
 
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