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お茶漬けの味


監督 小津安二郎
出演 佐分利信、小暮実千代、鶴田浩二、淡島千景、津島恵子、笠智衆

 価値観の違う夫婦のお話。信州は長野出身のダンナと、東京は山の手上流のお嬢様育ちの妻。上品とはいえない(と妻は思っている)ダンナと上品(と自分では思っている)妻のギクシャクした関係の夫婦が登場する。長野と東京。これ、ちょっと一元的な見方ではないか。小生の父も信州は長野県飯田市出身。父はガサツで鈍な人間ではあったがゆうほど無教養ではなかった。母は西宮出身。典型的な阪神間都会人である。でも小生の両親はこの映画の夫婦のようではなかった。
 それはそれとして、この夫婦金持ちである。ダンナは会社のエライさん。部長と呼ばれていたから取締役のついた部長か。家には女中がいて家事は全部やってくれる。
 小人閑居して不善をなす。この家の奥さん、働いてないし家事もしない。ヒマをもてあましてると見えて、お友達と遊びほうけている。ダンナに知人が病気だとウソついて、友だちと温泉旅行。
 この夫婦に大磯の姪がからんでくる。この姪、家が嫌なのかしょっちゅう、東京は目白のここに遊びに来る。妻のうそつき温泉旅行にまで同行する。この姪、見合い話があるが、嫌で逃げ回っている。ダンナは妻にうそついて見合い逃亡姪をかくまう。
 夫婦でウソをつきあっていたのである。そしてとうとう妻は家出。神戸の須磨に行ってしまった。この間、ダンナは急な出張。妻の見送りもなく出発。ところが飛行機のエンジントラブルで引き換えし。夜中、自宅に帰ると、妻も神戸から帰っていた。
 いろいろあったが妻反省。汁かけ飯、下品、大嫌いといっていたが、夫婦でお茶漬けを食べて仲直り。めでたしめでたし。
 さすがに今では当たり前のことだが、ダンナのいうことを聞かない妻、親の意向に逆らって見合いしない娘。こんなんが目新しかったのだろう。それに、東京山の手上品=ダメ、信州長野下品=よし。こういうこととしているが、少々画一的な見方ではないのか。東京山の手でも下品なのもいるだろう、信州の山猿でも上品なのもいるのだ。
「続・男はつらいよ」の寅の師、坪内散歩先生の言葉。「お前なんかよりずっと頭いいのに、お前よりずっと悪いことをするヤツがおる」小津は上記のような解釈と見えるが、山田洋次は東京山の手下品=ダメということだろうか。  
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コメント
 
 
 
勘違い✖2 (アブダビ)
2016-08-22 23:13:10
まず恒例の「男の料理」かと思うた。鰻茶漬け入りでもない茶漬け…管理人さんも「わびさび」入ってきたなぁ…
したら映画の記事でした。
次いで、中央の男性、私は雷龍太かと思いましたが、あっちゃーモノクロでもせいぜい高校3年生だものなぁ…太陽に吠えろ!ではカラーだったし…年代的に合わないだろうと。
先入観で物事を決めてはいけませんねぇ。
 
 
 
アブダビさん (雫石鉄也)
2016-08-23 09:33:38
これは小津安二郎の映画です。中央のおっさんは竜雷太ではなく佐分利信です。
ブローバック・マウンテンのコメント読んで削除しておきました。
正直、わたしはそういうことは身近にもいないし、よく判りません。
 
 
 
今見ると非常に理解しにくいですね (さすらい日乗)
2016-08-23 10:34:40
これは、戦時中の1939年に『彼氏南京に行く』として書かれたもののリメイクです。ただ、そこでは軍に召集された主人公が静かにお茶漬けを食べて行くという小津的でやや皮肉な「覚悟」を示すものでした。だが、検閲で「軍人がお茶漬けで出征するなど怪しからん」とのことで製作されなかった作品です。トンカツで行くべきだったのでしょうかは知りませんが。

戦後、書き換えたのですが、戦争に行くのと外国に赴任するのではまるで意味が違い、主人公の行為の重さが理解できません。この映画は、米国の占領が終わった直後という時代状況の面白さ、見合い結婚を否定して恋愛結婚を肯定しているなどの風俗的な面白さもあるのですが。

この映画で唯一意味があるとすれば、鶴田浩二が言う、「あんたは複雑がっていますが、大きな神様から見れば、同じようなものですよ」という台詞だけだと私は思います。これが元の脚本にあったかどうかは知りません。
 
 
 
さすらい日乗さん (雫石鉄也)
2016-08-23 11:14:36
わたしは、この映画、おもしろかったです。
わたしは、映画を観る時、その作品の背景、来歴にはさして興味はありません。
だから、この映画の当初の企画意図は知りませんし、興味もありません。
ですから、この映画を家族と夫婦の映画として観ました。
 
 
 
重箱の隅をつつく! (アブダビ)
2016-09-06 04:39:06
流石は管理人さん!
面白いかどうかで作品を評価する!
企画意図がどうの、製作時の時代背景がどうの、しゃらくさい事を言わない!
俺はマッサージと鍼灸で飯を食う医療屋ですので、治療院の仕事なら「良くなるか、楽になるか」であり、リラクゼーションの仕事なら、
「気持ち良かったか、楽になったか?」が全てであります。
この治療にはこんな風な理論があってよ、そいで貴兄の症状はこれだから…
んな理屈は、施術を終えた後の客や患者の表情で勝ったか負けたか解る!
潔いでしょ?
管理人さんの態度には、俺達に似た潔い判定基準が感じられます。
世間の評論家とか自称評論家とかは、てめえでは何も作れないくせに、グヂャグチャ言うだけです。管理人さんは実作者でもあるからね!
その基本的な事がお分かりなんだと感じました。面白いかつまらんかだけですね、金を払う客にとっては!
現場の外からガタガタ言う「評論家」は世間に無数に存在します。
だから溜飲が下がりましたよ!
 
 
 
下手な奴ほど理屈が多い (アブダビ)
2016-09-06 04:54:55
まー医療者なんで、患者や客を安心させる為に、ある程度のカンファレンスは必要です。
出切ることと出切ない事を明らかにして、時には医者を紹介もしますから。
明かに悪性腫瘍と思われる反応に、直ぐ様に精密検査を受けるように進言した事もあります。
俺は現場の人間ですから!
解剖学、生理学、疾病学、リハビリ理論や法律の知識も必要です。
でも「頭」で治療してる訳ではありません!
まぁ世間には色んな人は必要です。
でも現場の人である私には「評論家」や「自称評論家」は必要がない存在です。
それは本や映画を選ぶ時にも同じです。
金と手間に見会うか?
その点で管理人さんはプロの評論家ではないが、プロもしくはプロを自称する奴より、遥かに金と手間に見合う推薦してくれてます。感謝致します。
 
 
 
結果が全て! (アブダビ)
2016-09-06 05:41:06
俺達の世界は時に生命に関わり、判断が遅れて医者に進めなかっただけで訴訟にもなる!
だから小理屈並べて知識人ぶる無能な人間にはヘドが出ますね!
今の時代、東販は出版社の「融資」「銀行」の役割をしていまして、出版社は、本を発行することで次の事業資金を借り出して、自転車操業をしています!
版元はとにかく本を出し続けないと会社が潰れる。出版洪水の原因ですね。
つまり無能な奴でも、業界に長く生存して、コネがあれば本なんか出せるの!
本を何冊か出したからと言って偉くはない!
それで管理人さんみたいな個人のブログに、
「アドレスを教えろ!」とかバカでないの?
今の時代、本物か、金出すだけの作品か、はたまた自由に本音を語る書評しか意味はないの!
そこんとこ1948年生まれは解ってねーな!
 
 
 
指田文夫さんへ (アブダビ)
2016-09-06 05:48:12
とりあえず、この名前でWikipediaに1発で出てくる位に有名になってから御高説をたれて下さいね。恥ずかしいですから。
 
 
 
よっぽど仕事ないんですね。 (アブダビ)
2016-09-06 06:00:06
管理人さんや隆さんやクレーム言ってる昔の映画さんや、誇りを以てアマ活動してる方にしか
発信してない?
よほど仕事ないんですね(笑)
ゴーストライターしていた時の俺より、原稿料が少ないのかと同情に耐えません。
ま、頑張って下さいね(笑)
 
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