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ウィスキーグラス

 そろそろ閉店時間だ。きょうも一日が過ぎた。表の「海神」のランタンの灯を消す。あと何日ぐらいだろう、こんな日を過ごすのは。
 マスターの鏑木がこの店を閉めようと思って、数年がたった。キープしてあるボトルが全て無くなったら店じまいだと計画しているのだが、なかなか減らない。
 カラン。入り口のカウベルが鳴った。女性が一人入ってきた。年輩の、60近い女性。白髪で上品な老婦人だ。このような時間に、年輩の女性が一人で入って来ることはめったにない
「まだいいかしら」
 閉店ですと、いおうと思ったが、鏑木はその老婦人に、何か感じるところがあった。
「いいですよ」。
「水割りを一杯だけいただけないかしら」
「スコッチでいいですか」
「ジョニ黒をお願い」
 婦人はハンドバックから、ウィスキーグラスを取り出した。小さなもので布巾で包んである。
「珍しい形のグラスですね」
「昔、主人とヨーロッパへ旅行した時に買って来たものです」
 鏑木はそのグラスにジョニ黒を入れて出した。婦人はグラスに口をつけた。ひと口飲んだだけ。
「すみません。私、お酒だめなの」
「お下げしましょうか」
「いいの。すみませんが、しばらくここにいさせてね」
「どうぞ。ごゆっくり」
 婦人は伏目がちになってカウンターに座っている。だれかを待っているようだ。鏑木は黙ってグラスを磨いている。
30分ほど経った。
「そのジョニ黒キープお願いします」
「ボトルキープはお断りしているのですが」
「お願いします」
 鏑木はOKした。
「ありがとう。このロケットをそのボトルの首にかけておいてください。それから、そのボトルのウィスキーを飲む人が来たら、このグラスを使ってくださらない」

 その客は数ヶ月前からときどき海神に来る。70近い老人で、おとなしくジョニ黒を水割りで3杯ほど飲んで引き上げる。
 カウンターに座る。鏑木が老人のボトルを出そうとした。
「ちょっと待ってマスター。そのジョニ黒を見せて」
 ロケットのかかったジョニ黒のボトルを老人に渡した。ロケットを開けて中の写真を見た。
 老人の表情を見た鏑木は、婦人が置いていったグラスに、そのボトルのジョニ黒を入れた。そしてメモを手渡した。
 老人は携帯電話をとり出した。
  
 
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金本アニキ逆転満塁ホームラン

 きょうはアニキに脱帽。なんやかんやいわれてきたけど、やっぱり頼りになるな金本アニキは。5連敗を阻止した逆転満塁ホームラン。さすがやな。チームを救う一発やった。この時期の5連敗はやっぱ。ヤバイからな。
 で、金本アニキを称賛して、あとは小言。先発安藤にはでっかい喝。で、打撃陣。なんちゅう打ち方するんや。アニキのホームランだけで止めとけよ。10対8で勝つのも、22対8で勝つのも1勝は1勝や。こんな勝ち方するさけえ藤川の登板機会をうばうやないの。22点も取りすぎや。こんなんの翌日は概して貧打になるもんや。みんな明日はこのバカ得点の責任とって、絶対打てよ。
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