トシの旅

小さな旅で学んだことや感じたことを、
まとめるつもりで綴っています。

JR四国、もう一つの臨時駅、田井ノ浜駅

2016年08月13日 | 日記
先日、JR予讃線の「津島ノ宮駅」を訪ねてきました。8月4日、5日に行われる津嶋神社の夏季大祭の日にだけ営業する駅でした。めずらしい臨時駅ですが、JR四国には、もう一つ「臨時駅」があります。JR津島ノ宮駅を訪ねた日(「1年に2日間だけ営業するJR津島ノ宮駅」2016年8月6日の日記)、この「もう一つの臨時駅」を訪ねようと決めました。

その駅は、JR田井ノ浜駅。JR徳島駅から南に向かうJR牟岐(むぎ)線にある駅で、徳島県海部郡美波町田井にありました。牛山隆信氏が主宰されている「秘境駅ランキング」の122位(2016年度)にランクインしている「秘境駅」でもあります。

JR牟岐線の普通列車はJR徳島駅の3番ホームから出発します。ホームの案内には「田井ノ浜停車」と書かれていました。

10時前に2両編成のディーゼルカー(DC)が、3番ホームに到着しました。JR阿南駅からやってきた徳島駅行きの列車のようでした。ここで1両が切り離され、ワンマン運転の単行列車として、牟岐駅に向かうようです。1500形の1569号車。1500形DCは、排ガス中のチッ素化合物の割合を従来より60%削減した、JR四国が誇る「エコ車両」として知られています。平成18(2006)年から徳島県のJR(高徳線、徳島線、牟岐線)の路線で運用されています。

10時09分、立客が出るほどの乗客を乗せて出発しました。その後、降車される方もおられましたが、乗車される方も多く、多くの乗客を乗せて、田井ノ浜駅の一つ前の由岐(ゆき)駅に着きました。ここまで来ましたが、まだ立客もおられるような状況でした。以前「牟岐線の秘境駅 辺川(へがわ)駅」を訪ねた(「バリアフリーの秘境駅、JR牟岐線の辺川駅」2015年9月21日の日記)時と比べたら、尋常でないほどの人が乗っておられました。ちなみに、辺川駅は秘境駅ランキングの183位(2016年度)にランクインしています。

由岐駅のすぐ先にあったトンネルを抜けると、左(南)側に海水浴場が見えてきました。この辺りでは、JR牟岐線は東から西に向かって走っています。徳島駅から1時間07分ぐらい、JR田井ノ浜駅に着きました。たくさんの乗客のほとんどが、ここで降車されました。徳島市や沿線の小松島市、阿南市などから田井ノ浜海水浴場に来るために、JR牟岐線を利用される方がたくさんおられることに驚きました。

降車された乗客は次々にホームから海水浴場に降りて行かれました。やがて、DCの1569号車は、次の木岐(きき)駅に向かって出発していきました。さて、田井ノ浜駅は、昭和39(1964)年の7月11日、臨時駅として開業しました。開業当初から海水浴客の乗降のためだけに開設された駅だったようです。

1569号車が出発し、降車された方が海水浴場に降りて行かれた後のホームです。1面1線のホームには、屋根だけの待合スペースがあるだけです。田井ノ浜駅は海水浴場の開かれている期間だけ営業している臨時駅です。それでも、1年に2日だけ営業する津島ノ宮駅よりは営業日数ははるかに長く、「田井ノ浜海水浴場」と書かれた布製の幕が、とても誇らしげでした。

こちらは、木岐駅方面(西)側の海岸のようすです。海水浴場には、ホームから直接降りて行くことができるので、ホームも海水浴場の一部と言っていいのかも知れません。

こちらは、由岐駅方面(東)側の海岸です。空と海の青が目に染み込むような美しい海水浴場でした。でも、海水浴客は海水浴場の広さの割には、多くはなく、のんびり水遊びが楽しめるような、そんな雰囲気を醸し出していました。

ホームから見た牟岐駅(東)側方面です。正面の山にくぐって来たトンネルがあります。そして、駅の山(北)側には道路が見えました。徳島県道25号日和佐・小野線だそうです。

ホームから海水浴場へ降りることにしました。ホームに隣接している2階建ての建物は海水浴場の監視台になっています。1階部分に掲示物がありました。

これは、海水浴場の側から見た監視台です。この日は「台風5号の影響で波が高いので、注意して行動するように」という放送がなされていました。こちら側には「JR田井ノ浜臨時駅」と布製の幕には書かれていました。

掲示物を見てびっくりしました。すべての普通列車が停車するものと思い込んでいて、最近の時刻表でチェックしていなかったからです。次に田井ノ浜駅を出発する普通列車は、14時32分までありません。暑い砂浜で3時間も待つことは不可能です。掲示によると、田井ノ浜駅は、7月16日から8月7日までの23日間営業するようなっていました。

残念ながら、帰りに乗車しようと思っていた12時18分初の列車は通過列車になっていました。

とりあえず、海水浴場から駅周辺を歩いてみようと思いました。多くの乗客が入っていかれた「海の家」です。涼しげでした。

カラフルなテントが点在しています。こちらも景色に彩りを添えています。昼食をとっている家族連れもおられました。

靴が埋もれるような砂浜を歩いて、東側の田井川までやってきました。海への出口です。素晴らしい景色です。絵になりますね。

こちらは、上流側です。右側にある白い建物は民宿。正面のグレーの構造物は田井川水門です。

田井川を渡って駐車場を抜けて、東側の道路に出ました。駅の裏(北)側をめざして歩きます。カラフルな民宿「明山荘」の前を通って牟岐線の線路に向かいます。

これが、牟岐線の線路です。線路の左がJR田井ノ浜駅方面。正面が先ほど、田井川河口から見えた白い色の民宿です。

田井ノ浜第一踏切です。「45k519m」と書かれています。徳島駅からの距離を表しています。踏切から見た由岐駅方面です。カーブの先にトンネルがあるはずです。

こちらが踏切から見えた南(田井ノ浜駅)側。手前の田井川に架かる鉄橋の先に、かすかに田井ノ浜駅のホームが見えます。

踏切から民宿の裏に向かいます。田井川河口から見えた田井川水門。昭和57年5月、「紀伊水道高潮対策」としてつくられたものだそうです。右側に道標が見えました。

この道は四国八十八か所を巡る「遍路道」になっているようです。道標には「二二番 平等寺 三九.八km 二三番薬王寺 一五.三km」と書かれていました。

ホームの北側の道路から見た、田井ノ浜海水浴場。砂浜の先に紀伊水道の広々とした海が見えました。

田井ノ浜駅の西側から見たホームです。田井ノ浜海水浴場の手作りの案内標です。

道路を引き返して、先ほど通った民宿「明山荘」まで帰って来ました。カラフルな民宿です。自動販売機で飲物の補充をしていると、民宿の方が出て来られましたので、由岐駅への道を教えていただきました。

「民宿から、この先を左に向かい大きな峠を一つ越えて下ったら右へ行きなさい」とお聞きしたとおり、15分ぐらい歩いて、由岐駅に着きました。13時14分発の特急むろと4号で、阿南駅に向かうことにしました。

JR牟岐線の臨時駅、田井ノ浜駅に行ってきました。これまで何回か通過はしていたのですが、下車するのは初めてでした。空の青と海の青が美しい素晴らしい海水浴場でした。田井ノ浜駅は海水浴場の一部を構成している生まれついての臨時駅でした。

また、田井ノ浜駅は「秘境駅」でもありました。牛山氏の評価では、秘境度1ポイント(以下「P」で表示)、雰囲気2P、列車到達難易度(15P)、外部到達難易度1P、鉄道遺産指数1Pでトータル20Pで125位になっています。臨時駅ですから秘境駅に認定されるのは当然かも知れません。確かに、海水浴場が開かれていない時期は秘境駅の雰囲気を強く感じましたが、この日は、とても秘境駅とは思えませんでした。たくさんの海水浴客が訪れて海と戯れている明るい駅だったからです。こういう二つの面があることも含めて、JR田井ノ浜駅は、とても魅力的な美しい駅でした。