花のために(鳥のために)

季節ごとの花や鳥の記録など by つな

スカイツリーを毎日2階の窓から見ています。なぜか時々いまいましい気分になります。 

2012年06月05日 12時17分17秒 | ポエム

いちばん高い塔の歌    アルチュール・ランボー/金子光晴 

 

 束縛されて手も足も出ない
 うつろな青春。
 こまかい気づかいゆえに、僕は
 自分の生涯をふいにした。

  ああ、心がただ一すじに打ち込める
 そんな時代は、ふたたび来ないものか?

  僕は、ひとりでつぶやいた。「いいよ。
 あわなくたって。
 君と語る無上のよろこびの
 約束なんかもうどうでもいい。

  このおもいつめた隠退の決意を
 にぶらせてほしくないものだ」

  かくばかりあわれな心根の
 いいようもないやもめぐらし。
 聖母マリヤさまのこと以外、
 当分、僕はなにも考えまい。

  では一つ、マリヤさまに
 お祈りをあげることにしようか。

  金輪際おもい出すまいと
 僕はどれほど、つとめたことか。
 お蔭で、恐怖も、苦しみも、
 空高く、飛んでいってしまった。

  それだのになぜか,不快な渇きが
 僕の血管の血をにごらせている。

  荒れるがままの
 牧場のように、
 どくむぎと芳香とがいりまじり、
 花咲き、はびこる牧場のように、

  不潔な蝿が、僕の心に群がって、
 わんわんと唸りたてている。

  束縛されて手も足も出ない
 うつろな青春。
 こまかい気づかいゆえに僕は、
 自分の生涯をふいにした。

  ああ、心がただ一すじに打ち込める
 そんな時代は、ふたたび来ないものか?


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