トシの読書日記

読書備忘録

はなしを騙る

2009-06-08 13:42:32 | か行の作家
車谷長吉「業柱抱き」読了


西村賢太を読むのなら、その師匠格である(?)この人もということで読んでみました。この作家は、僕が西村賢太を知る以前から気になっていた人で、「忌中」、「赤目四十八滝心中未遂」等を今までに読んでいます。


本作品は、これまでに新聞、雑誌等に書いたエッセイ、評論、詩、短歌をまとめたものです。小説だと思い込んで読み始めたんですが、当てが外れました(笑)

いろんなところに書いたものを集めたので、重複するものも多かったんですが、車谷長吉の小説に懸ける思い、生きることに対する考え方、まぁ人生観ですね。それが、読む者をしてぐいぐいと鼻ずらを引き回される感じで、読了後、茫然とすることしばしでした。


「私小説は自己の存在の根源を問うものである。己の心に立ち迷う生への恐れを問うものである。(中略)併しそのように私小説はある畏敬の念によって書かれるものであるにしても、私小説を書くことは悪であり、書くことは己を崖から突き落とすことであった。」


そうであっても私小説を書かざるを得ないこの作家の「哀しみ」を思わずにはいられません。

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