敏翁のシルバー談義

敏翁の興味のスパンは広いのですが、最近は健康談義から大型TVを含むITと「カラオケ」「珈琲」にシフトしています。

ガスバリア袋

2011-07-03 21:25:06 | お酒とコーヒー
 前回、ポリエチレンとポリプロピレン・フィルムの酸素透過性の測定
 (独自に開発した測定法による)の結果、これらのフィルムで作られた
 袋では、脱酸素剤と組み合わせても長期(一ヶ月以上)の脱酸素状態を保つのは
 困難な事をお話しました。
 
 その後の調査で、
 酸素などのガスの透過を抑制・防止する袋を「ガスバリア袋」と称し、
 いろいろな構造が開発されている事が分かりましたが、販売されているのは
 大口(例えば千枚単位)のものが殆どでした。
 しかし小口販売している店をやっと一つ見つけたので、そこで入手した
 製品についてその評価結果についてお話します。
 
 http://item.rakuten.co.jp/mamapan/508277
 楽天に出店している「ママの手作りパン屋さん」と言う店で販売している
KOPガス用袋<92 x 63 x 400mm> 20枚、価格 546円 (税込) 送料別 と言うものです。
 本来の目的は、パウンドケーキを脱酸素剤と共に包装するためのもののようです。
 袋の材質は KOP20/PE15/LLDF35 と表記されていますが、a)調査結果を踏まえて若干補足説明
 いたします。
 これは、KOP 20μ / ポリエチ 15μ / LLDF 35μ のラミネートフィルム
 を意味しているものと思います。
 KOPは、OPPの片面または両面にポリ塩化ビニリデン(PVDC樹脂、サラン樹脂)をコートしたもので、
 これを KコートOPP、つまりKOPと呼んでいます。
 PVDC樹脂をコートすることでガスバリアー性、防湿性、保香性などが優れたフィルムになります。
 OPPについても説明が要りますね。
 『ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)
 オレフィンの一種ポリプロピレン(PP)を成型したフィルムは、比重の小ささや耐熱性・透明性
 などに優れ、さらには防湿性や燃焼による有毒ガス発生がない点などが評価されている。
 ただしガスバリア性には劣り、バリア層がコーティングまたはラミネートされている場合が多い。
 またヒートシール性にも劣るため、袋状に成型する際には接着部分にのみポリエチフィルムなどを
 コーティングする。
 延伸していないフィルム(CPPまたはIPPフィルム)は、パンや果物類、雑貨などの軽包装分野
 で採用されている。
 二軸延伸したフィルム(OPPフィルム)のうち熱固定を経ていないものは、熱により収縮する
 傾向が強いため、シュリンクフィルムとして使用される。
 一方で熱固定を行ったものは寸法安定性や耐水性・耐摩耗性などに優れ、1988年に
 オーストラリア建国200周年記念として初めて発行され、以後各国でも採用されたプラスチック
 製紙幣にも使用されている。PVDC樹脂を片面または両面にコーティングし、ガスバリア性や
 防湿性などを向上させたKコート(KOP)フィルムは包装用にて多用されている。』
 (ウィキペディアの「フィルム」より)
 LLDFは不明です。L-LDPEと言うのがあり、リニア低密度ポリエチレンの事で
 これではないかと思います。安価でヒートシール性に優れているとされています。
 
 この袋を長さ15cmほど切り取って、前回同様ガス口を付け、ヒートシール後大気からの
 酸素の通気性を測定しました。
 その結果を、前回のポリエチ、ポリプロのデータと合わせて示します。
            厚さ(μ)   大気からの酸素通気性(cc/cm2・hr)
 ポリエチフィルム  45      1.54 x 10^-3
 ポリプロフィルム  50      1.03 x 10^-3
 KOPフィルム    70      6.3 x 10^-5

上表の様に、KOPフィルムの酸素通気性は大幅に向上されている事が分かります。
 
 例えば、これを15cm角に切り取りヒートシールしたものの酸素通気性は、
 一ヶ月当たり約20ccとなり、脱酸素剤(酸素吸収能力 50cc)を一個封入すれば、2ヶ月程度は
充分脱酸素状態を保持出来る事が分かります。
私の取りあえずの用途は、珈琲焙煎豆の保存や、珈琲粉の輸送当たりですから、
これで充分な訳です

 尚、ガスバリアフィルムの中には数年程度のバリアに対応するものも開発されています。
 使い捨てカイロ(ホカロン、ホッカイロなど)の外袋などに使われているのはその種のもの
 だと思います。
 上記酸素の通気性測定にはホッカイロの粉を使っているのですから、ここでも既に
 ガスバリア袋にはお世話になっているわけです。