蕎麦の散歩道

美味しい蕎麦と、楽しい食の道を歩む。

松翁 猿楽町  蕎麦屋の涼しげな手仕事

2008-07-29 16:18:19 | 神田・浅草・神保町・猿楽町周辺・新宿区

稚鮎の天ぷらがサクサクして、あっさりした苦味が口の中に広がる。
「松翁」の玄関を開けると、レジ横に水槽があります。家庭の金魚水槽よりやや大きい程度のものですが、水がいつも綺麗で季節の天ぷら種が泳いでいます。

この日は海老がいます。その水槽の中には小網があって、稚鮎が10数匹走っていました。稚鮎はこの時期、川に放流して、彼等が岩ゴケを食べてその独特の苦味を
体に溜め込むのを待ち釣り上げます。

泳いできた感じが嬉しい

その稚鮎も天然ものと養殖ものがあります。天然ものは海の沿岸で網ですくい
それを川まで運んで放流します。その稚鮎を東京でも食べられるのは大変幸せなことになります。
従って、我々は川まで自力で上がってくる本当の稚鮎には滅多にはお目にかかれないというわけです。
先日の京都の「喜幸」や「菊乃井」のものは貴重品と言っても過言では無いでしょう。

   コーン掻き揚げ
        アスパラ天
         鱧天

天ぷらは、コーンの掻揚げ、アスパラ、鱧と松翁では季節のものが、ご主人手ずから上げて、油落としに入れて客の席に供します。
僕は時々、美味いね、と声を掛けますが、彼はチラッと僕の目を見るだけです。

茄子の冷かけ

小盛りの茄子の冷やかけが来ました。この日のお目当てのものです。冷やかけの汁はあっさりしていて出汁が効いています。
茄子は皮を剥いて味が浸みわたっていてあり難い気持ちになります。いつもながら細かな仕事を丁寧にしてあります。



上にのった鳥の挽いた肉は微妙な下味が
付いていて唸ってしまいます。こんなところで勉強する職人さんは厳しいでしょうが、
この経験は貴重な気がします。

日々の仕事で蕎麦の文化の核の種まきをこつこつやられている。
僕のような理屈だけで生きている人間は頭を打たれて痺れてしまいますね。
冷かけ汁に蕎麦湯も運ばれてきます。せっかくの蕎麦湯はすべて飲み干してかえります。外は暑いが、蕎麦屋の涼しげな手仕事が嬉しい。

手打蕎麦切 松翁
東京都千代田区猿楽町2-1-7 03-3291-3529 11:30~16:30 17:00~20:00(土)11:30~16:00 定休・ 日、祝  前回の記事

『こだわり蕎麦屋の始め方』

NIKKEINET 日経WAgaMAga記事連載中・働く(起業)
ダイヤモンド社刊(検索
著作・鎌 富志治(かま としはる)・夢ハ
●夢ハメールアドレス・・・toshiharu2214@edogawa.home.ne.jp

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案山子 芝  蕎麦屋での反省会

2008-07-27 06:55:43 | 銀座・新橋・芝・築地・港区・中央区・墨田
案山子の花番さんを見に行く事になった。
「見られましたか?」席に座ると、ご主人が雑誌の掲載のことを、僕らに聞く。
見たよ、と僕らが答える。
前日、雑誌にお店が取り上げられていて、お昼から大変な賑わいだったそうです。取材も他にまた新たに来ているそうです。
開店直ぐにこれだけメディアに乗れば幸先がいいというものです。

「いいお客さんに恵まれたね」
僕が言うと嬉しそうに頷く。人柄がよくて、よい蕎麦を打つから、蕎麦好きが集まってくる。その人達の口から口に案山子の名前が上がる。
僕もその人達伝に聞いた一人です。
その口はやがてメディアに昇る。よい客とよい友人に恵まれた蕎麦屋は、やがて順回転を起こして前に出て行きます。
芯が強くて角の無い人はするすると転がることが出来ます。僕も見習いたいものです。この年でまだ角が残っています。摩擦を時々起こしては反省の日々です。

焼き味噌は炙り

夜の花番さんはその3日ほど前から来るようになって、忙しさに間に合ったわけです。今日はルー君と二人です。早い時間に直ぐにいっぱいになって花番さんも酒のオーダーに追われる。
この日は二人なので案山子のフルコースです。焼き味噌から最後の定番のチーズ味噌までお任せにしてもらいます。酒はご主人にその都度訊ねます。
                  奴豆腐         


軽くてフルーティなものまで三合を呑む。三合が僕の酒量限界です。もちろんそれは特別な日は除いてはという意味です。
時々、限界を超えるのも楽しいものです。限界を超えようか、超えまいか、そんな心の葛藤(小さな葛藤ですが)の7秒間の真空時間がまたいいのです。

ゴーヤと豚シャブサラダ
        蕪の茎味噌チーズ 

ルー君がチーズ味噌を舐めるように綺麗な皿にしました。やはり雑誌の影響があるのでしょうか、お客が出ては入ります。
僕らは先日の京都旅行の反省会です。3日間もいて、お寺や観光名所に一回も寄らない京都旅行者がいるでしょうか。

胡瓜の冷やあんかけ
      エノキなどの塩昆布炒め

蕎麦屋、料理屋、市場、甘味処、それだけです。京都で食べる事が主題になっているのです。ルー君などは、夕方に京都に入って、喜幸に寄って、翌日お昼のランチを食べて帰ろうと言う。
ま、僕の計画も似たり寄ったりですが。

この日は、葱蕎麦にしました。シンプルなつけ蕎麦ですが、蕎麦の美味しさを引き立ててくれるつけ汁になっています。
この日は、4杯呑みました。案山子の4杯は丁度三合くらいです。一杯の価格を抑えて量を少なめにして杯の数を飲めるようにしてあります。
                     葱蕎麦


花番さんがまっさらな一升瓶を開けると、亭主に味見酒をさせる杯を用意していた。多分厨房にいる亭主がその瓶の味を見るのでしょう。
瓶毎の利き酒もしているのです。

「で、花番さん、どうだった?」
「なかなか、気が付く人でしたよ」
「暫くは大目にみようか、ね」
「そうしますか」
二人とも限界酒量に近いからいい気なものです。

案山子(かかし) 前回の記事
港区芝2-12-9 03-6272-4416  11:15~14:00 17:15~21:00(日曜12:00~15:00) 定休・土曜、祝日
●夢ハアドレス・・・このところ、メールを教えてくださいとの問い合わせが
あり、夢ハのメールアドレスを書いておきます。
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更科布恒 築地  真夏の辛汁

2008-07-26 12:04:33 | 銀座・新橋・芝・築地・港区・中央区・墨田
生粉蕎麦海老天辛味

布恒のぶっかけはどんな汁を掛けるんだろうか、
この日、海老天辛味ぶっかけを頼んだ。予想に反して、つゆはいつもの辛汁です。
本店の大森布恒は生返し辛汁で、並木藪とその辛さで1,2位を争う。



築地はそれよりもやや清涼な感じですが、それでも辛さは余り変わらないでしょう。ぶっかけだけは、辛汁ではなく、薄味のものが出てくるのかと思っていました。
意外とこの汁が生粉打ち蕎麦によく合いました。
辛味大根が乗っていてスッキリした味わいです。そば湯を頂いて、さらに更科を追加しました。
                     真白い地肌の食感のよい更科


更科はこれも程よい弾力でするすると喉を越していきます。辛汁がこの更科蕎麦の甘みを強調して、日差しを浴びて熱くなった体を冷やしてくれました。
そろそろ本店大森に行かなくては思っています。

布恒更科 築地店 東京都中央区築地2-15-20 03-3545-8170
11:00~15:00 17:00~21:00(土曜11:00~15:00 )
定休日 日曜、祝日 前回の記事
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たかま 大坂天神橋  繊細な神経と安定感

2008-07-25 09:49:25 | 旅行記(京都・大阪)蕎麦と料理



開業して8年の「たかま」の門構えは、今のモダンに負けていない気がした。
店内も外観のイメージを踏襲していて、シックな木目が支配するデザインになっています。ここは、一人できてもゆったり蕎麦屋酒ができるのではないかと思う。
肴も大勢でがやがやするようなものではなく、2品ほど取って頃合に蕎麦を手繰るようになっています。

鮎の甘露煮

鮎の甘露煮と出し巻きでビールと冷酒をそれぞれ一本やります。
夏はやはり鱧か鮎に目が行きますね。鮎は8月までが最盛期で、丁度今くらいが身が大きくなって薄脂を体に纏います。
吉野川あたりの鮎は今が旬で刺身もまた絶品です。これはなかなか現地に行かないと食べれないでしょう。
鮎の身は刺身では結構歯ごたえがあってポン酢あたりで食べるとよく味わいが出ます。東京では目黒あたりのすし屋で握りでありますが、感動ものです。

甘みを抑えた玉子焼き

出汁巻きはかなり薄味です。玉子の色が真黄色で、焼き方というよりは、これは玉子そのものの個性なのでしょう。蕎麦は極細で関西では石井さんの系列の「いしたに」、多店舗を展開する「土山人」のそばと同じような雰囲気です。細い蕎麦ですが、味は強いほうではないでしょうか。



つゆは甘めで僕の好みではありませんが、甘めが好きな方にはいいつゆかもしれません。
繊細で几帳面、針の穴を通すような細かな神経が張り詰めている気がしました。
見方を変えればどこかよそよそしい、そのあたりが僕のようなよそ者を受け付けない
雰囲気があります。
このところ強い個性のお店が主流になってきていて、それでないとなかなかメディアに乗れなくなってきています。ソバマニアも新しい方向性を求めだしています。

丁度たかまのお店のコンセプトがその変換点に位置している気がします。強い個性は無いがお店の雰囲気、蕎麦や料理が安心感を与えるということでしょうか。
蕎麦屋の風情を楽しみに来る、そんな方たちにはよいお店になっているのかも知れません。

たかま大阪府大阪市北区天神橋7-12-14
(地下鉄天神橋筋六丁目駅から徒歩7分)
06-6882-8844 11:30-14:30 17:30-20:00 定休:火曜,月曜夜 
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菊乃井 京都  鱧の、花弁の悪戯

2008-07-23 10:02:09 | 旅行記(京都・大阪)蕎麦と料理

菊乃井のランチはカウンターが楽しい。
この日は本店が一杯で、木屋町にしたが、これも13時の予約しかなく、相変わらずの人気振りです。
カウンターには常時店長や二番板、三番板やそのほか見習いの板さんが立ち替わり、入れ替わり5人ほど現れる。
鱧の3枚おろしを三番板さんあたりだろうが、その白い綺麗な板で繰り返し見せてくれる。鱧は包丁をなるべく何回も入れないで直線的に引き回す。
その包丁捌きが骨切りで落としにした時に上手下手が現れる。骨切りして、身を湯に落とすことから、お造りは、鱧の「落とし」といいます。

鱧の落とし

湯の中で、身がくるまって花が咲くようにならなくてはいけない。
梅酢で口中に運ばれたとき、その花弁の弾力が、ちょうど骨切りの割愛された細かな身がバネになって舌や、頬の内部にくすぐるような食感を均等に与える。鱧肉の悪戯です。
鱧の食感の醍醐味はそれが淡白だからなおさらに愛おしくなる。それは、何百年にもわたる包丁の技術がそうさせます。
骨切りは単に骨を切るためにだけあるのではなく、食感の、そのくすぐりの美学なのです。

 「前菜は雲丹豆腐、八寸は左から鱧寿司、容器は朝瓜、右は
 珍味の蛸の子、手長海老など。朝瓜の食感が絶妙。」  



その伝統の技は、京の数寄者たちが競い合っては楽しんできたから究極までに高められてきたのでしょう。菊乃井の鱧の落としを、今の年齢になってようやく楽しむことが出来ました。

    「強肴は、鴨茄子、穴子、田中唐辛子。蓋物は黒豚角煮、冬瓜、
    じゃが芋餡。黒豚とじゃが芋餡のバランスがいいですね。」
   

料理の奥の深さはまだまだあるのでしょうが、日々自分の感性の拙さを嘆くばかりです。
お造りはしま鯵と鯛です。しま鯵はポン酢の煮凝りを巻いて食べます。刺身の包丁の当りが綺麗だから身にしまりが残っていて甘い。

お造りのしま鰺はポン酢煮こごりで
鮎焼きは頭から食べる
  苦味の後は芋の甘露煮が

鮎は琵琶湖の生鮎を塩焼きにします。季節を頭ごと尻尾まで食べました。
ご飯は再び鱧です。3枚におろした残りの骨から良い出汁をとってご飯を炊き上げ、鱧を焼いて、途中ご飯の中に泳がし入れます。ありがたいことにこれは残りは漉き板の弁当箱に入れて持ち帰り出来ます。


「鱧飯し、枝豆すり流し胡麻豆腐の吸い物など」

夜ホテルでシャンパンとバーボンを飲んだ後に美味しい夜食になります。京の夏は暑くて頭がくらくらするほどですが、しばし、京都の柔らかな言葉と鱧のご馳走が心を穏やかにしてくれました。
露庵 菊乃井 木屋町店
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だし巻たまごは、中辛くらいで 

2008-07-20 19:55:31 | その他



川むらの出汁巻きのメニューで青唐辛子入りのものがあります。
これは、ふつう、中辛、大辛と3タイプが用意してあります。ビールを頂きながら、中にするか、大にするか散々迷って中辛にした。
青唐辛子の量で、3タイプあるのだろうが、よく見ると青唐辛子が偏っている部分がある。
そこは思いっきり辛い。玉子を溶いて青唐辛子を入れてかき回しても、重みで沈んだりするわけだから、均等にはならないのでしょう。
やはり、これは中辛でよかった。
鶏のぶっかけそば

蕎麦は、この時期はどうしてもぶっかけのようなものが食べたくなる。相変わらずそーめんのような細さだが、しっかりこしがあるので、ビールを飲んでいる時には良いつまみ代わりになる。
川むら 日暮里  前回の記事


銀涼そば

銀杏の銀涼そばです。これは夜の食事のときに料理の合間にオーダーしたものです。関西のお客と一緒でしたが、この汁の具合がとても口にあったようです。
一般的に揚げ餅は女性の好みが強いようで、その餅をセンターに散らしてあって、具材のバランスが鮮やかで楽しい。
せいろはこしもよく、蕎麦はぶっかけの出汁に負けないで、かえって締りがよくなるのではないでしょうか。

銀杏 西大島 前回の記事


すだちそば

布恒というと、つゆは辛汁の濃さが思い浮かぶ。ぬきなどもその辛汁で作ってあるから、やはり相当なものである。
だが、ひやかけになるとこれが比較的関西風に近い。このところ、すだちはどうも流行のようで、いろんな蕎麦屋さんで目につくようになった。
僕はすだちが好きなので、このくらいのすだちは平らげてしまう。この時期からはこのさわやかさが嬉しい一品です。

更科布恒 築地 前回の記事



(レアな焼き加減、葱で甘みを出してあって、汁も最後まで飲めます)

これは、夜の「流石」で、日本酒のあとの鴨なんそばです。鴨は蕎麦屋の定番中の定番で、その中でも鴨なんそばは、およそどこの蕎麦屋を覗いてもメニューにあります。したがって、差別化は至難の業で、鴨の肉質、生産地、汁の濃さや風合い、葱の種別などが工夫になります。また鴨の焼具合いや、焼き方で硬さや味わいがいっぺんに変わります。
僕は、焼具合はレアで、歯ごたえが重くてすっと歯で切れる感じが好きです。

流石 銀座 前回の記事

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菊谷 石神井公園  春の新蕎麦の、ご褒美

2008-07-14 22:16:09 | 世田谷・杉並・練馬・北・荒川・豊島
石神井公園駅までは、池袋経由が便利でした。
その駅から3分程度のところに「菊谷」さんがありました。菊谷さんは実家が巣鴨だそうで、ここには結婚を機に越されてきて、それが縁でこの地に蕎麦屋を開いたそうです。
まだ、年齢も30代半ば、羨ましいほど蕎麦屋のご亭主には若く、開店して3年だそうですから、今が一番充実して、これからどんどん力が漲っていく年齢でしょうか。



週末の夕方早い時間、口開けの客です。先の蕎麦会でご一緒したせいもあって顔も覚えていただいたようです。
お昼が忙しかったそうで、この後助手の方がこられ次第、お昼に売り切れた10割蕎麦を夜の客のために打つそうです。

生ビールは地ビールを使われています。それは、一般的なメーカーのビールの味に近いのですが、麦芽にやや深みのある香りがあって、口当たりがよく飲みやすいものになっています。
地ビールの先鞭は新潟の越後ビールで、確か発売までは開発に3年くらいは掛かったでしょうか。以来あっという間に全国に広がりましたが、やはり少量生産ですからコストが高く、そうは飲めないのですが、蕎麦屋で地ビールが味わえるのはありがたいですね。
         トロトロのおぼろ豆腐
            煮ものと干し小魚

肴はゆるゆると飲める3点セットをいただきました。日本酒をお代わりする頃、お客も入り始めます。
皆さんお目当ては二八蕎麦と十割蕎麦の2色セットのようです。この日は平日なのですが土日は遠方からの客が多いと聞いていますが、このセットがやはり人気なのでしょう。
カウンターのひとり客は十割が無いと知ってがっくりしていましたが、菊谷さんが助手が来たら自分が打ちますというと、待つという。

7時まで後1時間はあるが、それでも待つという。お酒を呑めない人らしくお茶で待つというから、僕が亭主なら泣きたくなるようなよい客です。
もう一組の男女も二八をお代わりして食べていたが、それを聞いて十割が出来るまで待つという。
蕎麦が好きな客が集まってくるお店だとよくわかりました。お酒をやりながらゆるゆるしていると、やがて助手が来たので直ぐに菊谷さんは打ち場に入る。

丁寧に焼かれた玉子焼き

僕は助手の方に玉子焼きを焼いてもらって、その十割を待つ事にした。変わった文章を見つけた。メニューを見ながら量を少なめにしてもらおうかと考えていたら、
「お子様そば」とあった。
それには、(騒いだり、走ったりしない、行儀のよいお子様には何かご褒美があるかもしれません)菊谷さんの人柄がよく出ていると思った。



駅のトイレでも、「綺麗に使ってくれてありがとう」というのと「綺麗につかいましょう」というのは、180度くらい違いますね。
「騒いだり、走ったりするお子様は、お断りする場合があります」と書かれたら、もう家族連れは怖くなりますね。
7時に十割蕎麦が打ちあがりました。全員がそれを待っていました。

春の大分新蕎麦

「大分、春の新蕎麦です」なんと、九州はもう新蕎麦です。香りが鼻を抜けていきます。極細に打たれた蕎麦は新蕎麦の初々しい顔で誇らしげです。
ふわ~っとした、人柄が出ている優しい蕎麦です。
春のご褒美が初夏に巡ってきました。

つゆは甘味を抑えてあって返しの醤油の加減がいいですね。甘味を強くすれば、返しの配分が割合調整がききますが、甘味を抑えると、返しの%に相当な神経が必要です。
重みのある手ごたえのあるつゆに出会いました。

青梅のお手製お菓子

食べ終わった後、巣鴨のお母さんが作った青梅のよい甘味を頂きました。大人しくお酒を頂いていた、これもきっと大人のご褒美だったのでしょうね。

菊谷
練馬区石神井町3-27-16 03-5393-6899 11:30~14:30 / 17:30~21:00
(日曜 11:30~17:00売り切れ) 月曜定休

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竹やぶ 柏  完成されることはない道

2008-07-11 14:25:01 | 近郊・神奈川・千葉・埼玉・茨城・長野他

7人での蕎麦会ですが、めいめい今日は集合がばらばらです。
僕は花まきさんとタクシーで11時に柏駅で待ち合わせで、すぐタクシーに乗ってお店まで急ぎました。
お店は11時45分からですが、僕らは竹やぶのこれまで撮影したことの無い場所をカメラに収めるために早めに着いたわけです。


花まきさんは竹やぶの馴染みで年に一度新そば時期には近しい人たちと竹やぶ蕎麦会を開催します。
そこに僕も入れていただいています。花まきさんともこのところあまりお会いしていないのでタクシーの中でそれこそ二人とも洪水のような会話をしながら来ました。
竹やぶの訪問は夜が多く、お昼の顔をまだ見たことがありません。

      

表玄関から、裏に回りましたが、ここはどちらが表でどちらが裏かよくわかりません。裏も表も無い、それがそもそも我々の常識とは違う竹やぶの世界です。
異端の小動物が金襴のじゅうたんに乗って、曼荼羅の宇宙を歩いているような世界があります。太陽の暑い光と情熱の色が異界的な造形と交差し合って、人が歓喜しあう道がありました。日本の道ではありません。侘びやさびから逸脱した、率直な声が行きかう、煩悩が交錯した回廊です。


                    
                      

明らかに阿部さん以前の蕎麦を否定した強い意志がほとばしるメッセージを感じました。もう少し、そう、5年ほど前にこの道を歩いていたら、僕は蕎麦屋になることを断念していたかもしれないです。
ただ・・それだと今のような幸せな道を歩いていなかったかもしれません。それは、人生の道筋の変化を思う、不思議です。

         

巨大な女性のシンボルに男たちが幸せそうに納まっている暗示モニュメントがあります。人が生きていくエネルギーの源であり、釈迦も平人もここから生まれてきて、ここに帰り安息を得ます。
ただ、我々のような解脱もできない、ただ安息だけを求める者が、いまだに俗界をさまよい、そのさまよい人のために、竹やぶが現出したのでしよう。



いくつかの想像界を潜り抜けると、お店の渡りにぶつかります。ここが天界から食俗に渡る境界です。海があり、舟があって、想像界の動物に送られて、食べにきた僕らは安部ワールドに食べられに行きます。
この日はお座敷に案内していただきました。僕の隣はつれづれ蕎麦のyukaさん、西麻布「たじま」でお会いして以来ですが、なんだかいつもお会いしているような気がします。

後の4人の方は今注目の蕎麦屋さんのご亭主たちです。顔なじみの方もいれば初めてお会いした方もおられます。この会に誘っていただいてから、わくわくしながらこの日を待っていたものでした。
                    粗挽きに工夫を加えた蕎麦掻


熱燗をゆっくり味わっていたら、蕎麦掻が来ました。これまで食べた、どこの蕎麦掻とも違います。まだ経験の無いものが舌の上を、異物感がそれでいて心地よいまだらの感触が転がります。硬い粒子、固い粒子、堅い粒子、たとえてみるとそんな微妙に違うものたちが騒いでいました。
最後にゆっくりとトロミが入ってきます。あの玄関に入ってくるまでの道々に仕掛けられた魔術のようなものが椀の中に静かに鎮座していたわけです。

出し汁だけのシンプルな
玉子焼き、砂糖、味醂を極端に押さえてあります

食感の振り子がぐるぐる回っていました。皆さんも手探り状態です。さすが、現役の研究熱心な蕎麦屋さんたちだから、どうやって作ったのかの言葉が飛び交いました。想像はつくがそれを再現するのは並大抵ではないことを彼らも充分知っていますから、それは推理ゲームのような楽しいものになっていきます。

美味しい・・の一言で結局は集約されるから、蕎麦屋は笑ってしまうほど楽しい。
酒と交互にゆっくり味わいたかったのですが、僕としてはかなり速いペースで食べてしまい後悔しました。

昆布、煮こごりが特別な鰊

楽しみにしていた鰊の付け合せの煮こごり、昆布、これはゆっくり食べました。yuka さんなどは、これは蕎麦も終わってなお且つ少し残してあって、彼女の食への執念の片鱗をみました。
美味しいものはすぐに食べたい、美味しいものは、ぎりぎり残して食べる。僕は前者で、彼女は後者で、このような癖は、多分子供の頃からのような気がするが、どのような経緯でそうなるのか興味があるところです。

丁寧な海老掻揚げ

蕎麦屋の女将も花番さんもそんな客はよく見ていないと、駄目だし、それができると客が付くものです。コース料理は、客の誰に合わせてペースよく出すか、それができない店はコース料理が出なくなるし、僕も客として嫌になる、そんな経験がよくあります。
まして、店のペースで料理を出す店はオペレーション自体を勘違いしているのです。
コース料理こそ花番さんの真剣勝負だという認識がある店で味わうとさらに美味しさが増しますね。

ここからは蕎麦が来ます。
僕はせいろを頂きました。お隣は田舎蕎麦でした。写真に納めなかったのですが、黒いダイヤのようなこれもまた、どこにも無い透明な蕎麦でした。
「手挽きかな??」僕が呟くと
「そうでしょう・・」向かい手の神田のご亭主がいう。
「変わったなぁ、こんな蕎麦だったかな」どこかのご亭主が同意を求める。
いつも誰かが冒険しているのでしょう。
蕎麦屋には完成が無いことを僕らは目にしました。
開店3年余りで今人気店のご主人が3名、竹やぶが大好きで開店1週間のこれからだというご主人も、この蕎麦の前では、ただの蕎麦好きになっています。
きっと今回の蕎麦会は皆さんの新しい動機の原動力になるかもしれません。
そうあって欲しいと思います。


                    
  (せいろは新蕎麦のような香り、かけはたっぷりとした風合い)

今日は、今回参加の蕎麦屋さんのご友人が竹やぶに入った壮行会で、その職人さんが給仕に回っていただいたので、とても細やかな配慮があり、心地よい蕎麦会でした。
彼もまた何年かして自分の蕎麦屋を開くのでしょうが、この友人たちと交友があるからには、きっとよいご亭主になるだろうと思った。
蕎麦の豊かさを、柏の「竹やぶ」の異界で味わう、七夕の日。
竹の笹にもう願い事をしなくなってしまったけど、願い事だけはまだ沢山あります。
それは、いつも蕎麦がまとわり付いている夢ばかりです。
この日、蕎麦の夢を語る人たちに出会って、
僕の蕎麦人生でも特別な日になりました。

竹やぶ 前回の記事
千葉県柏市柏1144-2 04-7163-9838 11:45~19::45
定休日/毎週木曜日 

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渡辺 高松市  別腹はいくつある 

2008-07-08 15:39:44 | 旅行記(京都・大阪)蕎麦と料理

饂飩の国、讃岐の高松に来ていた。お昼と夕方に蕎麦屋めぐりを何店かして、夜は居酒屋、小料理屋巡りの計画が4店ありました。その3店目の「渡辺」は、地元の方から美味しいと教えてもらった店です。石と木材と白壁がモダンな造りで、設計士が細かなこだわりと遊びを随所にちりばめてある店です。席数は14席ほどでカウンターがメインです。

地物野菜の炭焼き

地元の良い野菜がカウンターの木箱に入っています。これを炭で焼いてもらいます。
「炭で焼くと甘くなります」32歳の若いご主人が僕らの食べている様子を見ています。
ほんの少し、いろんなブレンドで作られた塩が野菜にうっすら掛かっていて、それに山葵を乗せて食べます。まだ、開店して半年あまりだと言います。この野菜を食べながら、メニューを見ると、これはかなり期待が出来ます。グラスワインも手を抜いていません。しっかり濃くのあるミディアムボデイの赤です。

サザエのから揚げ
地元海老とそら豆の天ぷら    

「ここで、最後にしようか」
連れとはあと一店回る予定でしたが、次の店の候補もあったのですが、移動するのは後ろ髪が引かれてしまうでしょう。

サザエのから揚げ、さわらのからすみなど、これは見逃せないものがあります。ぼらのからすみはよくありますが、こちらはさわらのからすみが特産で、奥まった路地にさわらのからすみの専門店があるのを確認していました。しかも、からすみは渡辺の自家製だと言うから、次の店はもうこの時点で諦めました。

鰆の炙りからすみ

からすみは炭で炙って出てきました。自家製ですから、保存食ほどの塩入れはありませんから、甘みがあって身が柔らかい。
連れは1枚程度たべていたような気がするが、あとは、僕がみんな赤ワインの肴で食べてしまったような気がする。

ズッキーニくらいの大きさの山葵

相対的に高松の居酒屋はレベルが高く、中でもここの食材は良く吟味してある。野菜につける静岡産の山葵は巨大なもので、鮫皮で下ろすときめ細かく辛味の風合いが舌に心地よい。よほどの寿司屋でも使わないものを仕入れていて、これはその仕入れを根掘り葉掘り聞いたのだが、嫌な顔もせずルートも教えてくれる。


はも鍋は玉ねぎを入れ
皮目を焼いて出汁にする。

(注文を受けてから鱧を捌き骨きりして、出汁をとる)

鱧しゃぶが今日のオススメにある。包丁捌きを見ながら日本酒を飲む。鱧の皮は炙ってなべの中に入れて出汁にする。
その前2店お店に寄ってきているから、料理もこれが限界だが、我々の胃はどうなっているのだろうか。お酒で胃壁が伸びきっているのだろうか。

鱧鍋でおじゃにしてもらう

これも完食して、連れが何かご飯物と言い出したのには負けた。
別腹を二つくらいは持っているかもしれない。
流石にご主人も鱧のおじゃで如何でしょうか、と鍋の残りにご飯を入れてくれた。
できたら、この近くによい手打ち蕎麦屋があって、渡辺と交互にこれたら最高である。

「高松に美味い蕎麦屋を作ろう」
はものおじゃをお代わりした連れがそう言う。
彼女が、きっと僕の思いをかなえてくれるでしょう


渡辺 高松市鍛冶屋町6-19 087-823-3517
『こだわり蕎麦屋の始め方』

NIKKEINET 日経WAgaMAga記事連載中・働く(起業)
ダイヤモンド社刊(検索
著作・鎌 富志治(かま としはる)・夢ハ
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あめこや 豪徳寺  蕎麦の、幸せな心の地図

2008-07-04 23:34:54 | 麻布・六本木・赤坂・白金周辺・千代田区

「今日は、徳島産の蕎麦あります」
席に座るなりご亭主が言う。どうやら顔を覚えていてくれたようです。
最初来たときに手狩り天日干しの綺麗なグリーン色した蕎麦。その樹木を乾かしたように香る、徳島産蕎麦に感動しました。
その日は大袈裟に騒いだのでご亭主にも女将さんにも印象が残ったようです。

めったに入らないその蕎麦が偶然あるというのですから幸運というほかありません。この日、久しぶりに会うおいちゃん(昔からそういっていたので)が蕎麦を食べたいというので遠出ついでにここまで来てしまった。
この日はかなりな雨模様で客はまばらかだろうか、と思ったが、予約で満席です。この日もあとから店を覗く客ががっかりして帰る。人気は継続中です。
当日に予約がよく残ってたものです。

お通しはズッキーニなど

「僕らは、1時間半ほどで引き上げるから、後からのお客さんを入れたら・・」
予約で満席だが、待つから遅い時間でも入れてくださいという客が後を絶たない。
「いえ、自分らのペースがありますから、お気遣いなくゆっくりなさってください」
予約客以降の客は取らないのだという。しっかりしたことを言うからまたまた感動してしまう。
予約でも1時間で帰る客、1時間半で帰る客、2時間もいる客、それは多分まちまちなのです。

時間制限予約にすると、早く出そうと無理もあるのでしょう。それと、本意は今、席に座ってる客を丁寧な対応をして大事にしたい、ということでしょう。
この日は雨に長靴を履いてきたおいちゃんの食べたがるオーダーで行きました。

金時草のおひたし

金時草(きんじそう)のおひたしは、噛むとくりくりと歯ごたえがあって、味わいも独特なものがありました。あおやぎの酢のもには、海ぶどうが乗っていて、珍しいものだから、いつの間にか無くなって、僕の口に入りません。


青柳と瓜の酢の物、海ブドウがうれしい

海ブドウのコリコリした食感を味わえなくて、おいちゃんのペースの速さをすこし恨みました。この後はすぐに徳島産の蕎麦を注文してありました。これはとりあえず二人で一枚いただきます。

グリーンの膜が一枚掛かる

「何、この色は!」彼が蕎麦をすぐに口にします。
「うーん、うーん」と唸りながら声が出ません。
またも、危険な状況になっています。



「ここから、ここまでね」僕は笊に盛られた蕎麦の上を箸で線をなぞりました。全部食べそうな勢いだから、そこまでしなくてはならなかったでしょう。
蕎麦を3本ほど手繰って顔に持ってきます。手でぱたぱた扇いで香りをかぐ誰かさんのスタイルで行きました。
樹木を燻したかぐわしき香りが顔を打ちます。この時期にこんなよい蕎麦を食べるのは蕎麦好きの幸せというべきでしょう。

豆腐にじゃこのソース掛け


蕎麦を食べ、飛露喜をのんで、少し落ち着いた表情がお互いにもどってきました。料理を2,3点追加します。


稚鮎の天ぷら     生臭い蓼(たで)も天ぷらはサクサクの美味

豆腐はじゃこのソース掛け、天ぷらは稚鮎とタデの葉、鮎は苦味がたまらないうるか(鮎の腸の塩辛)がありました。〆は僕は福井産にしました。


鮎のうるかに合わせて、秘蔵の冷酒を頂く

おいちゃんはもう一度徳島産を所望しました。雨の肌寒い日、熱い蕎麦を食べてもらって体を温めてもらおうとしたのですが、せいろがいいのだという。

上が徳島産

下が福井産

福井産もこの時期の蕎麦としては香りも味も濃いものでした。だが、僕にはやはり徳島産の印象が強く残りました。
聞くまでもなく、またすぐに徳島産も福井産も、これらの蕎麦はなくなります。

全国10ヶ所の蕎麦を打つ

大きな日本地図にそれぞれの蕎麦の産地が明記されています。
北海道、東北、関東、中部、四国を経て、九州へ。日本の蕎麦は、いまどこも蕎麦農家の人が頑張って、そのよい顔が目に浮かびそうです。
蕎麦好きはなんと幸せな心の地図を手に入れられるのでしょうか。
順繰りに日本を巡る旅に、また豪徳寺まで出かけに来ようと思います。

AMECOYA(あめこや)前回の記事
世田谷区豪徳寺1-46-14 03-3439-3602 17:00~23:00
定休・月曜、第一火曜

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土山人 目黒  レトリックを愛してきた

2008-07-03 08:53:50 | 根津・大塚・文京・品川・目黒・渋谷・中野

土山人は目黒川の川べりにあります。
それは隠れ家と言うよりは、密室のイメージに近いかもしれません。 芦屋に本店があり、その名も高く、その様子を知るのは夜の訪問がいいだろうと思いました。
夜は、まだ恋人にいたらずの会食や、恋の深まりを楽しむために用意した舞台のようになっています。
男同士は軽めのビジネス用語を交わすような関係で無いと辛いかもしれません。むしろ女性同士が友情を深める食事時間に過ごす場所にふさわしいかもしれません。


僕が蕎麦マニアでなかったら、一人で夜来る勇気はないでしょう。料理は繊細でお洒落なものを揃えていて、酒は量を少なめにして注文しやすい価格設定になっています。

     七つの野菜のジュレと湯葉
     揚げ出し豆腐餡かけ 

野菜をふんだんに使ったジュレ、ハマグリの酒蒸しなどを頂いて、僕らも軽いビジネスの話に入りました。
ただ、友人は蕎麦屋になれていなくて、しかも、ニューウエーブ系の蕎麦屋には初めてですから、最初から腑に落ちない様子です。
僕は、彼を連れてくる場所を間違えたと後悔しました。

コーンと新牛蒡の天ぷら、浅蜊のワイン蒸し


最初は、三合庵か流石あたりで慣らしておいて、眠庵か竹やぶを通過して、土山人にすればよかった。
豆腐の揚げだし、野菜の天ぷらを追加しました。揚げ出しは出汁味がきいて酒に合います。スライスカットしたコーンは甘味があり、新牛蒡は筋が強くなくて歯応えがサクサクしています。

関西風と関東風の出し巻きがあり、これは甘辛い
出汁巻きで関東風



料理はなかなか丁寧で人気が出る理由が頷けます。すぐに、蕎麦をもらいました。これは彼と一枚にしました。
蕎麦は極細、古拙と流石の蕎麦を思い出しました。細いがこしがあって、味があります。水っぽさを避けてあります。
ただ友人はびっくりしたようです。さかんに、ソーメンみたいだとつぶやきます。彼が抱いてる蕎麦とは極端に違ったようでした。

蕎麦は極細

蕎麦を一枚にしたのには理由がありました。
「もう一軒行こう」彼が渋谷の行きつけの小料理屋に僕を誘ったからです。蕎麦屋から、小料理屋にはしごの経験は余りありません。
その反対は良くあります。お腹にその店の料理が入る隙間を残しておかなくてはなりません。
「君の好きな京都の料理だ」元々、彼は貴族のような趣向の持ち主で、関東風の料理や創作料理を好まない。
蕎麦だけが体験の少ない男です。

玄関のタイル敷き

「レトリックが過ぎる気がした」
彼が京都料理の店で土山人のことをそう表現します。

「レトリックが人生を潤す」
僕が言い返す。およそ、人生の半分をレトリックで生きてきた僕を揶揄しているのだ。レトリックを愛しているから、このような蕎麦屋にコロリとまいってしまうのではないかと彼なりに心配しているのです。
僕は自分なりに成長はしていて、批判する所はすると。が、言葉は飲み込んだ。
「言ってみると石器時代の宮廷レストランを見事に再現している」
土山人の店を核心的に言い当てるから、彼のそんなところが好きになる。
「だいたい君が求めている蕎麦は繊細すぎる」

蕎麦は微細な穴を穿り返すような作業で面白くないという。
「文化とはそんなものじゃないか」
いつも平行線なのだが、そんな言い争いをして20年付き合っている。
また、知らん顔して蕎麦屋に連れて行こう。その蕎麦屋はどこにするか、それを考えていると、また楽しくなった。

土山人
東京都目黒区青葉台3-19-803-6427-7759
11:30~14:30(L.O.) 18:00~23:00(L.O.22:00) 
定休日:月曜

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