蕎麦の散歩道

美味しい蕎麦と、楽しい食の道を歩む。

よし房・凛 根津  迷う楽しみがまたひとつ

2008-06-28 12:31:30 | 根津・大塚・文京・品川・目黒・渋谷・中野

10ヶ月振りくらいの「よし房・凛」でした。
根津のお昼は、昼食に出る若い人達がチラホラみえます。洋食屋、カレー屋、和食屋のランチメニューを僕も彼らと同じようにチェックしながら歩きます。
どうせ、最終的にはよし房に入るのですが、それぞれのランチを比較しながら、現物を想像するのも楽しいものです。

店に入ると直ぐ右手に打ち場があって、この時間に顎鬚のお兄さんが蕎麦を打っています。見慣れない人でした。女将さんに厨房の人数を確認したら3人、前に来た頃よりは1人増えています。
3人だと、仕込みに時間が使えるし、客が来ている間も、追い打ちが自由になります。忙しい蕎麦屋には理想的なスタッフ構成になってきました。
それと共に打ち手によって蕎麦のニュアンスが変わってくることもあるから、そこが悩みどころでしょうか。もっとも、蕎麦屋によっては今日の打ち手の看板を上げるところもあるから、それも目先が変わっていいかもしれません。

牛蒡天そば、たっぷりなボリューム感

この日は、牛蒡天のぶっかけをオーダーしました。水菜がたっぷり、牛蒡も12本、数えてしまう、自分の食い意地に嫌になりますが、仕方のないところです。
蕎麦は、なかなかよい顔をしています。随分前だから、歯応えやこしをそんなにはっきりは憶えていないのですが、蕎麦の表情が変わったように感じました。
田舎を一枚追加しました。
                     田舎蕎麦のよい風味が・・ 

僕はよし房の田舎蕎麦は初めてかもしれないです。中細でしっかりした黒味で甘皮の星が散らばっています。詳細に見ると蕎麦の中に色んな粒子が飛んで蕎麦肌が面白い見え方をしています。
香りはこの時期にしては、随分ありました。舌に微妙なざらつき感があって好きなタイプの田舎蕎麦になっていて幸運でした。
これから、直ぐ奥にある鴨の「鷹匠」と、よい風合いの田舎そばのよし房とこれは、迷いに迷ってしまう事になりそうです。

よし房 凛 前回の記事
文京区根津2-36-1 03-3823-8454
11:00~15:00 17:30~20:30 定休・火曜

『こだわり蕎麦屋の始め方』

NIKKEINET 日経WAgaMAga記事連載中・働く(起業)
ダイヤモンド社刊(検索
著作・鎌 富志治(かま としはる)・夢ハ

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大川や 九段  蕎麦の女神が舞い降りた人

2008-06-25 08:45:15 | 麻布・六本木・赤坂・白金周辺・千代田区
「大川や」のコース料理にしてみた。
先日は姉妹店の護国寺「蕎すけ」で慌しく過ごしてしまったが、週末でお客さんとの会食だから、ゆっくり呑めそうだった。
それでも最初の30分はお茶を飲みながらの打ち合わせになる。女性の方で関西方面で生まれ大阪の在住の方だが、蕎麦が大好きで、つゆは辛口が好きだという。
味付けはもちろん、薄味で出汁が効いたものが好みです。


冬瓜やら、穴子やら、かぶやらが薄味の京風の煮つけでまいりました。これは、想定外の嬉しさだったでしょう。

蕪の煮つけ
                   穴子の薄煮                        冬瓜の煮もの

コースは、ここから、お造り、天ぷら(写真撮り忘れ)、途中粗挽き蕎麦を挟み、焼き魚、鴨の蕎麦掻き(これは特別注文)、最後に温蕎麦がきます。
大坂や京都の蕎麦屋の話になります。大坂のめぼしい蕎麦屋は回ったそうです。だけど、彼女の蕎麦は東京にあるといいます。
信州でもなく、東北でもなく、江戸だそうです。二八と辛いつゆ、これが江戸そばだそうです。理屈も何にも無い、シンプルでいいですね。
        蕎麦掻がトロン、豊かな汁に浸った鴨も美味しい                            

鴨の蕎麦掻は彼女は感動物だそうです。しばらく前、「たじま」の同じく鴨の蕎麦掻は驚いたそうです。
そのたじまのものとは汁が全く違っていて、汁は飲めるものではなくてはいけないという彼女には脂の浮き、だし汁の濃くみ、薄口の醤油は絶妙なバランスに感じたといいます。

                         鰹のお造りと鮎の一夜干し


この日はもっぱら、僕は聞き役に回ります。そばの趣向、他人の好みを聞くのもまた楽しいものです。
蕎麦の好みとか、蕎麦を愛する過程は、その人の人生そのもので、それは、人の生き方や人生観を聞くのと同様なのだと思う事があります。 
いい蕎麦屋で語らう人達のざわついた声は、きっとどこか違うのだと思うのです。愚痴や雑言が飛び交わないから蕎麦屋の酒は美味しいのでしょう。

粗挽き蕎麦はよく香ります。品のある姿形


「いい蕎麦屋を開きたい」彼女も蕎麦屋に憧れている。
蕎麦屋を開きたいという思いに取り付かれてしまったら、もうそれは真っ直ぐにすすむ以外に手がないのです。
それは、自分が一番知っていることです。彼女の首根っこを蕎麦の神様が押さえてしまった。よい蕎麦の神様であるように後は祈るだけです。

〆は湯葉の温蕎麦にしました。湯葉は汲み湯葉でとろとろ、出し汁は湯葉の強い香りに負けていないが、醤油の強さも抑えてあって飲み干せるものになっています。
大川さんと二店目の護国寺「蕎すけ」の話になる。彼は蕎麦屋を二店も開いた幸運の持ち主です。

出し汁の風味が効いた
汲み湯葉蕎麦。澄んだ綺麗な温蕎麦です

蕎麦の女神に好かれた男は随分な色男なのです。それは、僕なんかの世代がいう、二枚目というやつです。
その彼がフロアにいるのですから、いいお客が集まってくるのでしょう。
いい蕎麦屋を造り、沢山の蕎麦職人を育て、その女神に恩返ししなくてはならないでしょう。
その彼としばし僕は蕎麦の楽しさを語った。ますます、ますます、そばにいる連れの彼女の背中に本格的に蕎麦の神様が舞い降りた。

大川や 前回の記事
千代田区九段南3-4-203-3234-8887
11:00~15:00 17:30~22:00
土11:30~21:00定休 日曜・祝日 

『こだわり蕎麦屋の始め方』
 
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蕎すけ 護国寺  三合は呑みたくなる日

2008-06-22 08:05:37 | 根津・大塚・文京・品川・目黒・渋谷・中野

大川さんの弟分の西麻布「たじま」さんから一度行ってみてください、
といわれていて、ようやく護国寺の「蕎すけ」へ。
蕎すけは市ヶ谷「大川や」さんの2店舗目のお店です。新規開店して2ヶ月くらいというところでしょうか。



この日は、9時半頃の東海道線に飛び乗らなければいけなくて、同行していただいた方達に失礼な事をした。待ち合わせの一時間前くらいに護国寺の前に立っていた。
交差点付近から見ると、このあたりはもうビルが並んでいて、僕が知っている場所ではなくなっていました。
30年以上も前にこの交差点近くに2年ほど住んでいました。当たり前ですね、そんな遠くの日だから、街が変貌するのは当然です。が、僕には中味が凝縮した思い出の地でした。


若い頃誰もが味わう甘くて苦いものが交差した二年だった気がします。当時、このあたりは区画整理も済んでいなくて交差点あたりには少ないながら寿司屋や、焼き肉屋や、スナックが点在していて、僕は毎晩のようにその時々馴染みになったそれらのお店で食事しては飲み歩いていました。
寿司屋には着流しの三味線流しが毎晩池袋から流れてきていて、30歳前の若造が、今から考えると生意気だったが、長唄などを謡ってもらっていました。

レズビアンを隠す事も無い二人が営むスナックでは、家庭料理をつくってもらっては、平井和正の狼男の話で盛り上がっていたものです。


その当時のスナック「キー坊」があったほぼその場所あたりに偶然のように「蕎すけ」はありました。講談社の向かい、通りを隔てたビルのテナントの中に入っています。
テナントのガラスドアの制約を受けながら、打ち場や入り口に小さな遊び場を作って工夫してあります。
店内は茶のトーンの配色を基調にして落ち着いて過ごせるよう、ゆったり席がレイアウトされています。



野菜の三点セットをまずオーダーしてビールで喉を潤します。時期物のじゅんさいと胡麻豆腐やせりのおひたしが来ます。
胡麻豆腐はトロンとして胡麻の風味が格別です。

              
                               
           (野菜は、左がせり、右が空心菜、下がじゅんさいと胡麻豆腐の三点セット)
                 
料理は鴨ロースハムサラダ、蓮根饅頭の餡かけを追加して、早めに蕎麦を一枚入れてもらう。

(生ハムのような鴨肉とサラダの組み合わせ、トロンとした食感の蓮根饅頭)

                喉越しのよいせいろ

料理の箸休めに水茄子と京おお瓜の漬物を取りました。京うりがとても品がよく、水茄子も二人から美味い、美味いの声が上がった。

とうもろこしの掻揚げは
サクサクしてよい食感、油落ちがよく、軽めの天ぷらになっている」
「一夜干しの鮎焼き
生には無い甘い身になり、塩加減が抑えられている」
「鳥の塩焼き
レアな焼き加減でジューシー、塩は少なく抑えていただいた」
「京おお瓜と水茄子
甘味噌が添えられていて、これは直ぐに消えてしまいました」

「その時、僕は二人のレズビアンの愛読書の池波正太郎と僕の愛読書の平井和正全集と交換しあった」
「交換した本に、またそれぞれ嵌ったわけですね」

京きつね刻み蕎麦
小分けで3人で頂きましたが、出汁の美味しく、豊かなあじわい」

時間が迫って〆は僕は京きつね蕎麦にしました。これまで随分「大川や」さんに 行ってますが、気が付くと温蕎麦は食べてはいません。
この出し汁が美味くて、小椀に分けていただきましたが、これは一滴も残さず食べてしまいました。
出し汁が濃く、薄口醤油で関西風に仕上がっています。これからは、大川やに行っても温蕎麦は是非物になると思った。


「で、そのレズビアンの夫婦は?」
「平井和正の狼男の永遠のマドンナ、“青鹿”先生の名前を店名に変えて改装して暫くここで営業をしていたが、女同士で結婚してどこかに消えた」
「なんか嘘のようなお話」
「今日は二合だから、嘘はつかない」
「三合だと」
「いよいよ、嘘が混じりだしてそれが本当になる」
「次回は、三合呑んで頂いて、その嘘を楽しみにしてます」

僕は二人を見送ってタクシーに飛び乗った。
「蕎介」のガラスドアに張られたメニューや打ち場を覗き見て、女性が携帯で誰かに連絡していた。女性1人で入って、友達を待てる店なら大丈夫かも知れないと思った。

笊そば 蕎すけ(きょうすけ)
文京区音羽2-4-2 ノーブル音羽1F 
03-3941-3377 11:00~15:00/17:30~22:00 (土曜)11:30~21:00
日曜祝日定休

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案山子 芝  蕎麦屋には効用がある

2008-06-20 15:53:39 | 銀座・新橋・芝・築地・港区・中央区・墨田
案山子の裏手は、芝大門あたりから途中切れ目はあるが、長い商店街です。
お店の裏あたりは、マンションがいくつかあってスーパーもあり、生活圏が一塊になっている。
店に入る前にこのあたりを散歩すると、すぐ裏手に中華店が新規開店している。ほんの50メートル範囲に中華料理屋が5店ほどあって、少しかたまりすぎではないかと驚いてしまう。

大門あたりは、高名な老舗が2店ほどあって、やはり街としては中華料理屋が目立ちます。テナントオーナーが貸したくない店のベストスリーは、焼肉、中華、イタ飯屋と聞いています。油っぽくて、ビル自体が汚れるのと、排煙で近隣の人からの苦情があるせいです。
だからどうしても、借りやすい、借りにくい地域ができて、固まってしまうものらしいのです。



案山子の内装は白ベースで清潔感があります。この日は、最初の客でした。ご亭主としばらく内装の仕上がりや、設計の仕様などを聞いてビールの肴にしました。
悪い癖で、すぐに設計のことだとか、費用の概算などを見積もってすぐに質問してしまう。
ご亭主はあまり隠すことも無く答えてくれます。こじんまりしたビルですが、天井に高さがあって、その高さがあるから白を基調にした設計が映えるのでしょう。

鶏ときのこのうま煮

設計の基調は亭主にすれば自分の表現や主張になるし、それが上手く客に伝わって欲しいと思うものです。料理は一品を除いて毎週のように変わります。常連がかぶの茎味噌チーズを定番にしてしまったのです。
この日は一人なので、新しいものをオーダーしました。ゴーヤと水菜のサラダは、これは面白い趣向がありました。

ゴーヤと水菜のサラダ

ゴーヤのストレートな苦味と水菜のあっさりめな歯ごたえにからめたソースがいい味で、箸をすすめるとジャガイモが下から現れます。ジャガイモの甘みと、ゴーヤの苦味がいいバランスにしてあります。
常連さんが一人入ってこられたのでバトンタッチです。この日は珍しく疲れ気味で、早めに蕎麦を手繰って引き上げに掛かりました。

いつもは浜松町のオフィスから歩いてくるのですが、この日は田町海岸通りから、田町駅を抜けて三田のほうから案山子まで歩いてきました。
40分は歩いたかもしれません。ついでにこの商店街を歩き見たので、そうとうカロリーオフになって喜んではいたけど、疲れがどっときました。
こんなときの蕎麦は、特に美味しいですね。つゆは清冽です。つゆに不思議なほど軽みがあります。



たらっ、と重くなっていません。初回に来たときにそれを質問したら、醤油の返しの比率は多いほうだと言う。雑みが無く、出汁の鰹の煮出し方に秘訣があるのかもしれない。鰹を料理屋のように2回に分けてしかも種類を変えてあるかもしれない。
そんな風に想像をめぐらせるつゆです。そのつゆに凛とした蕎麦がとても似合います。外に出た。疲れが不思議なほど抜けていた。
蕎麦屋の効用かもしれないと思った。

案山子(かかし) 前回の記事
港区芝2-12-9 03-6272-4416 
 11:15~14:00 17:15~21:00(土曜12:00~15:00)
定休・土曜、祝日

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松翁 猿楽町 客には見えない、いろんな仕事 

2008-06-18 12:37:33 | 神田・浅草・神保町・猿楽町周辺・新宿区

久しぶりに「松翁」のランチです。
この日は暑かったので、冷たいそばに決めていました。ビールをいただいてそば味噌をちびりちびりとやります。ここのそば味噌はピリッと辛くてビールがするする喉に入ってしまう。
天ぷらは二種類あって、穴子と海老を中心としたものと、旬物魚などを中心としたものがあります。

薄衣で稚鮎が泳いでくる

僕は稚鮎とキスの旬物の天ぷらをオーダーしました。和紙に墨文字に書かれてた日本酒の名前が柱の桟にあります。
あれが、無くなった、あれはまだある、と目で追いながら次回来たときに呑むものをもう算段しています。
これはご亭主が書いているのだろうが、その墨文字が呑んでくださいとばかりに踊っていて、追加しそうになって気持ちを抑える。

 そら豆はほっくり  
             キスは肉厚

稚鮎が来ます。今日は天ぷらのコースでビール一本で我慢することに決めた。キスは身が厚くて、ホクホクの甘みがあります。
衣と揚げ時間のバランスがよいし、ご亭主が油落としのステン皿にいれて、席まで運んできてくれる。

甘いとうもろこし            アスパラは肉厚


「とうもろこし、甘いね」そう言っても、
ご亭主は、そうですか、というくらいしか言わない人です。
静かに淡々とすごい仕事をする人なんでしょう。
アスパラも芯が柔らかく肉厚です。
そら豆はこの時期に焼くのもうまいのですが、こうやって揚げ物にすると豆独自のさっくりした噛み心地が堪らないですね。



2色盛りは、茶そばとせいろです。この日は二色は小盛りにしてもらいました。
このところダイエット効果が出てきて、何とか維持を考えてるわけです。ゴルフのスイングも腰が回るようになって、秋に向けていい感じになってきました。
それと、初めて「うすくち」つゆにしました。
つゆは「こいくち」と「うすくちが」が用意されています。一般的に老舗蕎麦屋で用意されるのは「辛くち」と「甘くち」です。


淡くちと白醤油で作るつゆ、透き通って綺麗

松翁の「こいくち」は老舗で言う「辛くち」にあたります。うすくちは「甘口」にはあたりません。それは、今日一口飲んでみて初めてわかりました。
それは、松翁独自の考案したつゆです。醤油は、淡くち、もしくは白醤油ですから、むしろ塩分が多くなりますから舌に響くのは醤油の塩分です。
もちろん、しよっぱいものではありません。関西風のだし汁の薄味にヒントを得たつゆなのでしょう。



茶そばなどはなかなかこのつゆにあいます。せいろもきりっとした味でこいくちのものとは違ったよさがあります。
蕎麦屋開業の折は当時としては相当な冒険だったのではないでしょうか。
水槽に旬物を泳がせる。天ぷらをパタパタ席まで運んでくる。うすくちのつゆを創る。
まだ、その他僕らには見えない色々な工夫と仕事があるのかもしれない。

僕は、厨房で忙しそうにしている、髭の濃いご亭主の姿を追いかけて、冷めないように鉄瓶に入った、蕎麦湯をその透明なつゆに注いだ。

手打蕎麦切 松翁
東京都千代田区猿楽町2-1-7 03-3291-3529 11:30~16:30 17:00~20:00(土)11:30~16:00 定休・ 日、祝  前回の記事

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松玄 恵比寿  マニアを戸惑わせる空気

2008-06-16 21:48:10 | 根津・大塚・文京・品川・目黒・渋谷・中野

僕の考えてた「松玄」のイメージが違っていた。
六本木「松玄」しか知らないので同じような店を想像していた。やはり、ここは恵比寿です。
このところ恵比寿に何回か来ていますが、週末の賑わいぶりは大変なものがあります。恵比寿界隈にはこの他に「翁」、「坂」、「香り屋」、「慈庵」、「玉笑」など、それぞれ蕎麦屋として皆違う顔をしているのがおもしろい。
慈庵を除けば、予約限定の翁、フレンチを特色にする坂、蕎麦の量の少なさに驚くという「玉笑」など、ことごとく何かに突化した店ばかりです。

その中でこの松玄と香り屋、この2店が今の恵比寿の飲食店の層を代表しているのではないかと思います。
香り屋は松玄よりはやや年齢の低い層をカバーしています。それと、この香り屋、翁、松玄は深夜まで営業しているから、これは今の恵比寿的なものに営業スタイルを合わせてあります。
松玄のお店の規模に驚きました。客数の収容はニューウエーブ系の蕎麦屋では一番ではないでしょうか。

スープを楽しむ水キムチ

ざっと、目分量で70席はあるでしょう。この日は週末とはいえ僕らが入ったのが8時半過ぎで席が満席です。平日深夜5時までの営業だから、松玄の客単価を想定して3回転で計算すると、売り上げは手打ち蕎麦屋のレベルをはるかに超えてしまうでしょう。
カウンターのボーイさんたちはワイヤレスマイクで注文受を厨房に流します。オペレーションは大きなカフェレストラン並です。


料理は六本木と構成はよく似ていますが、当然客数の多さに比例してバリエーションが豊富です。六本木でよく食べる水キムチ、焼き物でそら豆、お造りはサザエ、煮物で肉大根などを頼む。
経営母体がお寿司屋さんですから、生ものや料理はベースとしてすでにあります。そこに炉辺焼きと蕎麦を組み合わせたお店にしてあります。

寿司屋が母胎だから造り物が美味い
サザエは腸を湯通しして
食べやすくしてある。褄や薬味、飾り花が美味しさのアクセントに

松玄グループは必ずしも蕎麦屋に執着しているわけではなく他分野にも進出しています。まだ訪問してはいないのですが、銀座のほうはもっと寿司屋色を強めてあるのではないかと思います。
ニューウエーブで多店舗展開は、黒澤が先行しましたが今ニューヨークへの進出で足踏みをしています。

本むら庵はすでにニューヨークを引き上げて六本木に新装開店で新しい道を模索し始めました。また、市ヶ谷の「大川や」は護国寺に新店舗「蕎すけ」を開きました。
ここには近々行きますが、多分「大川や」兄弟店といった色彩が強いのではないかと思いますし、そう聞いています。
同じニューウエーブでも松玄と大川やでは立地戦術自体にも大きな差があります。これは蕎麦屋の概念に違いがあるから当然なことなのでしょう。
焼き物は松玄の売り物

一方が飲食業態多店舗展開を狙っているのに対し、一方は蕎麦屋多店舗展開をしようとしている違いがあります。単純にいうと飲食ビジネスと蕎麦屋ビジネスの違いです。
恵比寿も六本木も我々ブロガーの写真がよく撮れません。カフェバーの光量位しかありませんから撮ってもブログに掲載するには失礼な写真になってしまいます。
このライティングでは少し手振れしたらもう駄目だから困る。
この日も、肉大根や、空豆などの写真がよくありません。

  蕎麦掻はやや固めに練ってある


六本木の松玄へある蕎麦マニアをお連れしたのですが、あまりよい反応はありませんでした。
決して料理も蕎麦も不味いわけではありません。かなり高いランクの料理と蕎麦であることはその人も認めました。
だが、その人は楽しそうではありませんでした。蕎麦マニアを相手にはしていない、そんな空気をその人は感じたのではないかと僕は思います。
この日お連れした蕎麦好きな方も余り楽しそうではありません。なにか、マニアを戸惑わせる空気があるのかもしれません。

それが、いいとか、悪いとかを論じるつもりはありません。マス志向すれば、それは必然的な結果になるのだということです。蕎麦を中心軸にするか、蕎麦以外のものを中心軸にするかで客層は変わってくるし、ビジネスのあり方も変わってきます。
渋谷の「清山」にも松玄と僕は同じものを感じます。しかし、松玄は中心軸に寿司料理の機軸があって回転はスムースです。

従って、清山には形しかみえないような危ういものを僕は感じます。それは危惧に終わればそれでいいとは思いますが。
田舎蕎麦

連れの方が田舎が好きなので、二人で蕎麦を一枚食べることにしました。特別そう伝えなくてもつゆは二つきます。
気配りなどオペレーションは万全で、厨房との連絡も密です。渋谷の衛星スポットとして恵比寿は飲食が異常に繁殖しているように思います。それは集まってくる人たちが、これまでの繁華街とは違うものを無理やり探そうとしているのではないか。
それをまた与えるほうは一種のマジックでその場を演出している気がする。
ここでは、スタンダードなものとは違う、何か別なものを極端な形で身に纏わないと生き残れないのではと思います。

松玄東京都渋谷区広尾1-3-1 03(3444)8666
11:30~27:00 11:30~24:00 (日、祝)
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彼女のカレー饂飩はミルクで薄める

2008-06-14 22:38:35 | ランチ

巣鴨に来たので『古奈屋』によった。13時は過ぎていたので一組くらいが待ちです。
この日は久しぶりに暑いので、食べる前からカレーの匂いに反応して汗が出る。80代のご婦人3人と横並びになった。
ここは、お手拭と前掛けが出ます。カレールーのはね汚れを防ぐためです。フロアの方が、そのご婦人方の前掛け紐を背中で結んであげている。

前掛けが用意される

とげぬき地蔵の裏手にあるから年配の方の対応には相当な配慮が見える。ここらあたりは六本木ヒルズにある支店ではわからないものがあります。
牛コラーゲンカレー饂飩という魅力的なメニューがあった。ここは海老フライカレー饂飩が定番で、これは一度六本木支店で食べたことがある。

牛コラーゲンンカレー饂飩               コラーゲンを入れて溶かす


饂飩はカレールーによく絡みます。ルーは辛味も甘味もじわーと押し寄せてきます。一言で言えばマイルド、牛乳で味を作ってあるので尖った辛味が舌に刺さってきません。
多分、傑作の部類のカレー饂飩ではないでしょうか。

カレーとラーメンは論評が難しい。それぞれ皆さんの中にベストチョイスがあって、特にラーメンを語りだすと一時間はそれで議論になることがあります。
ただ、僕はラーメンは埒外で、年に決まったところで数回食べるくらいですからその輪の中に入る資格がありません。
カレーはラーメンよりは自分の中ではまだ愛着があります。第一ホテルのチキンカレー、資生堂パーラーのビーフカレー、今は京橋のドンピエールの野菜カレーが都内では僕のベストスリーでした。

ルーによく絡む饂飩

でした、というのはすでに第一ホテルの名シェフはもう亡くなられていませんし、資生堂パーラーはビル自体が改築してその間のブランクがあって、カレーのルーの味が変わりました。
かつて鰻の名店が改築する時に、その間も鰻のタレを作り続け鰻も細々ではあるが作り続けていた話を聞いたことがあります。
そのくらいルーやタレは継続していないと味が変化してしまうものなのでしょう。

「辛ければ、ミルクを入れて、やわらかくして召し上がってください」
高齢のご婦人方には、ミルク入れがそれぞれついてきます。お二人の方がミルクを入れて味を調整していた。
確かに高齢の方にはカレーの辛さが強すぎる事もあるのでしょう。僕は反対に辛味調味料を足してしまう。
               スパイスを入れてさらに辛味を強くする


これも途中から入れるとなかなか辛味が増して楽しめます。最後はカレールーの残りに茶飯を入れます。
茶飯に生姜のみじん切りが付いてきて、これも極めて日本人的な味付けになり、ご飯カレーの別の味わいが楽しめます。
ご婦人たちにカウンターから、調理人がご飯に付いている生姜の意味を説いている。生姜が入れると爽やかな味になるが、香りが立って強すぎる方もおられるので少しずつお試しください、との注意だ。

茶飯と生姜を残りのルーに入れる


古奈屋が開店時は6席しかない小さな店で評判を取ったという。そのとき以来の客とのやり取りが彷彿としてきた。
やはり、本店に来てみないとわからないこともある。
「お宅のカレーは美味いわね」
僕が勘定を済ませるとき、そんなような声が背中に聞こえた気がした。

店の前で彼女たちと同じような年齢の方が二人店に入るか、入るまいか、迷っていた。なるべく、入って欲しいな、と僕は2度ほど店を振り返っていた。

古奈屋 カレー饂飩の店 とげぬき地蔵裏

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この世のものとは思えない、美味なる思い出

2008-06-11 15:59:42 | その他


イタリア料理でオフ会になった。これまでは蕎麦屋、和食が多く、その中で前回も変わったお店でネパール料理があるが、今回も珍しい。

山の上ホテルは、酔流亭がひいきのホテルで、それは彼が愛する作家の池波正太郎の影響だと聞いている。池波はこのホテルを基点に神保町、小川町、神田界隈の蕎麦屋や料理屋に訪れては小説の構想を練っていたと伝聞にあります。

「シェヌー」は南仏料理と書いてありました。イタリア料理なのに「シェヌー」はフランス語ではないかとどなたかが指摘されましたが、南仏だからそれは正しいことになります。
この日は久しぶりに花まきさんが参加してフルメンバーになりました。
佐平次さんはこの雨の中でもお風呂に入ってからの参加ですから、ワイシャツが汗びっしょりです。気持ちのいい汗なんでしょうか、当人は平気です。

前菜もバランスがよい

瓶ビールを二本とって、ビール注ぎ名人の佐平次さんに8個のコップを預けます。あとは髭彦さん、naoさん、YUKI-archさんとその友人の方です。前菜が目の前に並んだ頃は、ワインになります。
ワインはイタリアのものは価格が安心です。これがフレンチになるとワインリストをめくる手が震えますが、すっかり安心して白を2本同時に注文してしまいました。
地中海料理の前菜などにはイタリアンのスッキリしたさらっとしたワインがよく合います。合いすぎてクゥ、クゥと飲み過ぎるのが難点です。



パスタは僕などの年齢にはこの程度のあっさり目が嬉しいです。特に浅蜊はワインでさらっとひと煮したものをあわせてありますから、身がぽっくりして美味しいです。
特別高価な食材を使ってはいないのですが、その食材はよく吟味してあります。
パーティ料理にありがちな手抜きがありませんから、皆さんの胃に瞬く間に消えていきます。

ハーフ&ハーフのピザ

山の上ホテルの横は僕の母校で、このホテルも思い出の場所です。ラーメンが50円、居酒屋の燗酒が70円の時代で、下宿生活ですから、普通にはこのホテルの料理屋にこれません。
そこはよくしたものである文学博士の教授の鞄持ちをしていましたから、月に一度か二度、ご相伴に預かっていました。
鞄持ちなんか今から想像が出来ないでしょうが、この時代は結構あったんです。先生にすれば苦学生へのボランティアのようなものだったんでしょう。

山の上ホテルで食べる天ぷらは、当時はこの世のものとは思えないほどの美味しさで、天ぷらの前に出る前菜や箸休めの食材は食べた事の無いものばかりでした。
酒が飲めない代わりにコーヒーを水代わりに飲んだ先生で、もっぱら飲み役は僕になっていました。
今も、このホテルは僕にとってはその先生との思い出の場所で、特別な一角です。

あま鯛のソテーが出色

赤ワインは、一時代前キャンティクラシコとして売られていたもので、いまはアンティノリロッソといいますが、多品種ブレンドの良さを生かした品の良いのみ口です。
今日の料理で一番はあま鯛のソテーでした。皮がパリンパリンに焼けて、身が柔らかく、上手にフランベしてあって、バターではなくオリーブで仕上げてあるので食べやすいものになっていました。

皆さんのとりあえずは元気な顔を見れて、まずは楽しいオフ会になりました。この場所を選んでいただいた酔流亭にブログを通じてお礼を言わなくてはなりません。

山の上ホテル 別館 シェヌー

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佐賀生まれの生肉は、田端に限る

2008-06-10 11:47:16 | 今週のひと品
6時半頃に「伽羅」の前に着く。もう本日は満席です、の張り紙があった。
入り口を開けると、客はまばらだが、各席には予約を示すものが並んでいた。会議が案外早く終わってしまい、前々から仕事のやり方などや整理の仕方を飲みながらやりましょうとの約束があった。

この日を逃すとなかなか僕も日程が取れないし、連れの二人も時間が合わなくなってしまう。
少し前ママからブログにコメントを入れていただいた。そのときに、お勧めの料理を書き込んでいただいていた。それをまずオーダーしようと思っていた。もちろん、まだ僕が、何者であるかは伽羅のママもわかってはいない。
左、佐賀牛大トロ 右、佐賀馬肉大トロ 上赤身馬肉


佐賀牛肉と佐賀馬肉の大とろの刺身です。赤身は馬肉でその前の白いものは脂身のスライスカットです。
刺身やそら豆の焼き物、野菜サラダがテーブルに並ぶ頃、予約客が入りだす。ここは女性客が4割くらい、居酒屋としてはよいバランスです。
メニューの数が豊富で、この大とろ刺身のような特別メニューが入ってきますから人気もあります。

冷酒は、これも特別仕入れのものを3本くらい一升瓶で持ってきてくれて比較説明をしてくれます。
僕のほうは、その3本を順にもらう羽目になります。
牛トロ                      馬トロ


さて、佐賀牛は肉に甘みが含まれていて噛むと柔らかく肉がつぶれて甘さが散らばりますね。
反対に馬刺しは、トロですがしっかりとした噛み応えがあります。
だが、さらに美味いのは馬の赤身肉です。いやみの無い旨みがしっかりと舌に伝わって、噛めば噛むほど肉の甘さが口いっぱいに広がります。

赤肉は脂身を乗せて

これは、脂身のスライスカットを乗せると、贅沢な味わいになります。途中、ママが挨拶に来てくれる。
途中給仕の方に名刺を渡しておいた。酒はもうこのころには、日本酒3種を飲んで二順目に入っていた。明らかにこれは飲みすぎでした。
賑やかな店で頂く料理は美味しさがプラスされるかもしれないですね。

伽羅 東京都北区東田端2丁目3-10   03-3892-0036 前回の記事

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川むら 日暮里  糸を意図的に張りめぐらす

2008-06-09 12:25:52 | 世田谷・杉並・練馬・北・荒川・豊島

日暮里に「川むら」という蕎麦屋があった。
看板に生蕎麦と書いてあったので不安だったが、この風情は手打ち蕎麦屋のものだから思い切って入ってみた。
お昼から夜の通し営業だし、古い店のような気がしたがなかなか隅々まで綺麗でメニューの木札も好きな感じです。
何か肴と思い、玉子焼きを見ると、生青海苔巻きというのがあってこれにした。玉子焼きは定番の出汁巻きにと他に変わったのでは青唐辛子巻きというのもある。


この玉子焼きは一人前はたっぷりあって、かなりの量の青海苔が入っている。甘みと青海苔の香りのバランスがよくビールがすすみます。
あっという間にビールを飲んでしまい、日本酒を追加した。お昼からこんな事は神田「まつや」くらいなもので、すっかり憩おうとしている自分があり、休日気分の自分が可笑しくなる。
                          生青海苔がたっぷり入った玉子焼き


僕は元来玉子焼きに弱いのだが、どうもその玉子焼きひとつで、すぐにコロリとやられてしまう。客はそうやって何かひとつ、自分の中を左右するもので、その店のファンになるもののようだ。
その決定するものに細い糸を張りめぐらせては、網に引っ掛けたほうが勝ちというわけです。



蜘蛛の糸は一見無駄のようですが、意図的にやれば、その努力は必ず報われるというわけです。
日本酒はこれは嬉しくなるほど沢山あって随分迷った。その中で蔵元直送樽詰、生酒。いやに長い説明文が付いたものがあって、やはりこんなうたい文句のものに弱い。その「喜楽長」を一合頼んだ。

樽詰め、生酒「喜楽長」

このあといくつかの打ち合わせがあるから、口に香り物を含まないといけない。
「もりも食べるから、野菜だけが欲しいのですが・・」
肴は天ぷらのもり蕎麦の天ぷらを先にもらおうと、オーダーした。出来たら野菜だけのものをお願いしたかったので、フロアの女性にその旨を告げた。
もちろん、メニューには海老だとか魚も一緒に付いていて、野菜だけの天ぷらは無い。客の我が侭なんです。



厨房から女将らしき人が出てきて、野菜の種類を挙げて、それでよければと揚げてくれることになった。これは、有りがたい。少なからずカロリーオーバーを避けることが出来そうです。
喜楽長は香りが良く、やや酸味があり、、まろやかな甘味を含んでいて、僕の好みの日本酒でした。これは、早く天ぷらが揚がってきて摘みたくなります。
玉ねぎ、椎茸、人参、ピーマン、カボチャの天ぷら


天ぷらは油の通りがほどよく、野菜が蒸し揚げのようになっていて、普通にある野菜ですが、これは美味しいですね。
野菜は油を最後まで通さず、野菜の芯の甘味を楽しみたいものです。
蕎麦が来ました。極細の部類に入るかもしれません。細い蕎麦は水落ちが悪く香り立ちが少なくなります。その代わりに喉通りが繊細で微妙なものを与えてくれます。



言ってみると、この細い蕎麦は、フワフワした食感なんですが、酒を飲んだあとの蕎麦には一興があるかもしれません。
蕎麦の香りも弱いながら感じさせてくれました。レジの奥に田舎蕎麦と書かれた紙札があって、帰りにそのことを聞いた。
「今日は無いんです」
田舎蕎麦は今日打たなかったようだ。
「いつならあるんだろう」
「さあ・・」
「いつあるかわかるといいが」
しつこい客になっていました。どうやら、ご亭主は気まぐれにその田舎蕎麦を打つようだ。従業員もはっきりとは答えられないようだ。

いけない、どうも、お店が張りめぐらせた糸に知らず知らずに引っ掛かったようだ。こうなると、もう後戻りが出来ないですね。
勘定を済ませて店を出た。ビールと冷酒一合飲んだ割には存外酔いが回ってない。この後の会議の事があるので、そう自分で思う事にした。
さて、次回は夕方2杯日本酒を飲んで、その気まぐれに打つ田舎蕎麦の日に当たりたいものです。

川むら
荒川区 西日暮里3-2-1 03-3821-0730 11:30~20:00 木曜定休

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たじま 西麻布  ビジネスに滋養

2008-06-07 22:48:55 | 麻布・六本木・赤坂・白金周辺・千代田区

お二人とも僕より年齢が上なので野菜がいいだろうと、勝手に予約した。
ビジネスランチを「たじま」でする。それに、あれ以来蕎麦も楽しみになってきた。あれ以来と言うのは、yukaさん、そば箸さんたちとの蕎麦会でたじまの蕎麦が様変わりしていたから、もう一度来たいと思っていた。
今日の蕎麦の産地は筑西市と和紙に書いてあります。花番さんの給仕テーブルは厨房の前のセンターにあって、そこに張り紙があるので、蕎麦の産地が一目でわかるようになっています。

築西市(ちくさいし)は合併で生まれた新市です。茨城は県政で合併を推し進めている。我々がよく金砂郷村(現在は金砂郷町)と言っている地名も厳密に言えばもうありません。
猿島といった風変わりな名前も坂東市に編入して名前がなくなっています。たじまさんがよく使用する蕎麦産地の堺町はその猿島から少し行ったところにあります。

野菜が三点

ランチコースは、野菜が5点用意されていて、そこから3点選びます。さらにメインディシュは4点用意されてそこから一点選びます。
フレンチなどにあるようにチョイススタイルだから、週に2,3度来ても飽きないようになっています。
僕はつるむらさきのおひたし、インゲンの黒胡麻和え、胡麻の寄せ豆腐を選びました。
つるむらさきはベーターカロテンを含みこれはひとつの夏の健康野菜というものです。インゲンはビタミンA,B,Cとも豊富に含む夏野菜の代表的なものです。
これとリノール酸、ビタミンEを含んだ黒胡麻は相性抜群で、日本人はなんとよい組み合わせにしたと驚きます。
つるむらさきのおひたし
インゲン胡麻和え
            
           胡麻寄せ豆腐 

それに、美味しさも格別で胡麻の甘味とインゲンのしゃきっとした歯応えが口中に刺激的です。
僕はビールを頂いているのですが、後のお二方は飲めない口です。お1人は体質的に、もうお1人は今は飲まれない。
それを思うと僕は幸せです。酒が無くてなんの人生かとは、大袈裟ですが、蕎麦屋で蕎麦を手繰る箸の横に徳利を置いていたいものです。

野菜の天ぷら

だが、お酒をいけない方達も夏野菜のおもてなしにはかなりな満足があったのではないでしょうか。
この日は山芋の饅頭揚げがとても美味しかった。饅頭はたじまさん得意の料理で、前に頂いた穴子の寿司饅頭や、蓮根饅頭は定期的に出していただきたい料理です。
           山芋饅頭揚げ


この山芋饅頭は摩り下ろしにひと工夫してあって、微妙な食感を与えてくれます。甘味や苦味や辛味という味覚も大事ですが、食材の持っている食感の妙を味わうのも大きな楽しみのひとつです。
饅頭の摩り下ろしにもひと工夫があるから、それはお客を楽しませる事になります。コース料理の場合、蕎麦は最初半盛りくらいのもりが来ます。



確かに産地は変わったのですが、もりはやはり僕が思っていたようなものになっていました。肩の力が抜けた、蕎麦はほどのよいこし、香りも鼻に抜けました。
あとは、普通はかけそばなのですが、三人はもりを追加にしました。
蕎麦の美味しさを批評しながら、ようやくいくつかの案件を3人が片付けます。ビジネスランチはよい蕎麦があるとはかどります。
ビジネスにも夏野菜の滋養が必要になりますね。

たじま 
港区西麻布3-8-6 03-3445-6617   
11:30~14:30 17:30~21:30(祝20:30) 定休・日 前回の記事 

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讃岐饂飩 根の津  色白肌の発色  

2008-06-05 09:21:46 | ランチ

火曜は根津が軒並み休みです。
「よし房」に久しぶりに行こうと、雨をついてお昼に急いできたのですが、定休日です。ならばと「鷹匠」に回るとこれも定休です。
自分のうかつさにがっくりで、このあと、どこか蕎麦屋と思ったが、時間が1時くらいなのと雨が強いので行く気がしなくなりました。

根津神社に2,3回行った折、手前に行列のある饂飩屋があったのを思い出しました。神社の方角に歩き出した。店の前「根の津」に雨の中一組待っています。
当然中でも待っているから、諦めようとした時、戸口を開いて、2組くらいが帰ろうとしていたので、辛抱強く待つことにしました。
       左が温かい若芽饂飩 右が冷たいぶっかけ饂飩
       

讃岐饂飩「根の津」名前がイージーすぎる感じもしましたが、これだけ並ぶのだからその評判を試したくなりました。いくつかの饂飩特集で雑誌に取り上げられたのでしょう、その雑誌の表紙と中身が切り抜きで飾られています。
まだ、比較的新しいお店に見えました。待つこと10分、ようやく案内されてお店に入ると、18席のこじんまりしたお店です。

2色饂飩で冷たいのはぶっかけ、温たかいのはわかめにしました。讃岐饂飩は、やはり生醤油かけか、ぶっかけでしょうね。客はほとんどが若い人です。このあたりは若い人が多いのか、それとも年齢が高い人は雨の中ここまで来るのはおっくうなのでしょうか。
女性で年齢の高い方はいますが、男性で僕くらいのものはいません。
お店の造作がそうだし、はたまた、このメニューもおじさん向きではないのでしょう。これが一番の理由かもしれません。
相席の前の人に運ばれてきたものを見たら、こちらでは、冷と温饂飩同時に運ばれてきています。このあたりが伸びやすい蕎麦と違います。



温かい蕎麦からいただきました。つるつるしてはいますが、その塩味が強調された出汁にからんだ麺は意外とこしが中庸でした。
それに反して、ぶっかけの麺はかなりの歯ごたえで腰が強く、麺のやや塩味と甘みが噛むほどに旨みに変わって、喉越しがいいです。
熱いつゆにつけただけで、まったく違う麺になってしまうのですから、饂飩も熱汁変わりしてしまうんですね。



饂飩でこうですから、蕎麦の味覚が変わってしまうのはもっともなことだと思いました。どちらかというと、讃岐はやはり冷たいものが、らしい・・かもしれません。
冷たいものに生醤油だけ、もしくは温めた饂飩に生卵と生醤油がいいでしょうか。
つるつるは、他の饂飩のほうが楽しめるかもしれません。久しぶりの讃岐饂飩でしたが、この店は、本場の味にかなり近いかもしれません。
本場などと言ってしまいましたが、若い頃一度だけ饂飩の取材で高松に行き、いやというほど食べてきたので、麺のこしや、歯ざわり感を憶えていました。
それと讃岐饂飩は肌白が特徴で、白も小麦の独特の濃い発色が命です。
チェーン店には無い丁寧な客扱い、それに薬味なども手を抜いていませんでした。

讃岐饂飩 根の津 文京区根津1-23-16 03-3822-9015

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夢想庵 北砂  浮気な客たちの波浮港

2008-06-03 21:23:51 | 江戸川・江東・葛飾・新宿・大田区・足立区

住宅地の中に「夢想庵」はあります。
夕方、7時半過ぎています。少し様子を見ました。人の往来も少なく手前に何軒か飲食店があって、よほど物好きで無いとここまで蕎麦を食べに来る人は少ないでしょう。
しかし、蕎麦好きはどこでも来ます。現にこの僕がそうです。そんな客が多いほど蕎麦屋は繁盛します。


住宅を改造したお店でした。このところ住宅改造のお店が多くなってきました。僕が知っている範囲では、千葉の「いさと」、茨城の「暁山」、新百合ヶ丘「ichi」,都内では清澄白河「浅野」、目黒「紫仙庵」などです。
住居と一緒になっている蕎麦屋はそれだけ効率的です。お店に通う時間ロスはないし、疲れたらひと眠りができます。ある程度家賃の費用負担も軽減されます。

蕎麦屋は時間との勝負の一面が大きいですから、住居隣接だとそれだけ効率がいいわけです。夢想庵は一階部分がお店の完全改造です。住居の居間などを改造したものではなくお店と住居が分化されています。
反面、住居改造型の欠点は駅から離れて交通の便が悪くなることです。これをどう克服していくか、またこれをどう利用していくかが分岐点になります。

揚げ蕎麦は味付けをしてある

ビールをお願いしました。この日は一人なので肴も限られるし、蕎麦の種類も限られますから、心してオーダーしなくてはいけません。
定番の卵焼きと山芋の千切りをお願いしました。卵焼きはだし汁をたっぷりいれて胡麻油で焼き上げてあります。胡麻油独特のよい香りが立ちます。
               胡麻油を使い、出汁をたっぷり入れて巻いてある


出汁巻きで胡麻油を使うお蕎麦屋さんは意外と少ないものです。胡麻油の出汁巻きは、だしの量の加減で玉子の風味に勝ってしまう恐れがあるからです。ゴマの風味を取るか、卵とだしの風味をとるか、ごま油を使ったときの難しさがあります。
それは、天ぷらで胡麻油の使い方が難しいのと同じ理由です。
                山芋の千切りはかなり細かくして食感が楽しい


かつて蕎麦屋は隠れ家がひとつの売り物になった頃がありました。隠れ家のコンセプトは飲食そのものに取り入れられ、すし屋、料理屋、洋食屋にも広がり、いまもまだ一般的には通用しています。
蕎麦屋が作り上げたコンセプトがいまや業界を飛び越えてしまったわけです。逆に隠れ家的の表現的コンセプトだけでは、蕎麦屋が通用しなくなってきました。
しかし、今もなお、遠いところから客を引く力・・それが「手打ち」の恒久的なテーマであることには間違いありません。駅から遠い、この住宅地に蕎麦好きを引く。「夢想庵」もそうだし、そのほかたくさんのお蕎麦屋さんが遭遇している課題です。

特に住宅地の場合、オフィス需要が期待できませんから、遠方客を5割は想定しないと苦戦することになります。遠方客、これはまた浮気者で、その浮気者を扱うコンセプトが必要になります。
その浮気者達の回遊先の一つの波浮になればそれは成功を手に入れたことになります。

正確すぎるほどの切り

離れ孤島・・僕も蕎麦屋開業して3ヶ月した8月頃、そんな不安に陥った事がありました。隠れ家が、実は離れ孤島であったのではないか?商いは実はそんな不安との闘いでもあります。

正四角形の蕎麦

蕎麦はエッジが立ちすぎるほど立った、こしも弾力に満ちたものです。
大好きな飛露喜を呑みながらゆったりと過ごしました。
しばし、神田須田町の暗い路地に煌々とライトを焚いた「夢ハ」時代を思い出した。
それは、浮気な客たちの波浮港になれたのだろうか。

夢想庵
江東区北砂4-21-6 03-3646-7725
11:30~14:00 / 17:00~20:00 定休・日、月

『こだわり蕎麦屋の始め方』

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