Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

夏の湿原にて

2016-07-19 | 

 

西日本から東海にかけて一斉に梅雨明けが告げられた海の日でした。

この日は朝早く出発して、夏の湿原を撮影予定でした。

出来れば目覚めたばかりの瑞々しい湿原の空気感を撮りたかった。

それには、未だ夜が明けきらぬ時間に出発しないとね(汗)

やっぱり8時前出発では遅すぎる。

それでも午前中は過ごし易い。

ペダルを漕ぐ足取りも快調で、2時間くらいで風穴に到着。

しかし、今日の皿ヶ嶺は人出が多いなぁ。

市街地から最もお手軽な納涼スポットだからね。

山から湧き出る清水を利用した夏季限定の素麺流しに、岩間から冷気の噴き出る風穴がある。

さて、こんなに人気のある皿ヶ嶺の最大の魅力って、なんだろう?

山上に広がるブナの森。

春、夏、秋を通じて観られる花の山。

それらは他の場所でも大丈夫。

ここだけの固有の自然というと、やっぱり標高1000m付近に広がる湿原の存在だろう。

夏緑樹の森の中に、ぽっかり開けた湿原の解放感は、ここだけの魅力。

特に山上の湿原が希少な四国では。

 

さて、その湿原、竜神平に到着して驚いた。

以前から夏の花々の咲く頃になると湿原内に踏み込み花の撮影をする人が多かった。

それでも以前は、湿原内に踏み込むことへの躊躇(ためらい)があったと思う。

その行為が自然に対してダメージを与えることに対する罪悪感が。

ところが、今回(夏の花が咲く頃は5年ぶりくらい)は、傍若無人の惨状だった。

ここまで躊躇いもなく踏み荒らすか?という有り様。

私も東京在住の頃から20年来、山野草の写真を撮り続けています。

でも、ここまで花園を踏み荒らす惨状を見たことがない。

最悪の風景でした。

花の山として四国外からも多くの人が訪れる皿ヶ嶺です。

こんな惨状を目撃した人は、どう思うでしょうね?

本当に恥ずかしい。

根本的な問題は、山上湿原である竜神平に未だ木道が設置されない。

という事に尽きます。

皿ヶ嶺に登山者が訪れるようになってからの長い歴史を思うと、

何故?というしかありません。

あの尾瀬でさえアルピニズム黎明期は、浮島に人が乗るような写真も見られました。

自然保護運動の象徴でもあった尾瀬を皮切りにして、

日本国中の湿原に木道が設置されました。

(四国では黒沢湿原にも)

なぜ、竜神平だけは、そんな自然保護の趨勢から取り残されてしまったのでしょうか?

環境教育が当たり前のように行われている現在では、有り得ないような恥ずかしい風景です。

皿ヶ嶺リピーターの皆さん、マジで考えてほしい。

 

湿原内をぐるっと巡って、余りもの惨状に撮影意欲をなくしました。

一番手前のハンカイソウだけ湿原風景説明のため撮影。

さすがにギボウシはダメージが多すぎて撮影出来ませんでした(汗)

 

7/20 追伸、竜神平湿原再生保全計画のPDFファイルを見つけました。

この計画はおいわさんのHPを通じて知っていましたが、

こうして計画の詳細を知ると希望が湧いてきます。

しかし、木道設置は計画に盛り込まれていないのですね?

 


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7 コメント

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こころのまなー (misa)
2016-07-19 18:53:45
ギボウシの咲くころ数年前に一度だけ訪れた事が有ります。青いケシが目的だったのですが目の前に広がる花の宝庫に歓声を上げながら撮影しました。
確かに木道は必要だと思いますね。あれでは何処でも踏み込んでいいですよと言ってるようなものです。高知にもいくつか湿原が有りますが知られていないところなので木道はありません。でもマナーは守って踏み荒らす事は無いですよ。自分さえよければ・・・私もそうなのかもしれないなとふと思いました。
返信する
もっと早く湿原が保護されていたなら (ランスケ)
2016-07-19 19:56:53
竜神平は湿原ではないと云う人もいます。
愛大小屋脇から湧き出る泉は竜神平の外縁を辿り畑野川方面への流れる渓流の源流となります。
この湿原の北側にももう一ヶ所湿原があります。

もっと早い時期に、この湿原が保護されていたならと想像します。
図書館で調べると、昔はトキソウも自生していたとか。
黒沢湿原よりも標高の高いこの場所に、どんな植物が本来の自然環境の中で育ったか?
を考えると夢が膨らみます。

笹刈して分かったことですが、湿原の北側の川沿いまで幕営地として人が入っていたようです。
湿原は人が入ると裸地化して荒廃が進行します。
本当に最悪の湿原の荒廃化パターンの典型です。

今、読んでいる養老孟司の本によると昆虫相によって、その土地の本来の風景が分かるそうです。
欧州が文明化の過程で森林が伐採され昆虫相が貧弱なのと同じ様に、
西日本の自然林は風前の灯火状態のようです。

そこに咲く花は、その場所を選んだことには、それなりの理由があるのです。
生物は生存のための適所、ニッチをそれぞれが選択しています。
だから、その花を撮影するために周辺環境を踏み荒らすことは、
その花を撮影者の自己満足のために絶滅に追い込むことだと自覚してください。
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教育 (鬼城)
2016-07-20 08:31:52
 私たちが現世代の大人達を育てた責任もあります。
自然保護、環境教育、規範意識などなど・・・
それがだめなので、とってつけたような教育改革・・・
むしろ改悪かもしれません。
 国の施策など机上の空論似すぎない。
という理由は大臣にしろ議員さんにしろ現実を知らないからです。
湿原などの歴史文化自然遺産など、見聞きするのはできあがったお膳立てでしか無い。
皿が峰を愛する一人として何とかしてほしいですね。
返信する
湿原保全の現状 (ランスケ)
2016-07-20 13:24:45
皿ヶ嶺は県立自然公園にして指定されているので県の管轄ですね。
その上、環境省の「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」にも指定されています。

https://www.env.go.jp/nature/important_wetland/wetland/w428.html

鬼城さんからのコメントを読んで、さらに調べると、
竜神平湿原再生保全計画のPDFファイルを見つけました。
ブログ記事末尾に追伸として貼り付けましたので、ぜひ御覧ください。
この計画は皿ヶ嶺の案内人であるおいわさんのHPを通じて知っていましたが、
計画の詳細を見るのは初めてでした。
これは素晴らしいですね。

唯、湿原に踏み込む人の善意を期待することは間違いだと思います。
現に、どんどん人による荒廃が進んでいます。
やっぱり木道の設置が一番効果的だと思うのですが?
全国の湿原の保全状況を見れば、木道設置が原則のように見えます。

管轄が違うので的外れかもしれませんが、
風穴周辺の無用な木造施設や植樹を思うと竜神平の木道設置予算くらい問題ないと思うのですが?

皆さんの想いは如何でしょうか?

皿ヶ嶺の案内人であるおいわさんのサイトをブックマークに追加しました。
そして作成途上にある「皿ヶ嶺植物図鑑」も一緒に。
皿ヶ嶺情報は、おいわさんのHPを参考に。
返信する
あり得ない事 (misa)
2016-07-20 21:45:40
皿が峰と言えば自生してない花が出没し一時騒がしくなった事が有りますね
実は先日大雪山旭岳でのことですが本来は自生しないはずのコマクサが遊歩道わきに堂々と咲いていたのです
お隣の黒岳でないと見られない事は承知していたのですがほんとにビックリでした

失ったものは作ればいい、あり得なくてもどうでもいい
なのかなと画像を見ながら考えます
返信する
私たちが失くしたもの (ランスケ)
2016-07-20 23:31:27
misaさんは無事、北海道の旅から帰還しましたか?
北の夏を充分に楽しまれましたか?

北海道大雪山系なら緯度的にはコマクサが咲いていても不思議ではないのですが、
旭岳は観光化の影響で一度絶滅したのでしょうか?
木曽駒ヶ岳も一度絶滅したコマクサを再生しています。
アツモリソウの再生や尾瀬の湿地再生の努力には頭が下がります。

私は稀少植物が残っていることは、たまたま開発の手から零れ落ちた偶然だと思っています。
それを有り難がることよりも、一度人の手により絶滅した植物を再生し保全することの方が、
ずっと尊いし素晴らしいことだと思っています。

これからの私たちの仕事は、自分たちが便利さや快適さと引き替えにした負の遺産を
次の世代のために再生することではないでしょうか?
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旭岳のコマクサ (ランスケ)
2016-07-21 10:42:35
ちょっと気になって旭岳のコマクサを調べてみました。
ロープウェイを降りたところに不自然にコマクサが咲いているのかと?

ビジターセンター情報や環境省情報を見ても旭岳のコマクサが再生したとか絶滅したという情報は見当たりませんでした。
唯、有名なコマクサ平の群生地じゃなくても大雪山系にはコマクサが点在しているようです。
コマクサの自然分布を見ても、大雪山の砂礫地ならば生育していても不思議ではありません。
以下の散策記録がmisaさんの見たコマクサじゃないかと思えます。
一応、コマクサの生育する環境としては問題なさそうですね。

http://4travel.jp/travelogue/10482225

きっとロープウェイが開通して観光地化される以前の大雪山系なら、そこいらじゅうに咲いていたのではないでしょうか?
カムチャッカ半島の自然保護区に雑草のように咲く高山植物の姿から想像するとね(笑)
あれが開発が入る前の大雪あたりの本来の自然の姿だったのでしょうね。

皿ヶ嶺だって記録に残っていないけれど、もっとたくさんの花々が咲いていたと思います。
山裾の民家の庭先に咲くカノコユリなんて、きっと昔、山に咲いていたものを移植したものですよ。
石鎚へ行く途中の面河の民家にもカノコユリはよく見られます。
クリンソウもね。

もちろん本来、そこにないものを植栽するのは論外です。
でも私たち人の手によって消えた花なら、もう一度失われた美しい花風景を再生させたいですよね。
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