取手・医科歯科通信 山本 嗣信 (やまもと つぐのぶ)

医学情報社編集顧問
フリージャーナリスト

記事のタイトルを入力してください(必須)

2017年03月13日 10時48分48秒 | 医科・歯科・介護
だが、皮肉であった。
編集の夏木太郎が出版社を興し独立することとなった。
「五月さん、辞めないでほしい」と徹は懇願した。
「三島さんにはどこまでも、着いて行きたいと思ったけれど、社長の坂田さんには着いていけないのよ」
突き放すような五月の拒絶に徹は、頭を打たれたような気持ちに陥る。
「頼んでもダメなの?」
「そう、もうダメ!」優しいかった五月の瞳に剣があるように映じだ。
「この人に、これまであれほどまでに惚れたのか」徹は心が乱れに乱れ、自制を失う。
つまり、対抗心が生まれたのだ。
「絶対に業績を上げ、五月を振り向かせるのだ」と決意を固めた。
「前進、また前進」と米沢が徹のひたすらの邁進を評したのである。
僅か、1年6か月で、夏木太郎が興した出版は倒産した。
社に戻って来るものと期待していた五月は、高校生時代の彼氏と結婚して、築地の魚河岸に嫁いだ。
「三島さん、五月さんには彼氏がいたんですね。これも人生です」
「これも人生、失恋です」徹は自嘲した。
「失恋もいいではありませんか。三島さん、新たな恋のはじまりですよ」
バー「ロス」のママも結婚した。
相手は画家であった。
「18歳の時に、どうしてもと頼まれ、裸体の油絵のモデルになったの。その絵が二科展に初入選して、主人は私の裸を知っている唯一人の男だった」
米沢がママに会ってエピソードを引き出したのだ。
徹はママの裸体絵をどこかで観てみたいと思った。
その絵は、水道橋の歯科開業医の応接間に掲れていた。
歯科開業医が二科展の会場で、その裸体絵を見かけ購入したのである。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 密かに思いを寄せる人 | トップ | 諦めない心が勝利を生む »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

医科・歯科・介護」カテゴリの最新記事