降圧剤論文問題と研究不正

2016年02月26日 12時29分39秒 | 医科・歯科・介護
「逮捕されず安心した」KHS事務局の男性医師
虚偽報告への関与は否定


●ノバ社・府立医大論文改ざん事件、第13回公判

m3.com 2016年2月25日 (木) 配信 成相通子(m3.com編集部)
 ノバルティスファーマ社の降圧剤を巡る京都府立医科大学での医師主導臨床試験の論文データ改ざん事件で、薬事法(現医薬品医療機器法)違反(虚偽広告)に問われた元社員とノバ社に対する第13回公判が、2月24日に東京地裁(辻川靖夫裁判長)で開かれ、KHS(Kyoto HEART Study)の事務局を務めた男性医師の証人尋問が行われた。男性医師は白橋伸雄被告について、検察の取り調べを受けるまで「データを改ざんしていると疑ったことはなかった」と証言。KHS参加医師が虚偽の報告をしていたことについても、「知らなかった」と自らの関与を否定した。一方で、自らのデータ加筆については、京都府立医大教授の松原弘明氏の「プレッシャーがあった」と主張した。弁護側、検察側、裁判官が尋問した。
 男性医師は2014年5月から7月までに東京地検特捜部の取り調べを受け、21本の調書に署名。白橋被告が逮捕されたのは同年6月。弁護側は男性医師にかけられた嫌疑の内容を問い質した。弁護側は男性医師のデータ加筆が主な取り調べ内容とみて質問を繰り返したが、男性医師は「記憶が定かではない」と断りつつ、否定。当時の心境として、「自分も逮捕されるか心配だったが、逮捕されなかったので一安心した」と振り返った。白橋被告によるデータ改ざんも、検察官の取り調べを受けるまで疑ったことは無かったと主張した。
 男性医師はこれまでの尋問で、症例を判定するエンドポイント委員会で差し戻しとなった40の症例について、必要な追加調査をしておらず、学会の発表に間に合わせるために加筆したと証言(『男性医師、イベント発生となるように加筆?ノバ社側尋問』などを参照)。弁護側は加筆が60症例に及んだと指摘している。
■加筆の報告、「忘れる」
 弁護側は、男性医師がデータ加筆を「辛く忘れたい出来事」としながら、調査委員会に報告しなかった点を疑問視した。男性医師は、2012年12月の日本循環器学会による最初の調査委員会で、統計解析を自身がやったと虚偽の説明をしたが、2013年4月の再調査では、「松原氏の命令で本当のことが言えなかった。真実を全て話す」と涙ながらに謝罪し、「統計に関しては白橋被告が全てやった」と告白した。「全てを話す」と言いながら、データ加筆を報告しなかった理由を弁護側が問い質したが、男性医師は「忘れていた」と弁解した。
 弁護側は、男性医師が松原氏と白橋被告に「調査委員会向け情報」と題した資料をメールで送付し、「白橋氏のデータ入力、加筆変更はあり得ない」と書かれた資料も送っていた点も尋問。白橋被告の改ざんを男性医師が疑っていたのではないかと質問したが、男性医師は、計算間違いや入力ミス、ノバ社員だった白橋被告が論文に深く関与していることによる利益相反が問題になると考え、特別に改ざんが疑われているとは思わなかったと説明した。
■白橋被告も加筆できた?
 裁判官から加筆した時の状況を尋ねられると、「忙しかったので加筆は20分ぐらい。白橋氏から、会って言いたいことがあると言われ、外来診察室で会った。再調査を忘れている症例が40例あると言われ、瞬時にもう間に合わないと考えた」と説明。松原氏のプレッシャーを感じ、自ら白橋被告に「私が付け加えればいいんですね」と言ったところ、白橋被告はニコリとして、「ありがとうございます」と言ったとした。
 白橋被告が加筆せず、男性医師が加筆した理由については、「今思えば、臨床知識を持つ白橋氏 でも加筆はできたが、当時は医師の仕事だと考えた」と証言。裁判官が「白橋氏がデータを全てやっているのであれば、白橋氏のミスとして、松原氏に相談できなかったのか」と質問したが、「考えが及ばなかった」とうなだれた。
■症例報告が多い関連病院の医師を表彰
 KHSの症例登録は、京都府立医大の約30の関連病院が参加。年1回、KHSの参加医師を集め、症例登録の進捗状況などを説明する報告会が開かれる。その後、ノバ社主催の講演会を行っていた。この講演会では、著名医師以外にも、登録症例数の多い参加医師を講師に招き、表彰していたことも弁護側尋問で明らかになった。
 弁護側は、男性医師が登録症例数の多い医局員の医師を表彰者に推薦していることに注目。男性医師が参加医師から人事の希望を聞いたり、改ざんを疑って連絡したりしていないかと質問。男性医師は、個人的な付き合いはないとして否定した。
 一方で、男性医師は検察側や裁判官の質問で、試験終了を判断するDSMB(Data and Safety Monitoring Board)の基準や、Web入力データの項目、論文の表の記載などの判断をめぐって、白橋氏被告が主導的役割を果たしたと改めて主張。白橋被告の提案を基に決められ、男性医師が意見することはあっても、最終的に「白橋被告の意見に従っていた」という。DSMBの基準については、白橋被告も「悩んでいるようで、少しずつぶれていたように思う」と述べた。
  2月に計6回にわたって行われたこの男性医師への証人尋問は今回で終了し、次回3月7日から別のKHS事務局の男性医師への証人尋問を行う。
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