366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

親善ゲーム

2012年05月18日 | 366日ショートショート

5月18日『国際親善デー』のショートショート

近未来。突如飛来した宇宙人タイラー星人によって地球は危機に瀕していた。
地球防衛軍の必死の防衛が続いていた、そんなある日の夕刻である。
昼間の激戦を終えて、タイラー星人の戦闘機が続々と母船に向かって帰っていく。
すべての戦闘機が母船に収容されると、一隻の小型艇が現れた。
艇の舳先には竿が立てられ、竿先には紅地に黄金の日輪が描かれた扇が結わえつけられている。
艇には、タイラー星人のレースクィーン姿の美人がニッコリ笑顔で媚を売っている。
宇宙双眼鏡を覗いていた防衛軍長官ウッシー・ヤンググラウンドは副官に理由を尋ねた。
「射よ、とのことでございましょう」
副官の推理に長官は頷いた。
「なるほど。これはひとときの親善ゲームというわけだな。で、わが軍にアレを撃ち落とせる者がおるか?」
「ナッシュ・ワンプリーズ中尉はいかがでしょう。中尉は高射砲の腕前は地球一との評判です」
「ほほう」
「先日は飛ぶ鳥を撃ったらローストチキンになって落ちてきたほどでございます」
「よし、ナッシュにおまかせだ!」
そんなわけで呼び出されたナッシュ中尉、あまりの大役畏れ多く辞退したものの、ウッシー長官は許さない。
ナッシュは泣く泣く高射砲台へと向かった。
折から風はビュウビュウ激しくて、夕焼け空の雲間に見える艇はゆらりゆらり、扇の的は定まらない。
「神様仏様、ワンプリーズ!!」
ナッシュの祈りが通じたか、一瞬風がフッとおさまり、その瞬間を突いてファイヤー!!
みごと砲弾は扇の的に直撃。
まっ黒焦げになった艇と、チリチリ頭になったレースクィーンの姿。
「やったぁ!」
「お見事!」
地球軍からも、宇宙人の母船からも、ヤンヤ、ヤンヤの大喝采。
すると、母船から次から次へと現れ出でる、扇の的付き小型艇。
「ナッシュ中尉、やっておしまい!」
「アイアイサー!」
ナッシュ中尉は次から次へとあやまたず扇を撃ち落としていく。
「地球人をなめんなよ~!」
ウッシー長官はほくそ笑んだ。
こんな親善ゲームに興じるタイラー星人に、戦の現実の厳しさなどわからぬ。わが軍に勝算あり!

翌日、遥か上空からタイラー星人の猛爆撃を食らって、たちまち地球軍は降伏した。
ナッシュ中尉「いや~親善ゲームだとばっかり思っていたら敵の策略だったとは。騙されましたね~」
ウッシー長官「う~む、わが軍の高射砲射程距離を測定していたとはなぁ。失敗、失敗」

 



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