5月18日『国際親善デー』のショートショート
近未来。突如飛来した宇宙人タイラー星人によって地球は危機に瀕していた。
地球防衛軍の必死の防衛が続いていた、そんなある日の夕刻である。
昼間の激戦を終えて、タイラー星人の戦闘機が続々と母船に向かって帰っていく。
すべての戦闘機が母船に収容されると、一隻の小型艇が現れた。
艇の舳先には竿が立てられ、竿先には紅地に黄金の日輪が描かれた扇が結わえつけられている。
艇には、タイラー星人のレースクィーン姿の美人がニッコリ笑顔で媚を売っている。
宇宙双眼鏡を覗いていた防衛軍長官ウッシー・ヤンググラウンドは副官に理由を尋ねた。
「射よ、とのことでございましょう」
副官の推理に長官は頷いた。
「なるほど。これはひとときの親善ゲームというわけだな。で、わが軍にアレを撃ち落とせる者がおるか?」
「ナッシュ・ワンプリーズ中尉はいかがでしょう。中尉は高射砲の腕前は地球一との評判です」
「ほほう」
「先日は飛ぶ鳥を撃ったらローストチキンになって落ちてきたほどでございます」
「よし、ナッシュにおまかせだ!」
そんなわけで呼び出されたナッシュ中尉、あまりの大役畏れ多く辞退したものの、ウッシー長官は許さない。
ナッシュは泣く泣く高射砲台へと向かった。
折から風はビュウビュウ激しくて、夕焼け空の雲間に見える艇はゆらりゆらり、扇の的は定まらない。
「神様仏様、ワンプリーズ!!」
ナッシュの祈りが通じたか、一瞬風がフッとおさまり、その瞬間を突いてファイヤー!!
みごと砲弾は扇の的に直撃。
まっ黒焦げになった艇と、チリチリ頭になったレースクィーンの姿。
「やったぁ!」
「お見事!」
地球軍からも、宇宙人の母船からも、ヤンヤ、ヤンヤの大喝采。
すると、母船から次から次へと現れ出でる、扇の的付き小型艇。
「ナッシュ中尉、やっておしまい!」
「アイアイサー!」
ナッシュ中尉は次から次へとあやまたず扇を撃ち落としていく。
「地球人をなめんなよ~!」
ウッシー長官はほくそ笑んだ。
こんな親善ゲームに興じるタイラー星人に、戦の現実の厳しさなどわからぬ。わが軍に勝算あり!
翌日、遥か上空からタイラー星人の猛爆撃を食らって、たちまち地球軍は降伏した。
ナッシュ中尉「いや~親善ゲームだとばっかり思っていたら敵の策略だったとは。騙されましたね~」
ウッシー長官「う~む、わが軍の高射砲射程距離を測定していたとはなぁ。失敗、失敗」