366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

九月二十九日は招き猫の日

2012年09月29日 | 366日ショートショート

9月29日『まねき猫の日』のショートショート

お店の店先やらレジやらに招き猫ってのが置いてあります。この招き猫、アメリカでも人気があって、小判のかわりに$なんぞを抱えておるそうです。あちらでは日本の手招きはシッシッの動作なものですから、アメリカ猫の手は裏向きのカモ~ンな訳です。
「おい、招き猫ってのは宇佐神宮で作ってるのかい?裏っ側にメイド・イン・USAって書いてあらあ」
なんておっちょこちょいな話もあるもんです。

さてこの招き猫、今でこそ黒やらピンクやら金ぴかやらやりたい放題ですが、元祖は三毛猫です。三毛ってのは遺伝子のどうたらこうたらでオスが大変珍しい。それで昔はオスの三毛が生まれますと漁師さんが高値で買い取ってくれたそうです。

「惣右衛門さん、お宅にオス三毛がおるそうじゃな。わしに売ってくれ。今から漁に出るんだ」
「八兵衛さんじゃないか。あいかわらずせっかちだねぇ。まあいい、今日は九月二十九日、ふくがくるってんで『招き猫の日』だ。売ってやるよ」
「こいつぁありがてぇ!さあ三毛、漁に行くぞ!」
「ラニャ~!」

ってな訳で八兵衛さん、舟の舳先に猫を座らせて沖に出ました。途端、空はかきくもり、波がザブンザブンと船縁を打ちます。
「お?荒れてきやがった。やい三毛!がんばんなきゃ!」
「ラニャ~!」
返事だけは立派ですが、そのうち雷まで鳴り始め、雨もザンザン降ってきます。舟は大波にもまれて今にも沈んでしまいそうです。
八兵衛さん、三毛をつかみ上げます。
「実は、メス猫でしたぁ~ってオチなのか?」
「違うニャ~!」
「三毛ブチが実はペンキでしたぁ~ってオチなのか?」
「違うニャ~!」
八兵衛さん、猫の背中を触って驚きました。
「何だ?背中に一直線に走る、このジッパーは?そんな使い回しのオチで?」
その瞬間、山ほどの大波がザッパァ~ン!!八兵衛さんと猫は舟もろとも海の底へ・・・

ガバッ
「あ、何だ、夢だったのか」ひどい汗です。
「あんた、大丈夫かい?具合が悪そうだよ、今日は舟に乗るのはやめといた方がいいよ」
「ああ、やめとこう。もうひと寝入りするわ」
というわけで、かみさんの忠告どおり、もう一度ふとんをかぶるともうひと寝入り。
え?誰が?
ってもちろん江頭2:50星人。