366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

粗忽先生

2012年08月07日 | 366日ショートショート

8月7日『バナナの日』のショートショート



学校にまにあわない!
教師のくせにまた遅刻です。校門駆け抜け、職員室にダッシュ。もう職員会議が始まっている頃です。
「スミマセン!寝坊しましたっ」
と駆け込んだ職員室はガラ~ン、校長先生も教頭先生もだ~れもいません。
え?先生全員寝坊?
仕方ありません。出席簿を手に教室へ。
「みんな~、おっはよー!」
シーーーーーン。
教室にも誰ひとり生徒がいません。
ど、どうしたんでしょう、これは。
教室の時計はまちがいなく8時30分。オイオイ、全員そろって遅刻かぁ?
廊下に出ても、やっぱり静まり返っています。校舎全体、だ~れもいないようです。
はは~ん。さすがに鈍いボクでもわかってきましたヨ。この状況で考えられるのはただひとつ。
インベーダーによる地球侵略。
人類消滅作戦の犠牲となった憐れな同僚及び愛する生徒たちのために、ボクが仇を討ってやる!出てこいっ侵略者!!
ガラガラガラ!
ややっホントに出てきちゃったぁ!
「あ、底津先生、おはようございます」
ハゲチャビンのその頭は・・・よ、用務員さん!いや、用務員さんになりすましたタコ火星人にちがいありません。
「用務員さんに、この地球は渡さないっ」
「はい?底津先生はやっぱ粗忽ですのォ」
え?粗忽?失敬な。
「今日は日曜日じゃないですか」
エー!!休日なのに出勤しちまうなんて、こいつは迂闊でした。
「悪い悪い。明日、出直してくるよ」
って頭掻き掻き帰ろうとすると、用務員さんが呼びとめます。
「あのォ、底津先生、遅刻が多いんで先々週あなた、学校クビになりましたよ」
エー!!やったぁ!じゃ、月曜日、来なくていいじゃん。クビになったのも忘れちゃうなんてホ~ント粗忽。
「それに先生、先週クビになったのを忘れて出勤中、バナナの皮にすべって転んでポックリお亡くなりになりましたよ」
エー!!ボクが?
「・・・てことは・・・てことは・・・ボクって幽霊じゃん!キャー!!」
「幽霊を見てびっくりするのはワシのほうでしょ、ホント粗忽だなぁ。
アレ?先生!底津先生!気絶してるよ。幽霊なのに気絶してノビちゃって、やっぱ先生、粗忽だわ」