366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

フェイント昔話『ゾウのおんがえし』

2012年12月31日 | 366日ショートショート

12月31日『大晦日』のショートショート

昔々ある山里に、若い男がひとりで暮らしておりました。
男は、山で薪を切り、町に運んで売って細々と暮らしを立てておりました。
初めて山里に雪が降りつもった日のことです。
男がいつものように薪を背負って町まで向かっておりますと、目の前でゾウがドウと倒れたではありませんか。
駆け寄ると、ゾウの背中には密猟の矢が刺さっています。男は矢を引き抜き、川で傷口を洗ってやりました。
「さあもう大丈夫。森へお帰り」
ゾウはよほど嬉しかったのでしょう。パオーンとひと鳴きすると、男の方を振り向き振り向き、森へ戻っていきました。

それからしばらくたった、寒い夜のことです。男の家の扉をトントン叩く音がします。
こんな夜ふけに誰だろう?男が戸を開けると、そこにはゾウのように大きな女が立っていました。
「何をしてもいいので一晩泊めてください」
男は女を泊めてやり、やりたい放題してしまいました。
翌朝、女は太~いみつゆびをついて言いました。
「すでに実質上夫婦になりました。今日からよろしくお願いします」
男はなりゆきにまかせ、女を嫁に迎えました。

「これからわたしは夕食を作ります。決してのぞかないでくださいね」
女はそう男に約束させると、奥の部屋にこもり、食事のしたくをしました。
「さあ、できましたよ。めしあがれ」
アツアツのお碗を差し出します。ゾウ煮です。男はホフホフほおばりました。
なんと美味いゾウ煮でしょう。男はおかわりもしてたいらげました。
「これからは毎日ゾウ煮ですよ」

来る日も来る日もゾウ煮です。部屋にこもっては、アツアツのゾウ煮を作って出てきます。
さすがにゾウ煮に飽きてきました。
「すまない。今日は別のものを作ってくれないか」
男がおそるおそる頼みました。
女は奥の部屋に黙ってこもってしまいました。しばらくして部屋から土鍋をかかえて出てきました。
ゾウ炊です。
レパートリーがふたつに増えました。

この話の展開からして、女は日に日にやせていくのではないか?
部屋をのぞくと、わが身を削って料理する痛々しいゾウの姿を見るのではないか?
そんな疑念が男の胸をよぎります。でも女は来たときのまま、ゾウのままです。
「もう!矢菱君ったら!のぞいちゃだめだからね」なんて言われたらのぞきたくなるのが男のサガってやつです。
ついに男は誘惑にまけちまって、戸のすきまからのぞいてしまいました。
アッ
なんと女はゾウ煮を作りながら、つまみ食いをしているではありませんか。
だからゾウのまんまなんだぁ。
「あれほど約束したのに、とうとう見てしまったのですね」
「まさか、まさかお前は、あのとき助けたゾウ・・・じゃないのだな?」
「そんなことひとっことも言ってないし」
そのときです。
男の家の前でゴトン、ゴトンと重い音がします。
なんだろう?おそるおそる戸を開けると、戸をふさぐほどに米俵が積みあげられて、
その俵の上にも豪華反物セットやらジュエリーやらがまばゆく輝いているではありませんか。
これはいったい・・・?
雪の夜道を去っていく六つの小さな影。
「まさか、あなたたちはあのとき助けたゾウ?」
「そうです。わたしたち、笠じゾウです」

 

コメント
この記事をはてなブックマークに追加