銀行の正面ドアを開けたところで通信機が鳴った。
司令官からだ。ロビーの隅、大きな観葉植物の陰に走り込んで私は電話に出た。
・・・
「え?入金は待てと?もう地球銀行まで来ているんですよ!え!マーズ物産が赤字経営で不渡り?」
・・・
「関連企業全体、不良債権が増え自己資本が枯渇してるって?」
・・・
「冥王商事は?あそこは小規模経営だから・・・え?すでに切り捨てた?」
・・・
「銀河系政府は?公的資金の注入は見込めない?・・・なんですって?アンドロメダが!外資系が介入しているとなると・・・うちは飲み込まれますよ!」
・・・
「と、とにかく、このまま金星に戻ります。司令官、善後策を検討しましょう」
通信機を懐にしまう。
ロビーに出た途端、屈強な男に突き飛ばされて転がった。
「そこまでだ。金星人!」
数名の隊員が取り囲んで一斉に私に光線銃を突きつける。
「あ、誤解です、誤解ですよ!私は地球人です!」
隊長らしき男が私を引き起し、胸ぐらをつかんだ。
「誤魔化してもダメだ!貴様がアンドロメダだの銀河系だのしゃべっているのを聞いて、こちらのご婦人が通報されたのだ!」
隊員たちの肩ごしに、不細工な中年女が私を睨んでいる。
「嘘だと思うなら、財布の中の身分証明を見てくださいよ!」
隊長が身分証明をしげしげと見る。
「金星興産の司令官・・・もとい、社長がSFマニアで、われわれ社員全員、関連企業をSFっぽく言い換えさせるんです。本当、迷惑な話ですよ。社を調べてください。すぐにわかりますから!」
数分後、私の疑いは晴れた。
隊長が私に通信機・・・携帯電話を返してくれる。中年女がキィキィ言っている。
「だって、この人、宇宙人みたいな話しているし、顔も宇宙人じゃないの!ウルトラマンのトサカがない時にそっくり!」
それを言うなら、アイスラッガーを投げつけた時のウルトラセブンだ。確かに私は若禿にスクエアメガネ。のっぺりつるりん、ゆで卵みたいな顔をしているが・・・宇宙人とはあんまりだ。トサカにきた。
「あんたこそ、ガラモンそっくりじゃないか!」
「まあまあ」
隊長が間に入ってとりなした。ガラモンはブツクサ言いながら帰って行った。
私も早く帰らなければ。会社が一大事だ。
銀行を出るとき、私はふと振り向き、隊長に一言。
「ひとつだけ気になることがあるんですけど・・・宇宙人と間違えられた私を捕まえるために来た、あんたたちは一体何者なんだ?どう見ても科学特捜隊みたいだけど・・・実在してビックリなのはあんたたちだ」
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つまり、この作品自体がフィクションなわけですけど、
その中で生活している人たちについて
実在するかしないかを論ずる・・・・・・。
これは高度なギャグですねえ。
ガラモンの画像がやたら鮮明ですね。
そんな怪獣がいたような・・・あれ、違うかな?
科学捜査隊・・・MIBみたいなもんですね。
世界中には極秘な研究機関なってザラにあるんですし
それぐらいあってもよさそうですねぇ
僕はウルトラマンが大好きだったんですけど、ウルトラQのガラモンのデザインは秀逸ですよね~
それでガラモンのフィギュア写真の頭部をそのまま使っちゃいました。
宇宙マニアの社長の会社の部下が宇宙人に間違われるというネタを書きたかったんですが、こんな話になっちゃいました。
・・・これでいいです!!
ウルトラQは放送前に全話撮り終えていたのですが、ウルトラマンは放送に遅れないように撮ったので、怪獣の流用があるんです。ゴジラにエリマキつけたジラースとか、ガラモンそっくりで人間サイズのピグモンなどなど。
だから、結局ピグモンもガラモンもデザイン一緒な訳です。
大人になった今から考えると、ウルトラシリーズでヴァリエーションの豊かさ、ストーリーテリングの面白さで言えば、ウルトラQが最高だと思います。
機会がありましたら、ご賞味ください。
ショートショート書かれているのですね。
何だか怪しくてけ面白かったです。
また、遊びに来ます。
これからもよろしく。
ヘンテコなショートショートを書いています。
初代ウルトラマンとかセブンとかの時代に幼少期を過ごしましたのでこの辺のネタがつい出てくるんですよ~
ぜひまたお立ち寄りください。
ではでは。