子供の頃、僕は恐竜が大好きだった。
父に買ってもらった『恐竜図鑑』で、片っ端から名前を覚えたものだ。ステゴザウルス・・・ブロントザウルス・・・トリケラトプス・・・ティラノサウルス・・・プテラノドン・・・。世界の国旗、新幹線の駅名、野球選手、自動車・・・子供ってのは、何でもスイスイ覚える。それが僕の場合、恐竜だったわけ。
恐竜が僕を魅了したのは、ともかく大きいこと。雷竜の超弩級スケールにも、肉食恐竜の牙の馬鹿デカさにも、ただただ度肝を抜かれるじゃないか。
お盆や年末、TVの洋画劇場で恐竜映画が放送される日は、朝から大興奮だった。いつもは9時までに床に就いていたが、この日ばかりは夜更かしが許された。映画解説者の口からハリーハウゼンという名前を聞いて覚えた。『恐竜図鑑』をいきいきと動かしてしまう、憧れの魔術師!
あれから25年。
スピルバーグの恐竜映画で、リアルに動く恐竜が見たいという夢をもう見続けなくていいことを、すでに僕は思い知らされていた。
そして10年前、遺伝子操作によって恐竜が復活し、翌年、生きたミニチュア恐竜がペットとして発売された。
当初の販売価格100万円。
それでもオトナ買いで、アッという間に売り切れた。大増産がおこなわれると同時に、後進国から小型恐竜の粗悪品が輸入され量販店のワゴンに並び、やがて子供たちの手の届く価格になった。
小型恐竜ブームが世界を席巻した。ブームの終息と共に、恐竜はありふれた存在となり、恐竜のロマンもまた終焉した。
会社から我が家に帰る道すがら、カーラジオから流れるニュースを聴いていた。
「現在、都市中央空港では、翼竜がジェットタービンに吸い込まれる翼竜ストライクが発生し、離発着を見合わせています」
おっと!道路上で車に轢かれてペシャンコになった死骸をよける。イグアノドンのようだった。
やれやれ、ペットの恐竜が野生化して増え続け、連日世間を騒がせている。
この時期、我が家の周囲でもサカリのついた野良竜が不気味な声を上げて一晩中大騒ぎだ。カーポートの真砂土に糞をするヤツもいて、涙が出るほど臭い。
もうロマンもへったくれもない。
先日、オークションで『恐竜図鑑』の原画が100万円で落札されていたっけ。結局、ロマンはあそこにしかないわけだ。
あ!忘れるところだった!妻から今日はケンタのセットを買って帰るように頼まれていた!
危ない、危ない。
僕はハンドルを切って、ケンタッキーフライドダイナソーのドライブスルーに車を向けた。
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いつもの度肝を抜かれる奇抜さは薄いけど、矢菱さんの作品は、いつも安心して笑って読めますね。
矢菱さんは恐竜の姿にロマンを見られる方ですかあ?
僕は子供の頃から、あんまり恐竜の絵を見てもピンとこなかった方なんです。
でも、ドラえもんの映画『のび太と恐竜』を観てから、「フタバスズキリュウ(?)」のイメージが急に可愛いいものになりましたね。
そういえば、「野良竜」ってのが特に可笑しかったです。
おっちーさん、僕は恐竜は好きですけど、ウルトラ怪獣の方がもっと好きだった少年でした。
今回のお話、大好きなアイドルの雑誌表紙写真と、どこかの女優さんのどエッチな動画とどちらがワクワクするか?というのがテーマです。
・・・まあ、つまり「ロマンの本質」とは?みたいな・・・
見せ場はなんといっても、グラマーな女原始人ですよね。
ギャートルズだったら、すぐに犯されてしまいそうな、ボイン!
・・・・・・あ、100万年じゃなくて、100万円でしたね。
これは、すごくわかります。
映像がすぐに頭の中にできあがりました。
恐竜が生活に密着しているところが、いいですね。
こういう世界で生活してみたいなあ。
そんでもって、この文章の絵を何にしようかと画像検索して、原始人姿を再見しましたが、昔のイメージではすんごい露出だったはずなのに、実際は露出度が低いのにビックリしました。今時のTVや雑誌、もっと露出度高いのが当たり前ですものね。
ロマンというのはこんな風に失われていくわけです。