
電車まで時間があったので地元の駅前食堂に初めて入った。
ネチャつく黄ばんだメニューを開くと、隅っこに『創作そうめん』があった。
僕はそれを頼んだ。
『創作そうめん』か・・・そういえば数年前、この町で『創作料理の女』とつきあったことがあったっけ・・・
彼女の名前は那須香(ナスカ)。
何回目かのデートのとき、彼女の方から、週末に趣味の創作料理を御馳走すると誘った。
僕はワインを手土産に彼女のアパートを訪れた。
彼女は、笹包みを解いて高級和牛を取り出し、手際よく塩コショウしてフライパンへ。
弾けるようなジューシーな音と香り・・・ひとくち頰張ると肉汁がジュワッと広がるだろう。
「おいしそうだね!!」
僕がそう言うと、彼女はニコリと笑って、肉をジューサーミキサーに放り込んだ。
「あ・・・僕はそのままでも・・・」
「なに言ってるの?それじゃただのステーキよ、創作料理じゃないわ」
彼女はミキサーの中に、さらに納豆とチーズを投入、オロナミンCを注ぎ、スイッチを押した。
全てが粉砕されていく・・・
「ハイ、『高級和牛の元気溌剌クラッシュ』完成!」
続いて完成したのは『逆転カレー』だった。
大皿にを見ると、ルーの上にご飯が覆っている・・・さすが逆転カレー!これならいける!
僕はスプーンでライスをかき分ける。はたして、ルーが出現した。
それは、ヨーグルトとすりおろしリンゴとインスタントコーヒーと蜂蜜を混ぜ合わせた物体だった。
「カレーの隠し味で使われるものをメインにして、逆に、カレーパウダーを隠し味程度に加えてみたの。どう?『逆転カレー』!」
僕はとにかくそれらを胃に流し込んだ。
デザートはフルーツポンチだった。缶詰のフルーツポンチを切子鉢に盛っただけ。
・・・ならよかったのに。フルーツと一緒に、赤身、白身の刺身たちがマヨネーズとともに浮遊していた。
あの頃の僕は彼女の創作料理が許せなかった。心も胃も受け付けなかった。
以後、彼女を無視してしまった。そして音信不通に・・・
だが、別れて数年経った今、僕の心も胃も成長した。今なら彼女を許せる・・・
『創作そうめん』が運ばれてきた。
一瞬、何の変哲もないそうめんかと思った。
ア!
冷水に浸かったそうめんの間をシラウオたちがスイスイ泳ぎ回っている!
僕はそうめんとシラウオを一緒くたにからめとって麺ツユにつけて啜る。
麺ツユじゃない!
これは薄めたウスターソースではないか!
間違いない・・・これを創れるのは・・・那須香、君しかいない!!
僕は創作そうめんを一気に完食、厨房へとまっすぐ向かった。
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同じ愛なんてどこにもないのに
みんなと同じじゃなければ
同じようなおしゃれな会話じゃないければ
満足しないステレオタイプの女より
ボクは、那須香みたいな女性の方が好きですね
ボクも那須香の創作料理が食べてみたく・・・・・・
食べてみたく・・・・・・オエー!
食えるかあっっ!
蓼喰う虫も好き好きっていいますもんね(笑)
何か想像したら鳥肌もん……
あー……
それを受け止める男の愛情と精神力にも驚きですね。
いやはや、
あ、9月になりました。ちょっとお休みします。
でも、どんな形でオヤスミするか思案中です。
あんまりリアルな料理だと、「ええっそれウマイよ。いつも食ってるよ」という読み手がいるし、突拍子もない料理だと、荒唐無稽すぎて料理の見た目のイメージや味のイメージができないし。
ちょっとお休みしようと考えているんです。1週間くらい・・・
8月中に作ってアップし損ねたのが2つあるんでそれを今晩と明晩にアップして在庫整理してから、ラジオに乗じて休む・・・そうだ、それにしよう!!
ようやく今、休んでる感じです。
確かに料理のゲテモノっぷりバランスが絶妙ですね。アイデアがいいんだな。
そして9月4日、楽しみにしてますっ!
実はここ一週間もお盆ごろ作ったストックをアップしていたのですでにお休みモードです。
翌日の0時0分01秒に投稿時間をセットしておくのは時限爆弾仕掛けておくみたいで楽しかったです!
創作料理、自分自身の失敗したトンデモ料理の思い出もこもっています。
本当に普通の料理を作ろうと意図して失敗するのがいちばん悲しいです。トホホ・・・
ではでは秘宝館、しばらく閉館で~す。
ガシャン!(門の閉まる音)