受験生に捧ぐ

2012年11月28日 | ショートショート



やばい。ホント、やばいぞ、オレ。
真夜中。この期に及んでやり残しだらけの受験問題集に目をやる。
ああ、どうしよう。
こないだの模試の判定も黄色信号だった。
「部活をやめた連中が本腰入れてくる時期だからな」
先生は焦るなというけれど、そりゃ焦るよ。
ホントにオレってA高、受かんだろか?・・・。
「ハハハハ・・・」
え?部屋の外に人が?
「・・・ハックショ~イ!っとぉ~。も、もし。寒いので中に入れておくれでないか?」
カーテンを開けると、背広姿の中年男。
「な、何者だ?」
「名乗るほどの者ではござらん。人は神様、なんて呼ぶが・・・ハックショ~イ!」
こんなでかいクシャミされちゃ近所迷惑だ。まあ、神様なら・・・。
「いや~あんがと、あんがと」
部屋に入った男は、ファンヒーターを抱えるようにしてあったまり始めた。
「受験勉強かね。感心、感心。暖をとらせていただいたお礼をせにゃならんのう。なんなりと申してみよ」
神様のお礼だって?
「未来。未来が知りたい!A高に受かってるかどうか!」
神様が上目づかいで見つめた。
「ほんっとにそれがおのぞみかの?」
「・・・・・・」
どうだろう?A高には行きたい。でも本当に知りたいのはもっと未来だ。
「いや!どんな職に就いて、どんな女性と結婚してるか?それが知りたい!」
「ほんっっっとに?」
神様が見つめる。オレの喉がゴクリと鳴った。黙ってうなずく。
「よかろう。では、これを見なさい」
神様が懐から取り出したのは、二枚のDVD。プレイヤーで再生してみると・・・
「こ、これはアダルトビデオじゃないですか!」
「まあ黙って鑑賞しなさい」
というわけで、しばし鑑賞。一本は無修正、もう一本はモザイクあり。
「どうだったね?なかなかのもんじゃったろ?」
「ええ。しかし神様、これにどんな意味が?」
「では君に尋ねよう。モザイクは必要ありやなしや?」
う~む、どうだろう。裏はナマナマしすぎてむしろモザイクのほうがよかったような。
「じゃろ?見えそうで見えないところにロマンがあるんじゃ。人の未来も同じこと」
そうか。そういうものかもしれない。
「神様、ありがとうございます」
「そのDVDはわしからのプレゼントじゃ。さらば!」
そう言いのこして、神様はガラガラ戸を開けて出て行った。
そうか。モザイクのオレの未来、バンザイ!
明け方。
ふと気がつくと、またDVDを見ちまってオレの周りにはティッシュの山。
あいつ、ホントに神様だったのか??



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