監督: トーマス・アルフレッドソン
原作: ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』
脚本: ブリジット・オコナー、ピーター・ストローハン
撮影: ホイテ・ヴァン・ホイテマ
音楽: アルベルト・イグレシアス
ゲイリー・オールドマン ジョージ・スマイリー
コリン・ファース ビル・ヘイドン
トム・ハーディ リッキー・ター
トビー・ジョーンズ パーシー・アレリン
マーク・ストロング ジム・プリドー
ベネディクト・カンバーバッチ ピーター・ギラム
キアラン・ハインズ ロイ・ブランド
キャシー・バーク コニー・サックス
デヴィッド・デンシック トビー・エスタヘイス
スティーヴン・グレアム ジェリー・ウェスタービー
ジョン・ハート コントロール
サイモン・マクバーニー オリヴァー・レイコン
スヴェトラーナ・コドチェンコワ イリーナ
ジョン・ル・カレ
東西冷戦下の1980年代、英国諜報(ちょうほう)部「サーカス」を引退したスパイ、スマイリー(ゲイリー・オールドマン)に新たな指令が下る。それは20年にわたってサーカスの中枢に潜り込んでいる二重スパイを捜し出し、始末するというものだった。膨大な記録や関係者の証言を基に、容疑者を洗い出していくスマイリーがたどり着いた裏切者の正体とは……。
★★★★☆
久しぶりに同じ映画を立て続けに二回観てしまった。二時間あまりの映画の中にとにかく膨大な情報量が詰め込まれていて、しかもそのほとんどが映像に語らせていて、言葉は極力抑えられているからだ。もちろん登場人物も多いし、二重スパイ容疑の幹部たちだけでもティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン、そしてスマイリー本人&コントロール・・・それぞれに疑いを抱けるだけの場面があるし。しかも、ぶっちゃけ全員がロシアにカス情報を漏らしているわけで、ことは複雑。その中からアメリカの重要機密を漏らしている者を特定するのが本筋のお話。スパイ小説を熟読するように、このスパイ映画もまた熟観することを求めているようだ。
ただ、リアリティ溢れる諜報戦の現実を雰囲気として感じるだけでも、十分に価値がある映画だ。言わば、ジェームズ・ボンドとは対極にあるような娯楽性のないリアルなスパイの世界。諜報部の幹部たちが互いをまったく信頼しあうことができず、疑心暗鬼で疲弊している。さしあたり現場で活動する実働部隊員リッキー・ターがジェームズ・ボンド的だけれど、そのリッキー・ターが本部へ情報を伝えた途端、現地工作員のセシンジャーやKGBのボリスが惨殺されてしまうなんていう、ロシアに筒抜け状態の怖さ。互いが互いを疑い続けるピーンと張りつめた心理的な緊迫感だけでも、楽しめる映画である。
真犯人をつきとめてからの顛末なんて、ボクの大好きなシャンソンの名曲『ラ・メール』の歌にのせて、映像だけで最後まで描いて映画を閉じてしまう潔さ。プリドーの放つ銃弾は、愛だけなのか?ハンガリーの一件の責任をとらせたのか?それすら曖昧で、プリドーの涙で、思いを語らせるなんて演出の仕方・・・。
『世界一有名なスパイ、ジェームズ・ボンド!』なんて、秘密活動をするスパイとして根本的に失敗(笑)なわけで、対極にあるリアルなスパイをここまできっちり描いた映画は他にないだろう。地味で渋い映画ではあるが、確実にスパイ映画の歴史に名を残す一本であることは間違いない。
唯一、納得いかないのは、陳腐な邦題かな。原題のままのほうがもっと売れただろうに。
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