ショートショート

2012年11月18日 | ショートショート



広大な宇宙を航行することウン十年、未知の『星』に着陸した。
ロケットから降り立って、その極めてシンプルな景観を見渡す。
地平線とクレーターがペンで描かれているだけの単純化された白黒の景色。
まるで真鍋博か和田誠の挿絵みたいだ。
すると、目の前にいきなり宇宙人が現れた。宇宙人も単純化されていて全然怖くない。
「ようこそいらっしゃいました、エヌ氏!」
エヌ氏~?なんだそりゃ。
「確かに頭文字はNだが、俺にはちゃんと韮山葱太郎という名前があるんだ。四十三歳、三重県度会郡出身。血液型はO。好きなAKBは篠田麻里子お姉さまだ!」
宇宙人が明らかに不機嫌な顔になった。
「あのね、この『星』ではそういうディテールは排除してもらえませんか。この『星』はできるかぎり普遍的な要素で構成されているのです」
普遍的要素~?なんだそりゃ。
「野田首相、衆院解散&総選挙なんて話題は?」
「もってのほかです」
「おいおい、お話ってのは人間を描いてなんぼなんだよっ。時代や民族文化、風俗や世相抜きには語れないんだよっ」
宇宙人が不敵に笑った。
「それらを排除して浮かび上がる、根源的な人間性を扱うとしても?それを露わにする触媒として、宇宙人やロボット、悪魔などを登場させたとしても?」
ふと気がつくと、宇宙人の背後から悪魔が現れた。
「おのぞみをかなえてほしかったら、おまえのタマシイを・・・」
「俺は浄土真宗だ!往生しろ!」
悪魔が悲鳴をあげて消えていった。
と、次にロボットが登場、グラマーな女性型ロボットじゃないかあ。
「名前はなんだ?」
「ボッコちゃん」
「ボッコボコにしてやろうか?」
「ボッコボコにしてちょうだい」
「FUCKしようか?」
「FUCKしましょう」
宇宙人が慌ててロボットを消した。
「この『星』では暴力や性描写はタブーです。勘弁してくださいよ」
なんかもう宇宙人、涙目。
「あれはダメこれはダメ、どうすりゃいいんだあ?」
「この『星』で大切なのは終わり方です。気の利いた、意外性のある終わり方」
「アハハハ、それは絶対に無理だな。こんなパロディ、どうやって終わんだ?こっちが聞きたいよ」
と、そのとき突然、空から金ダライが落ちてきて俺の頭にガーン!と直撃。
「それじゃドリフだ!」
続いて、空の上から声が降ってきた。
「お~~い、出て行け~」



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