インタラクティブ童話劇場

2012年11月15日 | ショートショート



モグモグの森に実りの季節がやってきました。
ところが今年は様子がちがいます。異常気象のせいで、森の木々がみんな立ち枯れています。
リスは、毎年たくさん実をつけるザワザワの木を見あげました。
今年はちっとも実がならなかったようです。葉っぱがカサカサにちぢこまっています。
「リスくん、よく来たね。だが、わしはもうダメじゃ」
悲しむリスを見て、ザワザワの木は悲しそうにザワザワと葉を揺すりました。
「わしのてっぺんにのぼってごらん」
リスがのぼっていくと、木のてっぺんにひとつだけ実がなっているではありませんか。
「最後の実じゃよ。この実をウルウルの池のほとりに植えてくれないかい?」
あの大きな池のほとりなら、きっと元気な木が育つにちがいありません。
「ぼくにまかせてください」
リスは最後の実を大切に抱きかかえるとウルウルの池をめざしました。

(おじいさんがそこまで話すと、お話を聞いていた子どもたちが口々に言います。
「その実、食っちゃえばいいのに」「どうせ池のほとりに植えてめでたしめでたしさ」
やいのやいのうるさいので、おじいさんはムカッ)

ところがそのリスを後ろからパクリ!いきなりオゴジョが食べてしまったのです。
(子どもたち「ひいぃぃぃ!」)
オゴジョがそのまま歩いていくと、パクリ!いきなりキツネが食べてしまったのです。
(子どもたち「ギョギョギョ~!」)
キツネがそのまま歩いていくと、パクリ!今度はツキノワグマが食べてしまったのです。
(子どもたち「ギエ~!!」)
その夜、満腹のツキノワグマがウルウルの池に着くと、池にきれいなお月さまが浮かんでいます。
「キレイだなあ。こんな景色をながめながらウンコをしたら気分いいだろうなあ」
ウンチングスタイルのツキノワグマを月がこうこうと照らしていました。
やがて春がくると、池のほとりでザワザワの実が芽をふきました。
「おかえりなさい」
ウルウルの池をふきわたる春風があいさつをしました。

(話し終えて子どもたちを見るとドン引きの様子。
ちとやりすぎたかな、ここは例の手で・・・)

ところが真相はこうです。ウンチングスタイルのツキノワグマを見つけた猟師が麻酔銃をズドン!
お腹をさいてクマからキツネを取り出し、キツネからオゴジョを取り出し、オゴジョからリスを取り出したのです。
リスはザワザワの実をウルウルの池のほとりに植えました。猟師がみんなのお腹を縫ってあげて、めでたしめでたし。

(「最初っからそうなると思ってたもんね!」「行き過ぎたヒューマニズムによる陳腐な歪曲じゃないの?」
・・・ブチ!!)

こころが翌年の夏はもっと異常気象で、ウルウルの池は干あがり、ザワザワの若木も枯れてしまいました。おしまいっ!



(最後まで読んでいただいてありがとうございます。バナーをクリックしていただくと虎犇が喜びます)