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クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

映画「ブリキの太鼓」を観る~ナチス賛歌からJ.シュトラウス「美しく碧きドナウ」へ

2014年01月21日 07時04分05秒 | 日記

21日(火)。日経朝刊のコラム「私の履歴書」に連載中の小澤征爾氏の”回顧録”が快進撃を続けています 毎回、彼の波乱万丈の半生が綴られていて超面白い連載です 昨日は連載第19回目でしたが、1965年9月にトロント響の音楽監督に就任するまでのいきさつが書かれています 乗り気でない師匠バーンスタインを説得して就任した話も面白いのですが、もっと面白いのは彼の父親、小澤開作のエピソードです

「父母をトロントに招待した時、日本を出発する前夜、父親の開作が『ベトナム戦争はやめさせなければならん。二度と東洋人同士を戦わせてはいかん。アメリカにも行って、一番話が通じそうなロバート・ケネディに俺の意見を伝えたい』と言い出した ツテがないので友人の浅利慶太を通して中曽根康弘氏に紹介状を書いてもらい、実際にロバート・ケネディに会って話をした。ケネディは15分か20分の約束を倍に延ばして聞いてくれ、開作は大喜びだった

このエピソードは初めて知りましたが、ぶっ飛んだ父親だったのですね。この父親にしてこの子ありでしょうか その”子”も今年79歳になります。私は毎日「私の履歴書」を読むのが楽しみです

 

  閑話休題  

 

飯野ビルのランチタイムコンサートが明日(22日)の昼休みに同ビル1階ロビーで開かれます 今回の出演者は桐朋学園大学出身の藤原伊央里さんです。プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第8番ハ短調”悲愴”」、②ショパン「スケルツォ第2番」、③ドビュッシー「子供の領分」です なかなか意欲的なプログラムです 最近、聴き逃していたので久々に聴きに行こうと思っています

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

18日に高田馬場の早稲田松竹で映画「バグダット・カフェ」と「「ブリキの太鼓」の2本立てを観ました 先日「バグダット・カフェ」について書いたので、今日は1979年制作の西ドイツ映画「ブリキの太鼓」について書きます

物語は1899年のダンツィヒ(現在のグダニスク)郊外のカシュバイ。アンナは放火魔コリヤイチェクを匿い、それが縁で女の子を生みます。第1次世界大戦が終わり、成長した娘アグネスはドイツ人のアルフレート・マツェラートと結婚します しかし、従兄のポーランド人ヤンと愛し合い1924年にオルカルを生みます。オスカルは3歳になった誕生日に母親からブリキの太鼓をプレゼントされます この日に目撃した大人たちの醜態に嫌気が差したオスカルは、その日から成長することを止める決意をします 自ら階段から落ちて、周囲にそれが原因で成長が止まったと思わせることに成功します

オスカルは、自分が太鼓を叩きながら奇声を発するとガラスが割れる”才能”を知り、怒りを感じたとき太鼓を叩いて奇声を発します ナチスの台頭とポーランド侵攻を受け親ナチスの集会が開かれますが、ブラスバンドが奏でる音楽を、別のリズムで太鼓を叩くことによって乱します いつしかブラスバンドの奏でる音楽はヨハン・シュトラウスの「美しく碧きドナウ」に変わり、人々はワルツに合わせて踊り出します このワルツは、心の底ではナチスを嫌っている人々の本心を現しているようです

郵便局に立てこもったレジスタンスとドイツ軍との戦い(実際にあった1939年のポーランド郵便局襲撃事件)のシーンでアンニュイな音楽が流れます エリック・サティの「グノシュエンヌ」か「ジムノぺティー」だと思われますが、はっきりしません この映画はフランスのモーリス・ジャールが音楽を担当していますが、選曲したのはシュレンドルフ監督でしょうか、それともモーリス・ジャールでしょうか

この映画は1979年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作です。上映時間は163分。「バグダッド・カフェ」とともに1月24日(金)まで早稲田松竹で上映中です

 

          

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新国立オペラで「カルメン」を観る~歌も踊りも演技も3拍子揃ったケモクリーゼのカルメン

2014年01月20日 07時00分27秒 | 日記

20日(月)。昨日、初台の新国立劇場でビゼーのオペラ「カルメン」を観ました キャストは、カルメン=ケテワン・ケモクリーゼ(メゾソプラノ)、ドン・ホセ=ガストン・リべロ(テノール)、エスカミ―リョ=ドミトリー・ウリアノフ(バス)、ミカエラ=浜田理恵(ソプラノ)、スニガ=妻屋秀和(バス)、フラスキ―タ=平井香織(ソプラノ)、メルセデス=清水華澄(メゾソプラノ)ほか。指揮はアイナルス・ルビキス、演出は鵜山仁です 新国立オペラの「カルメン」公演は1999年、2002年、2004年、2007年、2010年に次いで今回が6回目です。記録によると、私は2002年を除いてすべて観ています

 

          

 

日曜日+プルミエ(初日)+「カルメン」ということで、会場はほぼ満席です 今回のプロダクションで一番の”目玉”は、「カルメン」ロールデビューのケテワン・ケモクリーゼです グルジアのトビリシ生まれの彼女はトビリシ国立音楽院とスカラ座アカデミアで学びました。もともとロッシーニやモーツアルトのオペラを得意とする歌手ですが、今回、悲劇のオペラ「カルメン」にどのようにチャレンジするのかが見どころです

ラトヴィア出身のルビキスのタクトで軽快な序曲が演奏され、第1幕が始まります タバコ工場から出てくる女工たちを男たちが迎えます。そこにカルメンが登場しますが、彼女の着ているドレスは”黒”です。カルメンを象徴するのは情熱の”赤”のはず。なぜ最初は黒なのか、演出の意図は最後の第3幕で分かります

ケモクリーゼが歌う有名なアリア「ハバネラ」、「セギディーリャ」、「ジプシーの歌」は、カルメンの情熱的な性格が表れた見事な歌でした これらのアリアに限らず、歌も踊りも演技も出来る超一流のメゾソプラノ、しかも美人です。今回が「カルメン」初体験というのが信じられません

とくに第2幕で、ホセが帰省ラッパの音で兵舎に戻ろうとする場面でのケモクリーゼが演じるカルメンの秘めた怒りの演技は、ただならぬものを感じさせる迫真の演技でした

 

          

 

ドン・ホセを歌ったガストン・リベロはウルグアイ系のアメリカ人ですが、良く通るテノールで聴衆を魅了しました エスカミーリョ役のドミトリー・ウリアノフはロシア出身のバスですが、逞しい闘牛士を堂々と演じ、歌いました

忘れてはならないのはミカエラを歌った浜田理恵です。第1幕でホセと歌う二重唱をはじめ、第3幕第1場で歌うアリアは胸に訴えかける力がありました。ミカエラは今や彼女の当たり役です

若手に目を転じると、メルセデスを歌ったメゾソプラノの清水華澄が着実に力をつけていると感じました 彼女は声量があるので迫力があります。プログラムを見ると、カルメン役のカヴァー歌手として彼女の名前がエントリーされています。つまり何らかの理由で急きょケモクリーゼが歌えなくなった時には、清水華澄がカルメンを歌うということ。それほど期待されているということです

第3幕第2場で、エスカミーリョとともにカルメンが登場しますが、ここでのカルメンは”赤”のドレスを身にまとっています ”情熱の赤”であるとともに”血の赤”であることを暗示しています。この場の最終局面で彼女はホセに刺されて死ぬ運命にあります 第1幕でカルメンの着ていた”黒”は最終局面での”赤”を際立たせる対比として使われたのだと思います

今回の公演で際立っていたのは、ルビキス指揮東京交響楽団の演奏です 第2幕や第3幕では、歌手陣と同じくらいに悲劇を歌い上げ、ドラマを盛り立てる演奏を展開しました

さて、このオペラは最後にホセがカルメンを刺殺して悲劇に幕が下ろされますが、その後ホセはどうなったのでしょうか?原作はフランスの作家プロスペル・メリメの「カルメン」ですが、オペラの台本はリュドヴィク・アレヴィとアンリ・メイヤックが共同執筆したということです 台本には「その後のホセ」については書かれていないでしょうが、慎重にオペラを観て聴いていると、カルメンの台詞の中に答えがあります

第3幕第1場で、カルメンは仲間のジプシー女とトランプ占いをしますが、カルメンが切るカードは何度やっても死を意味するスペードばかりが出てきます カルメンは嘆きます。「あたしが最初に死に、次にあの人(ホセ)が死ぬ」。

カード占いどおり、カルメンは殺されて死にました。次はホセの番なのです これが「生き残ったホセは、心を入れ替えてミカエラと田舎の一戸建て住宅で仲良く暮らしましたとさ、チャンチャン」になってしまったら”カルメン”が”軽めな”オペラになってしまいます。やっぱり、ここはホセに死んでもらわなければなりません

同じオペラを同じ劇場で何度も観ていると、たまにそんなことを考えてしまう今日この頃です。NHK(日本ヒマ人協会)でしょうか

 

          

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井上和雄著「ハイドン ロマンの軌跡~弦楽四重奏が語るその生涯」を買う

2014年01月19日 08時56分12秒 | 日記

19日(日)その2。昨日、早稲田松竹で映画を観た帰りがけに、初めて神保町の音楽書籍・楽譜専門店「古賀書店」を訪ねました 実は、toraブログをご覧いただいている新日本フィルの第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんが、先日のブログに「神保町の古賀書店に井上和雄著『ハイドン ロマンの軌跡』がありましたよ」というコメントをくださったのです

篠原さんは長い間、新日本フィル”室内楽シリーズ”のプレトークを担当された”トークの天才”です 原稿なしで15分間、その日に演奏される曲目や、弦楽四重奏を巡る諸々のエピソードなどを”立て板に水”のごとく流麗に話され、聴衆の興味・関心を引き付けてきた人です ブログが縁で、室内楽の演奏会の後「ワンコイン・パーティー」でお話しする機会があり、その時に、ブログで触れられていた井上和雄著「モーツアルト 心の軌跡~弦楽四重奏が語るその生涯」と同「ベートーヴェン 闘いの軌跡~弦楽四重奏が語るその生涯」をプレゼントしてくださったのです

 

          

          

 

著者の井上和雄氏は昭和14年生まれで神戸出身。神戸商船大学経済学部教授。神戸大学在学中に「ブタペスト・クヮルテット」の向こうを張って「ブタコレラ・クヮルテット」を結成し演奏を続けてきた人です これら3部作は、作曲家の生涯と弦楽四重奏曲全曲をその時代背景とともに紹介した力作で、プロのヴァイオリン奏者でも一目置くほど高度な内容になっています

あらかじめグーグルで「古賀書店」の位置を確認しておいたので、神保町交差点近くのお店はすぐに見つかりました 店内に入ると、さすが専門店だけに音楽関係の書籍、雑誌、楽譜が処狭しと並んでいます 書籍のコーナーをひと通り見たのですが、見つかりません 気合を入れてもう一度ゆっくり見ていくと、ありました、1冊だけ 表紙をめくると「井上和雄」というサインがありました。献呈者の名前は消され「様」だけが残っていました。これで「様」がなかったらサマになりません 定価は1,800円ですが、販売価格は2,500円でした。古書が必ずしも安いとは限りません。サインが決め手になったのでしょうか 

 

          

 

今読みかけの本をはじめ、読むべき本が手元に10冊以上たまっているので、いつになったら読めるのか今の段階では目処が立ちませんが、いずれ”割り込み”の形で読もうと思っています

 

          

 

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映画「バグダッド・カフェ」を観る~バッハ「平均律」のプレリュードとフーガの流れる中で

2014年01月19日 07時42分45秒 | 日記

19日(日)。昨日、高田馬場の早稲田松竹で映画「バグダット・カフェ」と「ブリキの太鼓」の2本立てを観ました 今日は1987年制作の西ドイツ映画「バグダット・カフェ」について書きます

物語はラスヴェガスとロサンゼルスの間に位置するハーヴェ砂漠の路上で、西ドイツから旅行にやってきた夫婦の口喧嘩から始まります 言い争いの末に妻のジャスミンは、車を降りて一人トランクを引きずって目的もなく歩き始めます。やがて道路脇にわびしい姿で現れたカフェ兼モーテル「バグダッド・カフェ」にたどり着き、宿泊を申し込みます

喧嘩をして夫を家から追い出した女主人のブレンダは、いつも不機嫌で店員や子どもたちに当たり散らしています 息子は、店に客がいようがいまいがピアノでバッハをつっかえながら弾いているし、娘はボーイフレンドたちと遊び歩いています。店員はあまりやる気が無さそう そんな家族バラバラの荒れた状態の中で、ジャスミンは家族の一人一人に少しずつ自分の存在を認めさせていきます いつも不機嫌なブレンダさえも心を開いていきます ジャスミンは旅行鞄に入っていた「手品セット」をマスターして、カフェの連中に披露すると、トラック運転手などに評判が伝わり、彼女の手品目当てでやってくる客で店は繁盛するようになります しかし、保安官から「不法滞在」として退去命令が出され帰国します 辛い別れの後、数年後?ジャスミンは再びバグダッド・カフェにやっきて、カフェは活気を取り戻します

最初に出てくる2組の夫婦の喧嘩のシーンを観ている時は、いったいこの物語はどうなってしまうのだろうか、と不安を感じていました 女性陣ときたら片や太ったドイツ人女性だし、片や怒りっぽい黒人女性だし・・・・・・ところが、ジャスミンがブレンダの仕事部屋が余りにも汚いので勝手に掃除をしてブレンダの反感を買うあたりから俄然面白くなってきます 最後には女同士、離れがたい友情で結ばれます

 

          

 

さて、音楽の話です ジャスミンが、ブレンダの息子が弾くバッハの「平均律クラヴィーア曲集第1巻」の第1番「プレリュードとフーガ」を目をつぶって聴いている時、突然ブレンダがやってきて「うるさい!お客がいる前で弾くのは止めなさい!」と叱ります それに対し、息子は「この人(ジャスミン)にはこの音楽が判るんだよ」と言って反論します。息子が「どこの国の人なの?」と尋ねるとジャスミンは「ドイツ人よ」と答えます。すると「なるほど、そうだよね」と言ってピアノの前の壁を見上げます。そこにはJ.S.バッハのあの有名な肖像画が掲げられています。言うまでもなくバッハはドイツ出身の作曲家ですね

今回上映されたのは、1987年制作のオリジナル版を、パーシ―・アドロン監督自らが2008年に再編集、すべてのカットの色と構図を新たに調整し直した「ニュー・ディレクターズ・カット版」によるものということです 上映時間は109分。早稲田松竹で1月24日(金)まで上映中。とても良い映画です。お薦めします

という訳で、バッハの「平均律」を聴きたくなりました CD棚から取り出したのはイギリスのピアニスト、アンジェラ・ヒューイットの1997年~99年に録音されたCDです。ヒューイットは、この演奏もそうですが1990年代にはスタインウェイのピアノを弾いていましたが、2000年代に入ってからはイタリアの小さなピアノ・メーカー、ファツォーリのピアノで弾くようになりました

 

          

          

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ジェフリー・ディーヴァ―「ロードサイド・クロス(上)」を読む~読み始めたら止まらない!

2014年01月18日 07時01分02秒 | 日記

18日(土)。昨夕、当ビル10階ホールで日本記者クラブ主催の「新年互礼会員懇親会」(要するに新年会)が開かれました 前日まで伏せられていましたが、ゲストに安倍首相が出席し新年の挨拶をしました 現役の総理大臣が記者クラブの新年互礼会で挨拶するのは、クラブ始まって以来初めてのことだそうです

私は首相が入館する予定時刻の30分前から防災センターに詰め、防犯カメラでホール内の様子や不審人物のチェックをしました。そして、玄関前で首相一行が入館するのを見届け、防災センターの防犯カメラを通して10階ホールでの安倍首相の挨拶を聴きました 来場が若干予定時刻を過ぎていたので、挨拶の冒頭どういう言葉で始めのるか興味を持っていたのですが、防災センターのモニター画面に戻った時には、すでに首相の挨拶が始まっていたので確認できませんでした 後で会場で聞いていた人に尋ねると、遅刻への謝罪の言葉はなかったということでした。「I'm sorry」ではなく「I'm 総理」で通したようです

安倍首相は得意の景気・経済を中心に、身近に控える東京都知事選、特定秘密法などについて約10分駆け足で話し、次の目的地(首相官邸?)に向かいました。私は車が無事にビルを離れるのを確認してから10階ホールの新年懇親会に加わりました

懇親会では1年前に実施した『2013年予想アンケート』の結果・表彰と『2014年予想アンケート』の投票が実施されました。『2013年予想アンケート』では10問全問正解者はゼロで、8問正解が10名いたそうです。一番正答率が高かったのは「12月31日現在のわが国の首相は誰か」という設問で「安倍晋三」という答えが90%だったということです。ゲストの安倍首相のニンマリ顔が目に浮かびます

さて『2014年予想アンケート』には「12月31日現在のわが国の首相は誰か」「12月31日現在の東京都知事は誰か」「日経平均株価が瞬間風速で2万円を超えることがあるか」「ソチ五輪フィギュア女子シングルで浅田真央選手が金メダルを取るか」など難問が揃っています 1月24日まで会員による投票が行われ、集計結果は1年後の新年会で発表されます。私は例年どおり『全問不正解』を狙いたいと思っています したがって、12月31日現在の首相は「小泉進次郎」、同じく東京都知事は「ドクター中松」と書こうと思います

 

  閑話休題  

 

ジェフリー・ディーヴァ―著「ロードサイド・クロス(上)」(文春文庫)を読み終わりました この本は人間ウソ発見器、キャサリン・ダンスを主人公とするシリーズのうち「スリーピング・ドール」に続く第2作に当たります あらすじは

「高速道路の路肩に死者を弔う十字架が置かれていた。そこに刻まれていたのは翌日の日付だった。そして翌日、十字架に名前を刻まれていた女子高生が何者かに命を狙われ、九死に一生を得る それは連続殺人未遂事件の発端に過ぎなかった。次々と命を狙われた被害者は、いずれもネットいじめに加担していた者で、いじめを受けた少年は失踪して行方が分からなくなっていた 世間は、いじめを受けていた少年が、ネット上で自分を非難していた者たちを端から殺そうとしているのだと考えるようになっていった キャサリン・ダンスは少年の行方を追うとともに、事件のきっかけを作ったブログの主宰者チルトンに接近し、これ以上被害者が出ないようブログの閉鎖を求める。しかしチルトンは拒否する。果たしてダンスは犯人を捜し出すことが出来るのか・・・・・・

この本の最初の部分に「読者のみなさんへ」というジェフリー・ディーヴァ―からのメッセージが掲げられています

「ネット上に形成された仮想世界と現実世界の境界線は、曖昧になりつつあります。この小説のテーマはそれです」

ある者がブログに人を非難する内容を書き込むと、事実でないことも含めて次々と書き込まれていき、最後にはとんでもない方向に行ってしまうことがある そのことをディーヴァ―は警告しているのです

ジェフリー・ディーヴァ―はもう一人のジェフリー、ジェフリー・アーチャーとともに好きな作家です。二人とも、読み始めたら止まらなくなる作品を次々と発表しています この本は文句なしの面白さです。お薦めします

 

          

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「アジアつなぐ第9」~ベトナムでの第9演奏会の記事に思うこと

2014年01月17日 07時00分25秒 | 日記

17日(金)。一昨日の朝日夕刊「マリオン情報欄」の「美博ピックアップ」コーナーに「THE世界一展 極める日本!モノづくり」として日本科学未来館の展示品の一部が紹介されていました そのうちの一つ、山口県下松市にある山下工業所が作っているアルミ製のヴァイオリンが写真入りで紹介されています。同社は、0系から秋田新幹線で使われている新型車両E6系まで、新幹線の”顔”(前面)部分を作っている板金加工会社で、職人がひとつひとつハンマーで金属板をたたいて製作しているといいます そうした「打ち出し板金」の技術を用いて作られたヴァイオリンは、糸巻やテールピースなどの付属品もアルミ合金製だとか 「独特の澄み渡った音色を奏でるという」と書かれていますが、さてどんな音がするのでしょうか アルミと聞くと身近な存在として、つい1円玉を思い浮かべてしまい、リッチな音は出ないのではないか、などと偏見を持ってしまいがちです 4月からの消費税率引き上げに伴って1円玉が再び大活躍すると言われていますが、アルミ製ヴァイオリンの方はどうでしょうか? せめて関東一円に広まるか・・・・・だれか、ストラディバリウス  アルミ製ヴァイオリン  ヤマハの電子ヴァイオリンによる弾き比べをやってくれないでしょうか 一番熱に強いのはアルミ製ヴァイオリンですが、一番熱中させるのはどのヴァイオリンでしょうか

 

  閑話休題  

 

一方、昨日の朝日朝刊・国際面「特派員メモ」には同紙のハノイ特派員が「アジアつなぐ第9」と題して書いていました。超訳すると

「安倍首相が靖国神社に参拝し、アジアの緊張が高まった12月26日の夜、ベトナムの首都ハノイでは日本、中国、韓国、台湾の歌手やコーラス隊が参加するベートーヴェン『第9』のコンサートが開かれた 日本人の本名徹次さんの指揮のもと、中国人のソリストがバス、台湾人がテノール、韓国人がメゾソプラノ、ベトナム人がソプラノを歌った。日本人市民ら約120人のコーラス隊も加わり、力強いハーモニーとなって会場に響いた ぎくしゃくした政治を尻目に、『私たちはひとつになれる』と市民が底力をみせた 直前に”病気”を理由にキャンセルになったが、北朝鮮の歌手も参加の予定だった

オーケストラに関する記述がなかったのですが、間違いなくベトナム国立管弦楽団でしょう たしか昨年9月、本名徹次氏の指揮により東京オペラシティコンサートホールでベートーヴェンの「第7番」ほかを演奏したはず。私は他のコンサートの予定が入っていたので聴いていませんが、さぞかしエキサイティングなコンサートだったのではないかと推測します

上記の記事の中で大事なのは、演奏曲目がベートーヴェンの「第9」だったことです 「第9」の自筆譜はベルリン国立図書館に所蔵されていますが、2001年にユネスコの『世界の記憶』(『世界記憶遺産』)リストに登録されているように、全世界の人々の財産なのです

私は「第9」であれば第3楽章が一番好きですが、音楽に思想を採り入れるのであれば第4楽章になるでしょうね

 

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文藝春秋社編「東西ミステリーベスト100」を読む~読んでない本が多い

2014年01月16日 07時00分29秒 | 日記

16日(木)。油断していたら1月も半分を過ぎてしまいました 昨日は夕方から雪が降るという予報が出ていましたが、結局降らなくて良かったです 少しだけ降る分には良いのですが、当ビルでは雪が積もると”玄関”の雪かきをしなければならなくなるので大変な騒ぎになります したがって、積もる雪のことをわれわれは業界用語で”ゆき過ぎ”と呼び、雪のシャレが受けないことを”ゆき倒れ”と呼んでいます

 

  閑話休題  

 

一昨日の日経夕刊のコラム「人間発見」にピアニスト小山実稚恵さんのインタビューが載っていました 昨秋には、日本の音楽文化の発展・向上に寄与したとして東燃ゼネラル音楽賞(旧・モ―ビル音楽賞)を受賞、12月には年間最優秀CDに贈られるレコード・アカデミー賞(器楽曲部門)を受賞するなど、今「日本で最も旬の芸術家の一人」として紹介されています まだ若いと思っていたら、いつの間にか彼女も54歳とのこと。インタビューでは、演奏に対する姿勢が披歴されています

「もし私に神様のようなスペシャルハンドがあって、弾きたいように弾けたらどんなに幸せかと思いますが、演奏会になると、ミスなく無難に弾くように折り合いをつけてしまって、後悔したり、感情に走りすぎて乱れてしまったり 演奏会の会場となるホールの大きさ、音響、使うピアノの能力、さらに協奏曲となると管弦楽団や指揮者との相性といったことも加わり、偶然に左右されることが多い。だから演奏には二度と同じものはありません それは素晴らしいことなのですが、弾きたいように弾くとリスクも高まり、リスクをリスクと感じさせないように聴衆に聴いていただくにはどうしたらよいのか、いつも葛藤の連続です

彼女の語る、聴衆を前にして演奏する際の心構えや姿勢は、演奏家にとっては共通の認識ではないかと思います。来年プロデビューから30周年を迎える彼女にしても、デビューしたばかりの演奏家にしても同じでしょう 彼女の言うように、演奏する条件がその都度変わるので「演奏には二度と同じものはない」、だからこそ私は生演奏にこだわり続けるのです。プロの演奏家にはリスクを取ってほしいと思います。こちらは決して安くはないお金を払って聴いているんですから

これまでの彼女のパフォーマンスから、一番好きな作曲家はショパンかと思っていたら、J.S.バッハとのこと 「バッハは機知に富んでいて、無限の躍動感がある」「どの時代にあってもバッハは常に新しさを感じさせる。500年後の人々もバッハに感動するでしょう。永遠に生き続ける音楽です」と語っています 作曲家にとっても、演奏家にとっても行きつくところは「バッハに帰れ」という合言葉なのでしょうか

 

  も一度、閑話休題  

 

文藝春秋社編「東西ミステリーベスト100」(文春文庫)を読み終わりました この本は元々、1986年12月に文春文庫で刊行されたミステリーガイドの改訂版の文庫版です 日本推理作家協会、ミステリー愛好家の会であるSRの会、各大学ミステリークラブ、各地の読書会、国内外のミステリー通など総計795人に、すべてのミステリー作品からベスト10を選んでもらうアンケートを実施し集計したもので、回答は387人だったとのことです(2012年11月発表)

 

          

 

集計の結果、国内のベスト5は、1位=横溝正史「獄門島」、2位=中井英夫「虚無への供物」、3位=島田荘司「占星術殺人事件」、4位=夢野久作「ドグラ・マグラ」、5位=宮部みゆき「火車」となっています。何ということでしょう。私はこのうちの1冊も読んでいません 第2位~第4位の著者も作品も初めて知りました ベスト102の中で私が作品を読んだことのある作家は東野圭吾、泡坂妻夫、江戸川乱歩、宮部みゆき、大沢在昌、新保裕一、伊坂幸太郎、乾くるみ、中島らもぐらいです。いかに少ないかが分かります

一方、海外のべスト5は、第1位=アガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」、第2位=エラリー・クイーン「Yの悲劇」、第3位=アーサー・コナン・ドイル「シャーロック・ホームズの冒険」、第4位=ウイリアム・アイリッシュ「幻の女」、第5位=アガサ・クリスティー「アクロイド殺し」となっています さすがにこちらはほとんど知っています が、実際に読んだのは「Yの悲劇」と「幻の女」だけという情けない状況です ベスト100の中で作品を読んだことがある作家は、アガサ・クリスティー、エラリー・クイーン、ウィリアム・アイリッシュ、レンモンド・チャンドラー、ローレンス・ブロック、ジェフリー・ディーヴァ―、ギャビン・ライアル、エドガー・アラン・ポー、トム・ロブ・スミス、アイザック・アシモフ、ダン・ブラウン、カズオ・イシグロぐらいです。番外ではパトリシア・コーンウェルなどもよく読みましたが

この本は国内外の全202作品の「あらすじ」と「うんちく」を紹介しているので、初めて読む時の良きガイドブックになります

この本を読んでいて一つ気が付いたのは、私がよくこのブログで紹介している「謎解きはディナーのあとで」でお馴染みの東川篤哉はベスト100にも入っていないということです いわゆる「ユーモア・ミステリー」は問題外とされているようですね いわゆる”ミステリー・ファン”の心の狭さがよく分かる選考基準だと思います

 

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リッダ―+都響でドヴォルザーク「チェロ協」とチャイコフスキー「第4」を聴く~都民芸術フェスティバル

2014年01月15日 07時00分27秒 | 日記

15日(水)。昨日の朝日朝刊・文化欄に「ブルクミュラー再評価~没後140年 ピアノ曲 大人も魅了」という記事が載りました。超訳すると

「子どものピアノ教材として知られる『ブルクミュラー 25の練習曲』であるが、今年はブルクミュラー没後140年を迎える 知られざる真価を掘り起こす試みが相次ぐ。彼は同じくピアノ教則本で知られるバイエルと同じ1806年にドイツで生まれた。『貴婦人の乗馬』『アラベスク』といったイメージ豊かな題名が、紙芝居のような楽しさを届ける 音楽評論家の宇野巧芳氏は『ここまでシンプルを極めつつ、高級な味わいを感じさせる音楽はない』と再評価を熱望。全音楽譜出版社の下條俊幸氏は『”25”以外の作品をもっと普及させ、”ブルクミュラ―=子ども向け”というイメージを払い、ピアノの教育現場に新たな風を吹かせたい』と語る」

私は「バイエル」も「ブルクミュラー」も弾いた経験は皆無ですが、ピアノを習ったことのある人ならどちらかを経験されていると思います。あるいは懐かしい思い出として、あるいは苦しい思い出として ピアノが全く弾けない身として思うのは、1曲でもいいからクラシックの曲を公衆の面前で弾きたいということです。が、指が固いし、時間ないし、何より能力ないし・・・・

 

  閑話休題  

 

昨夕、池袋の東京芸術劇場で東京都交響楽団のコンサートを聴きました これは毎年恒例の「都民芸術フェスティバル~オーケストラ・シリーズ」の一環として挙行された公演の一つです

プログラムは①ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」、②チャイコフスキー「交響曲第4番へ短調」で、指揮はアンドレ・デ・リッダ―、①のチェロ独奏は堤剛です

 

          

 

自席は1階N列23番、センターブロック右サイドです。東京都の助成公演のため低料金で聴けるとあって会場はほぼ満席です

東京都交響楽団は定期会員ではないので、オケのメンバーにあまり馴染みがありません 弦楽器を向かって左から眺めていくと、コンマスの山本友重さん、第2ヴァイオリン首席のエンカナ(遠藤香奈子)さん、チェロの古川展生さん、ヴィオラの篠崎友美さん・・・・・・ちょっと待ってよ、篠崎さんは新日本フィルの首席でしょうが ・・・・さては新日本フィルからレンタルしたな もとい、都響と新日本フィルとの友好関係に基づいて首席奏者を派遣してもらったな・・・・。この日のコンサートは定期公演ではないから今回のような融通が利くのだろうか

1曲目のドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」は、プログラムの解説に評論家の奥田佳道氏が書いているとおり「王者の風格を誇るチェロ協奏曲の傑作」です 現代の評論家の中ではこの人の解説が非常に分かり易いと思います

ソリストの堤剛が指揮者のリッダーとともに登場します。指揮者のリッダーはどこの国の出身か解説がないので判らないのですが、見た目は映画監督のスティーヴン・スピルバーグのような髭もじゃ男です。チェロの堤剛氏はご存知、サントリーホール館長です

ここで公演プログラムにある堤剛氏のプロフィールの誤りを指摘しておきます 「2004年より桐朋学園大学学長の任にある」とありますが、正確には「2004年4月から2013年3月まで桐朋学園大学学長を務めた」です。2013年4月からは毎日新聞東京本社学芸部専門編集委員だった梅津時比古氏(現在、同社客員特別編集委員)が学長を務めています。このプログラムは公益社団法人日本演奏連盟の編集によるものらしいですが、しっかりしてほしいと思います

曲は第1楽章冒頭から堂々たる音楽が展開します。それは良いのですが、ソリストの陰になってエンカナさんの姿が見えません 「すみません、堤さん、もうちょっと左に寄っていただけませんでしょうか」なんて言える訳ないので諦めました 堤氏がチェロを弾く姿を見ていると、まるで歌舞伎役者が大見得を切っているところを思い浮かべます。まあ、それだけ決まっているということですが 演奏姿を観ていると、相当体力を必要とする曲のように感じます。根性を据えて弾かないと最後まで弾き切れないのではないかと思います とにかく名曲中の名曲です

プログラム後半は、チャイコフスキーの交響曲第4番です。この曲も奥田氏の解説が冴えています。「激情も哀愁もお任せあれのシンフォニー。管弦打楽器の”饗宴”にセクションの妙技、ソロの味わい・・・・すべてが聴きどころとなる」。まさにその通りの曲です

リッダーはかなりテンポを揺らします。歌わせるところはたっぷり歌わせ、畳み掛けるところは思いきりクレッシェンドをかけて、ドラマティックに激しく音楽を展開します

私は、コンサートを聴くとき何人かの奏者に焦点を当てて聴きますが、今回はエンカナさんに注目してみました 彼女の演奏スタイルは、小手先でヴァイオリンを弾くのではなく、身体全体で弾いているのが分かります 芯があって根本は揺らいでいないのに、手の動きは柔軟です。そのため躍動感溢れる演奏が可能になります その動きはコンマスの山本氏と同じです。身体全体で演奏することによって、後ろの奏者に演奏の手本を示しているのだと思います。「私についてきて」。やっぱり首席奏者はそうでなければならないなのでしょう

第4楽章のフィナーレは圧巻でした 聴衆を興奮の坩堝に巻き込み、拍手喝さいとブラボーの嵐を呼びました 「やるねえ、指揮界のスピルバーグ」といったところでしょうか

気を良くしたリッダー+都響はアンコールにブラームスの「ハンガリー舞曲第1番」を演奏しました。これも興奮の坩堝でした

 

          

 

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METライブ、ヴェルディ「ファルスタッフ」を観る~オーソドックスな演出が必ずしもベストとは言えない

2014年01月14日 07時00分35秒 | 日記

14日(火)。昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ヴェルディ「ファルスタッフ」を観ました この公演は昨年12月28日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です

キャストはジョン・ファルスタッフ=アンブロージョ・マエストリ(バス)、アリーチェ・フォード=アンジェラ・ミード(ソプラノ)、クイックリー夫人=ステファニー・プライズ(メゾソプラノ)、メグ・ペイジ=ジェニファー・ジョンソン・キャーノ(メゾソプラノ)、ナンネッタ=リゼット・オロペーサ(ソプラノ)、フェントン=パオロ・ファナーレ(テノール)、フォード=フランコ・ヴァッサッロ(バリトン)ほか。指揮はMET音楽監督ジェームス・レヴァイン、演奏はメトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はロバート・カーセンです

 

          

 

この日も10時ギリギリに9階の上映会場に滑り込みました 新宿ピカデリーとしては比較的小さな会場ということもあってか、8割方埋まっている感じです

「ファルスタッフ」は、数々の悲劇の傑作オペラを作曲してきたヴェルディ最後の”喜劇”オペラです。それまで彼のオペラで何人の登場人物が殺されてきたか・・・・その点、このオペラでは智者は出ても死者は出ません あらすじは

「居酒屋兼旅籠のガーター亭に暮らす肥満体の老人ファルスタッフは騎士あがりのならず者 お金が底をついたファルスタッフは、金持ちの人妻を口説いて金づるにしようと、宛名以外まったく同文の手紙をアリーチェとメグに送る それに怒った二人は彼を懲らしめる計画を練る。一方、ファルスタッフがしばしば無礼を働くことに腹を立てた医師のカイウスとアリーチェの夫フォードの二人も彼に仕返しをしようと企む

アリーチェは友人のクリックリー夫人経由でファルスタッフを呼び出すが、そこに妻が誘惑されると信じたフォードが乱入、ファルスタッフは洗濯籠に隠れるが、洗濯籠ごとテムズ川に投げ込まれる

ファルスタッフは、性懲りもなく再び誘いに乗ってウィンザーの森にやってくるが、妖精や化け物に変装した人々に懲らしめられる どさくさに紛れてフォードの娘ナンネッタが恋人のフェントンと結ばれると、ファルスタッフは『みんなを回しているのはこの俺だ』とうそぶく。一同がファルスタッフに合わせて『人生はみな冗談』『人間はみな道化』と唱和して幕が下りる

この曲が作曲されたのは1890年~93年ですが、ロバート・カーセンの演出は時を1950年代に置き換えています。METの「ファルスタッフ」で50年ぶりの新演出とのことです 第1幕と第2幕はダイニング・キッチン が舞台になっていますが、1950年代に使用されていたであろう食器や料理道具などがカラフルに揃えられています。幕間のインタビューでルネ・フレミングの「こんなに多くの台所用品を揃えるのは大変だったでしょう」という質問に、小道具チーフのブルーメンフェルドは「片付けるのはあっという間ですが、揃えるのに25人で当たりました」と答えていました 小道具だけで25人ですよ、奥さん オペラの引っ越し公演が高くつくのが良くわかります

演出で気が付いたのは、全幕を通じて、出演者の誰かがしょっちゅう食べたり 飲んだりしている、どんな時にも、どこからともなくワインが出てきて飲んでいることです これは呑兵衛「ファルスタッフ」の象徴でしょうか

このオペラは何と言っても主役ファルスタッフを演じたマエストリの歌と演技が光ります フレミングがインタビューで「あなたがファルスタッフを演じるのはこれが202回目だと聞いていますが・・・・」とマイクを向けていましたが、まさにファルスタッフを歌うために生まれてきたような体格と深いバスの持ち主です また、マエストリは料理が得意だそうで、自分の考案した料理のレシピをホームページで公開しているそうです。「オペラのマエストリ」は「料理のマエストロ」か・・・・・・身体付きからすると、たくさん作ってたくさん食べるんだろうな

クリックリー夫人を歌ったステファニー・プライズは身体付きだけをとれば女ファルスタッフ(失礼!)というような立派な体格ですが、深みのあるメゾソプラノで、カーテンコールでも圧倒的な人気を誇っていました アリーチェ・フォードを演じたのは大型新人と言われるアンジェラ・ミードでしたが、恵まれた体格から無理のない美しいソプラノを聴かせてくれました

若いナンネッタを演じたリゼット・オロペーサが第3幕で歌った「夏のそよ風に」、その恋人フェントンを演じたパオロ・ファナーレの歌った「唇をついて舞う」は、若々しい二人に相応しい爽やかな歌でした。喜劇の中の一幅の清涼剤になりました

出演者が揃って合唱する第3幕のフィナーレは「フーガ」です 言うまでもなく「フーガ」はバッハやヘンデルの時代に全盛を迎えた作曲技法です。同じ旋律が複数の声部に現われる「フーガ」は日本語では「遁走曲」と訳されています。分かりにくかったら、ザ・ピーナッツが歌った「恋のフーガ」を口ずさんでみてください この技法は後に、モーツアルトも、ベートーヴェンも、ブラームスも採り入れて作曲しました そして、ヴェルディは最後のオペラに導入したわけです。これは非常に興味深いことです。クラシック音楽界でよく言われる格言があります。「バッハに帰れ」。最晩年を迎えたヴェルディは最後のオペラ「ファルスタッフ」で、「バッハに帰る」とともに悲劇でなく喜劇によって新境地を切り開いたのでしょうか

このオペラは音楽が休むことなく続きます 次から次へとメロディーが流れます。その意味では昨年、ともに生誕200年を迎えたワーグナーの”無限旋律”を思い起こします。一旦演奏が始まったら途中で音が止むことがないので、開演時間に間に合わないと第1幕が終わるまで、下手をすると1時間以上も待たされることになります。その意味では、この「ファルスタッフ」も”遅刻できないオペラ”です

指揮者のジェイムズ・レヴァインは2011年5月に、健康上の理由で休養に入り、今回がMETライブ復帰第1作目となります 指揮台の椅子に腰をかけたまま指揮をします。第1幕と第2幕を合わせて85分、第3幕が52分。この間、ずっと座りっぱなしで指揮をするのは相当辛いだろうと思います 終演後のカーテンコールでは、美声を聴かせてくれた歌手陣に負けない大声援がレヴァインに送られました

私はかつて「ファルスタッフ」を新国立オペラで観たことがありますが、もっと”真面目な”演出で、あまり”喜劇性”を感じませんでした 時代設定も当時のままでオーソドックスな舞台作りでした それに比べ、今回の演出は時代を60年くらい後にずらしていますが、おかしくて仕方がないほどの”喜劇性”を感じました。もちろんキャストの人選もあるでしょうが、必ずしもオーソドックスな演出がベストとは言い切れないと思った今回の演出でした

上映時間は休憩1回・インタビュー等を含め3時間弱です。17日(金)まで新宿ピカデリー、東銀座の東劇ほかで上映中です

 

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東響名曲全集第94回公演を聴く~ショパンの第1コンチェルトとドヴォルザークの第9番

2014年01月13日 08時20分48秒 | 日記

13日(月・祝)。昨日、ミューザ川崎で東京交響楽団の名曲全集第94回公演を聴きました プログラムは①ワーグナー:楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲、②ショパン「ピアノ協奏曲第1番ホ短調」、③ドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調”新世界より”」で、指揮は秋山和慶、②のピアノ独奏は中村紘子です

 

          

 

拍手の中、コンマスの大谷康子が登場、チューニングを終えて、指揮者・秋山和慶が登場して大谷と握手をしようとしたその時、2階右サイド、ちょうどコントラバスの上方辺りの席でフラッシュが焚かれました まだ居ますね、こういう非常識極まりないヤカラが 事前の放送など聞いていないのでしょうね、こういう人は。どこのコンサートホールでも事前に「ケータイ電話の電源を切ること。許可のない撮影や録音は固く断ること」を放送しています そばにそういう人がいたら、直接注意しないで、休憩時間に係員に伝えて注意してもらいましょう。相手が何を持っているか(ナイフとかピストルとかノコギリとか)わかりませんから 逆恨みされて後で刺されたりしたら、もうコンサートを聴けなくなってしまうかも知れませんからね。お互い命を大切にしましょう

1曲目のマイスタージンガーは東響にしては珍しくアインザッツが揃っていませんでしたが、徐々に本領を発揮して堂々たる演奏を展開しました 先日、映画で「ルートヴィヒ」を観て以来、毎日のようにワーグナーの序曲や前奏曲ばかり聴いています。あまり関係ないですけど

舞台右袖からピアノがセンターに運ばれ、ショパンのコンチェルトに備えます。ソリストの中村紘子が白を基調とした銀の鳥をあしらったドレスで登場、ピアノに向かいます

彼女は今年のシーズンにデビュー55周年を迎え、東京交響楽団と35年連続36回目となるニューイヤーコンサートを挙行したということです 彼女のデビューは15歳でしたから、現在の年齢は・・・・・・計算してください 35年連続で同じオケで1月に演奏するというのも信じられないほど凄いことだと思います

 

          

 

ショパンのピアノ協奏曲第1番が、オケの堂々たる第1主題によって始まり、ロマンティックな第2主題に受け継がれ、次いでピアノが力強く登場します 中村紘子のピアノの特徴は一言でいえば「男性的な力強さ=パワー」にあると思うのですが、この時の第1音はまさにその表現が相応しい演奏でした。「力強い演奏」というよりは「叩きつけるようなインパクトの強い演奏」と言った方が相応しいかも知れません

第2楽章「ロマンス」もどちらかというと「ロマンティック」とは対極的な硬質な感じを受けました 第3楽章に入り、しばらくしたところで、高音部の演奏に不安定なところがありましたが、それを物ともせずすっ飛ばして弾きました ピアノは一度音を出すと修正できないので困りますよね。ピアノに限らないけど

何度も舞台に呼び戻されたソリストはアンコールに小品を弾きました。「ショパンのコンチェルトを弾いたのだからアンコールもショパンだろう」と思っていると、どうも違うようです なんとシューベルトの即興曲作品90-2を弾きました

休憩時間が終わり自席で待っていると、後ろの席の女性2人組の会話が耳に入ってきました

「ほら、後ろの右の方にいるのがファゴットよ」

「どれ、どれ?」

「先端が白い円形になっている細長い楽器よ。トッポを大きくしたようなヤツよ!」

「ああ、あれね!!トッポを大きくしたようなって面白い表現だね」

この会話を聞いていて私も無音で笑っちゃいました ちなみに「トッポ」というのはロッテが販売しているチョコレート菓子で、形が細長い円筒形をしていて、あれを大きくするとまさにファゴット(バスーン)になります。あの会話は忘れられません(never forgotten)

ドヴォルザークの交響曲第9番は作曲者が米ニューヨークのナショナル音楽院の院長を務めていた時に作曲されました 第2楽章「ラルゴ」はコーラングレ(イングリッシュ・ホルン)によって懐かしいメロディーが奏でられます。小学生の時、ボーイスカウトの野営で歌った「遠き山に陽は落ちて・・・・」という歌を思い出します

演奏では、留学中の荒絵理子に代わってオーボエを吹いていた女性奏者が素晴らしい演奏をしていたのが印象に残っています

アンコールはないものと思っていましたが、何度目かに指揮者が舞台に戻る途中で、いきなり小太鼓のリズムが刻まれました ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートのアンコールの定番「ラデツキー行進曲」です 秋山は時に客席の方を振り返り、手拍子を求めます 聴衆も慣れたもので、秋山の合図に合わせて手拍子をしたり休んだりして演奏に”参加”しています  オケも楽しそうに演奏しています。新年早々いいですね。こういうのは プロのオケがいくつも競合する東京では、聴衆を確保するためにいろいろとサービスを考えないと生き残れませんから大変ですね

 

          

 

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