人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

阿部智里著「発現」を読む ~ カルトか? ミステリーか? カルトっぽいミステリーか? 「発現」とは何を意味するのか?

2019年03月16日 08時07分36秒 | 日記

16日(土)その2。よい子は「その1」も読んでね

阿部智里著「発現」(NHk出版・2019年1月30日 第1刷)を読み終わりました  この本は1か月ほど前にバレンタインのプレゼントとして頂いたハードカバーです 手元に読むべき本が数冊あったので、この本を読み始めるのが遅くなってしまいました

奥付の「著者のプロフィール」によると、阿部智里さんは1991年生まれ。群負県出身。早稲田大学文化構想学部卒業、同大修士課程修了。2012年に「烏に単は似合わない」で松本清張賞を史上最年少の20歳で受賞 デビュー以来「八咫烏(やたがらす)シリーズ」を7冊刊行し、累計100万部を突破したとのこと シリーズ名だけはどこかで見たことがありますが、阿部智里という作家は私にとっては「未知との遭遇」です 恥ずかしながら、著者はてっきり男性だと思い込み 名前を「あべ ともさと」と読んでいて、本当は「あべ ちさと」と読み 女性であることを知ったのは「発現」を読んだ後でした

 

     

 

表紙を開いてアッと驚いたのは、そこに著者のサインと印が押されていたからです わざわざサイン会でもらったんだろうか

 

     

 

物語は平成(30年~31年)と昭和(40年)の2つの時代で起こった不可解な事件、さらに遡ること53年前に起きた忌まわしい事件を描いています

平成30年。村岡さつきは、母親が幻覚に悩まされて自殺した忌まわしい過去を持っています。結婚して独立していた兄・大樹の様子がおかしくなり、やはり幻覚に悩まされて病院に通っていることが分かります 医者の見立ては「統合失調症」というものでした 幻覚というのは、幼い少女がこちらを見つめ「ねえ、どうしてあなた、生きているの?」と非難する傍らで彼岸花が咲いているというものでした 兄を心配するさつきでしたが、いつしか彼女も同じような幻覚を見るようになります そして、自殺した母親も二人と同じ幻覚を見ていたことが分かります。3人に共通する幻覚に出てくる少女はいったい何者なのか? その謎を解くのが昭和40年における彼らの祖父の物語です 戦争のあった53年前に満州で祖父が犯したある事件が明らかにされ、3人の幻覚に現れる少女の正体が明かされます

この本を読んでいて思ったのは、「他人には見えないものが見える。自分は狂っているのではないか」ということから、カルト的な小説だろうか、あるいはミステリー(イヤミス)なんだろうか、という疑問です でも、小説の早い段階で「統合失調症」という言葉が出てくることから、カルトのままでは終わらないだろうとは思っていました

この本を読む限り、小説のスタイルとしては、カルトっぽいミステリーという意味で、「背の眼」「龍神の雨」「球体の蛇」などを著した道尾秀介に似ているような気がします。しかし、阿部智里さんによる7冊の「八咫烏(やたがらす)シリーズ」を1冊も読んでいないので、何とも言えないというのが正直なところです

さて、著者は親子で同じ幻覚を見ることを「祖父から受け継がれたトラウマの遺伝」という言葉で表していますが、そんなものが遺伝で伝わってきたら堪りませんね 個人的には 夢の中に 虎と馬が「発現」するのに留まってほしいと思います

時代が2つに分かれ、登場人物も少なくないので、それぞれの相関関係がどうなっているのか 時々整理が付かなくなってしまうことがありましたが、総じて文章力・構成力は優れていると思いました

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