人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

井上道義 ✕ 大井浩明 ✕ 東京フィルでエルガー:序曲「南国にて」、クセナキス「ピアノ協奏曲第3番”ケクロプス”」、ショスタコーヴィチ「交響曲第1番」を聴く ~ 第964回サントリー定期

2022年02月26日 07時26分40秒 | 日記

26日(土)。わが家に来てから今日で2604日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は24日、大企業幹部との会合で、「ほかの選択肢はなかった。我々が世界経済の一部である限り、(世界経済に)打撃を与えない。だから(欧米は我々を)追い出してはならない」と述べ、ウクライナ侵攻を正当化したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     欲しいものを盗んでおいて「ほかに選択肢はなかった」と言うのと同じ理屈だよね

 

         

 

昨日、夕食に「チキンステーキ」「生野菜とアボカドのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました 「チキンステーキ」は2週間に一度のローテ入りしました

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで東京フィル第964回サントリー定期演奏会を聴きました     プログラムは①エルガー:序曲「南国にて」、②クセナキス「ピアノ協奏曲第3番”ケクロプス”」(1986年)、ショスタコーヴィチ「交響曲第1番 ヘ短調 作品10」です 演奏は②のピアノ独奏=大井浩明、指揮=井上道義です

チョン・ミョンフン指揮によるマーラー「交響曲第3番」が演奏されるはずだった1月度定期公演が新型コロナ・オミクロン株感染拡大を受けて中止となったことから、今回の2月度定期公演が新シーズン初コンサートとなります 今シーズンから新しい席に移りました。2階の前の方です。残念ながら通路からかなり入った席で、出入りが面倒です

 

     

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東京フィルの並び。コンマスは依田真宣です

1曲目はエルガー:序曲「南国にて」です この曲はエドワード・エルガー(1857-1934)が1903年末から翌04年初めにかけて家族で旅行した北イタリアの地中海沿いの町アラッシオに滞在した時の印象をもとに作曲した作品で、1904年3月16日にロンドンでエルガー自身の指揮で初演されました

井上の指揮で演奏に入りますが、冒頭から明るいイタリアに着いた時のワクワクする気分を表すかのような軽快な音楽が展開します 中盤で須田祥子のヴィオラ独奏で演奏された 哀愁を帯びた牧童の歌が 静かに染み渡りました

2曲目はクセナキス「ピアノ協奏曲第3番”ケクロプス”」(1986年)です この曲はイアニス・クセナキス(1922-2001)が1986年に作曲、同年11月13日にニューヨークで初演されました   本公演が日本初演です

プログラム冊子掲載の音楽評論家・野々村禎彦氏の特別記事によると、クセナキスはアテネ工科大学で土木工学を学び、ナチスドイツ侵攻に際して抵抗運動に参加、その後フランスに亡命しル・コルヴュジェの建築事務所に就職、そしてオリヴィエ・メシアンに師事し作曲を学んだという変わり種です

同氏のプログラムノートによると、この曲の作曲技法は「まず全体構造を音高と経過時間の2次元グラフでスケッチし、順次細部を埋めてゆく。その際に数学やコンピュータを駆使するが、あくまで細部を埋める便宜的手段であって本質ではない」というもので、この曲は「ギリシャの民族音楽と現代ヨーロッパ音楽の融合という課題に紆余曲折して辿り着いたもの。ケクロプスとはギリシャ神話に登場する半神半龍の初代アテネ王である」とのことです 私には何が何だかさっぱり分かりません

ピアノ独奏の大井浩明は京都市出身、ベルン芸術大学ソリストディプロマ過程修了。内外のコンクールに多数入賞しています かなり体格のがっちりした柔道家のようなピアニストです

井上の指揮で演奏に入ります 咆哮する金管楽器、悲鳴を上げる木管楽器、炸裂する打楽器、忙しなく刻まれる弦楽器、オケの強音に埋もれるピアノ・・・・といった具合で、私が題名を付けるとすれば「カオス(混沌)」です この曲は指揮者にとっても演奏家にとっても「非常に困難な曲」であると同時に「都合の良い曲」ではないかと思います 複雑怪奇な上に今回が日本初演なので誰も知らない作品。途中で演奏が崩壊しても誰も気が付かないからです せいぜい崩壊の原因を作った本人とその周囲ぐらいしか気付かないのではないか 実際、この日の公演もどこかで崩壊していたのかもしれません 井上は演奏者を煽り立て、必死の演奏も当然と言うがごとく、時に指揮をしながら踊っています 第4機動隊出動 井上ミチヨシを騒乱教唆罪でカクホせよ

 

     

 

プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲第1番 ヘ短調 作品10」です この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1924年から翌25年にかけてレニングラード音楽院作曲科の卒業制作として作曲、1926年5月12日にニコライ・マルコ指揮レニングラード・フィルにより初演されました 

増田良介氏によるプログラムノートによると、当時のショスタコーヴィチは、父の急死により経済的困窮に陥り、映画館で伴奏ピアニストとして働くなど苦しい生活を送っていたそうで、そうした経験がこの曲に反映しているとのことです 第1楽章「アレグレット ~ アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「レント」、第4楽章「レント ~ アレグロ・モルト」の4楽章から成ります

井上の指揮で第1楽章がトランペット独奏により開始されます 行進曲風であったり、ワルツ風だったり、すでに19歳のこの作品からショスタコーヴィチらしさが表れた曲想が展開します 第2楽章では、ピアノのソロが素晴らしい演奏を繰り広げました ファゴットの演奏も冴えていました 第3楽章ではホルン・セクションとチェロ・セクションの渾身の演奏が光りました 第4楽章は不思議な音楽です アレグロの部分に移ってから、抒情的な部分と激しい部分が目まぐるしく交代しながら音楽が進行しますが、全休止のあと、ティンパニのソロの強打があります この意味は何なのか? それまでの演奏を否定するかのようです    その後は一気にフィナーレになだれ込み、高揚感のままあっという間に曲を閉じます    何をそんなに急ぐのか、と言いたくなるような終わり方です。実に不思議な楽章です

満場の拍手が井上 ✕ 東京フィルの面々に押し寄せます 何度かのカーテンコールのあと、井上は拍手を制して、「ショスタコーヴィチは19歳でこの曲を書いた。凄いことです 当時 彼が活躍していたソ連は大変だった 今はロシアになっているけど・・・。ケクロプスって戦闘的でしょ。でも戦闘は舞台の上だけでいい(と言って、その場で倒れ込む。そして起き上がって)「こんなことは舞台の上だけにしてもらいたい そのための芸術だ」と語り、ロシアのウクライナへの侵攻を暗に批判しました 井上道義がステージの上で倒れたのは、1999年9月30日にすみだトリフォニーホールで新日本フィルを指揮したマーラー「交響曲第1番」の第1楽章冒頭近くでの転倒以来、22~3年ぶりではないか あの時は、新日本フィルとのマーラーツィクルス全曲ライブ録音CD化プロジェクトの第1日目で、演奏開始早々、客席からケータイ着信音が聴こえてきて、井上はライブ録音が頭にあったため、指揮台から転げ落ちることによって演奏を中止し、最初からやり直す道を選んだのでした その時のライブCDが下の写真です

井上は「今日は『南国にて』という曲で始めましたが、もう一つ南国の曲があるのでちょっとだけ アンコールに演奏します」として、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「南国のバラ」よりコーダを優雅に演奏、演奏後その場でクルクルっと羽生結弦の4回転半に挑み、聴衆の笑いと大きな拍手の中コンサートを締めくくりました

 

     

     

コメント (3)
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